元国際宇宙ステーション司令官が唱える「成功するための思考法」とは?
by Richard Vignola
クリス・A・ハドフィールド氏はカナダ初の宇宙飛行士であり、国際宇宙ステーションの司令官も務めた人物です。そんなハドフィールド氏が宇宙に行った経験を元に執筆した「宇宙飛行士が教える地球の歩き方」には、地球上で生きる我々の精神面に関する優れた知見が多数含まれているとして、教養をテーマにするブログFarnam Streetがその要約を報じています。
An Astronaut's Guide to Mental Models
https://fs.blog/2020/02/mental-models-in-space/
◆1:能力の輪
ハドフィールド氏は宇宙飛行士に求められる能力に関して、「特に重要な場面で不完全な情報から適切な判断を迅速に下すことができる」ことを挙げています。ハドフィールド氏はたった8日間宇宙行っただけではそのような人物になれなかったことを告白した上で、「それでも、『自分が知らなかったということすら知らなかった』という事実を理解できました」と述べました。Farnam Streetは、ハドフィールド氏のこの経験が「能力の輪」という考え方と同じだと指摘。能力の輪は、「投資の神様」という異名を持つウォーレン・バフェット氏が株主に宛てた手紙を元にする、「自分がどれだけ多くのことを知っているよりも、知っていることと知らないことの『境界』を知ることが重要」という概念です。
◆2:二次的思考
「時間が経過するにつれて、私は問題が発生しないようにあらかじめ問題を予測しておくことと、そうやって予測しておくと問題が発生しても効果的に対応できることを学びました」というハドフィールド氏の発言は、Farnam Streetは「二次的思考」だと記しています。
二次的思考は、最初に想定した行動を実践したときにどのような影響が出るのかを考え抜いて、行動にフィードバックさせるという考え方です。二次的思考に関しては以下で詳しく解説しています。
人並み外れた戦略を生み出すための「二次的思考」とは? - GIGAZINE
◆3:「速さ」と「速度」
ハドフィールド氏は「成功するためには、訓練を目標のために強いられているものだと考えるのではなく、訓練自体が目的と考えられるようにならなくてはいけません」と説いています。Farnam Streetは「速さと速度」という、「速さと速度は、速度が『向き』まで考慮に入れる必要があるという点で異なる。仕事をするときは、仕事の速さだけではなく、『自分がどうなりたいか』という方向に関して考える必要がある」という概念が、ハドフィールド氏が主張している内容だと論じています。
◆4:確率的思考
ハドフィールド氏の「何に警戒すればいいかわからないときは、全てがあなたを恐れさせる」という発言を受けて、Farnam Streetはそのような場合には確率で物事を考えるように勧めました。2001年9月11日に生じたアメリカ同時多発テロ事件以降、「テロを警戒せよ」という声がアメリカ国内で盛んに叫ばれるようになりました。しかし、統計によると、足を滑らせて命を失う人は年間1000人ほどで、テロで殺される人は年間500人ほどとのこと。「果たして警戒するのはどちらなのか、確率で考えれば明らかです」とFarnam Streetは主張しています。
◆5:安全マージン
「真に準備ができている状態」の定義は「何が問題なのかを理解し、問題に対処する計画を立てている状態」だとハドフィールド氏は記しています。これについてFarnam Streetは、実際の最大積載荷重が600kgの場合に「最大積載荷重は400kg」と表記しておくような、「安全マージン」を確保することの重要性を訴えました。
◆6:逆転の思考
Farnam Streetはハドフィールド氏の「どの分野においても、批判は個人攻撃ではなく『潜在的に有益なアドバイス』だと考えることが有益です」という発言を紹介し、逆転の発想をするように勧めています。
◆7:相互主義
「ある人に対して成功するように取り計らってあげた場合、自分と一緒に働くことを喜んでくれるだけでなく、自分自身が成功する可能性があがることを学びました」とハドフィールド氏は述べました。Farnam Streetは、このコメントを「相互主義」だと解説しました。
◆8:スケール
NASAのノウハウに関して「世界中の数千人の専門家が提供した訓練法と、5つの宇宙局に属する何千人もの技術者によるサポートのおかげ」だとハドフィールド氏は説明。この説明について、集団を構成する人員が少ない場合と多い場合では異なる社会法則が存在するとFarnam Streetは指摘し、集団を構成する人数に適した戦略を立てることが重要だと主張しました。
◆9:能力の多様性
「不慣れな環境でも他人に貢献する最良の方法は、自分自身がどんなに素晴らしいかを証明しようとすることではなく、最初は主張を控え、先輩の行動を観察して学び、誰もが不満をいうような仕事に取り組むことです」というハドフィールド氏の主張について、Farnam Streetは職場における能力の多様性が重要だと記しています。
◆10:理想と現実
ハドフィールド氏は「自分が活躍することだけを追い求めると、『自分は失敗している』とほとんどの時間考えるように自分を追い込むようになります」と主張しました。この主張について、Farnam Streetは理想と現実の間にギャップがある場合を指摘し、そういった場合には現実に従うことを勧めました。
以上の解説の他にも、Farnam Streetは特に注釈を入れずにハドフィールド氏の以下の発言をピックアップしています。
・「シミュレーションは練習の機会ですが、同時に『自分のやっていることをわかっていない』『もっと上手にできる』と頻繁に警鐘を鳴らしています」
・「NASAの訓練では、自分のキャリアなどは一切考えず、小さい労力でより大きなミッションを達成することを学びます」
・「NASAでは批判に対して前向きに対処するだけではなく、さらに一歩踏み込んで自分自身の間違いを減らすことが期待されます。過度な競争に晒されている人が自分の失敗について率直に話すのは困難なことです。しかし、管理者は『間違いを犯すことは些細なこと』と風潮と同時に『たるんでいるのは許されない』という風潮も作り上げなければいけません」
・「自分のことだけを考えていると、全体像がわからなくなります」
・「リーダーシップは栄誉が与えられるような行動ではなく、チームが目的に集中して達成するために最善を尽くす意欲を持ち続けることです」
上記のハドフィールド氏の発言が全て含まれた、「宇宙飛行士が教える地球の歩き方」は以下から購入することができます。
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