生き物

ジャイアントパンダの赤ちゃんは「早く生まれ過ぎている」ことが判明

by Pascal Müller

愛くるしい外見で人気を集めるジャイアントパンダの成獣は体長120~150cmほどですが、生まれたての赤ちゃんは体長わずか15cm、体重は90~130gほどしかありません。大人と比較すると驚くほど小さいパンダの赤ちゃんは、ほかの動物と比較しても非常に未熟な状態で生まれてしまっていることがデューク大学の研究により判明しました。

Comparative skeletal anatomy of neonatal ursids and the extreme altriciality of the giant panda - Li - - Journal of Anatomy - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/joa.13127

Giant Panda Cubs Are Born Shockingly Small - Turns Out They're 'Undercooked'
https://www.sciencealert.com/all-giant-panda-cubs-are-basically-born-premature-and-that-s-why-they-re-so-small

成獣のパンダは体重およそ100kgほどにもなりますが、生まれたてのパンダは体重およそ90~130gと、猫の赤ちゃんと同じくらいの重さしかありません。生まれたてのパンダの赤ちゃんは毛が生えておらずピンク色で、キーキーと可愛らしい鳴き声を上げます。また、生まれてすぐのころは目を開けることもできず、ハッキリと目が見えるようになるには生後1カ月ほどかかるとのこと。


以下のムービーは、上野動物園で2017年6月12日に誕生したパンダの「シャンシャン」が生まれた直後の様子を映しています。

パンダの赤ちゃん、メスと判明 上野動物園 - YouTube


母親のパンダのお腹にしがみついている、ピンク色の小さな生き物がパンダの赤ちゃんです。


うっすらと黒っぽい毛も見えていますが、まだハッキリとした模様にはなっていません。もぞもぞと動いているものの、まだ目も開いていない状態。


保育器に移した赤ちゃんの様子がこれ。まだ歩くこともできないようで……


飼育員に持ち上げられている様子は、成獣のパンダとは別の生き物のようにすら見えます。


一見するとパンダの赤ちゃんはまるで胎児のように見えます。実際に、パンダの赤ちゃんと成獣の体重比率は1:900ほどであり、胎盤を持つ哺乳類の平均的な赤ちゃんと成獣の体重比率が1:26程度であることを考えると、パンダの赤ちゃんは非常に小さな状態で生まれてくるといえます。パンダのあまりにも小さい出生時のサイズは、長年にわたって生物学者を悩ませてきたそうです。

クマ科の動物は一般的に赤ちゃんのサイズが小さいものの、パンダは特に顕著だそうで、これほど赤ちゃんと成獣の大きさが違うのは、卵生のカモノハシ目や赤ちゃんを袋の中で育てる有袋類以外では見られないとのこと。

by Seoulinspired

そこでデューク大学の生物学者であるPeishu Li氏とKathleen Smith氏の研究チームは、パンダの赤ちゃんの骨格を調査しました。一般的に飼育繁殖されているパンダの赤ちゃんは非常に貴重であり、全ての赤ちゃんは細心の注意を払って育てられるため、パンダの赤ちゃんの骨格を手に入れることは容易ではありません。しかし、1980年代にスミソニアン動物園で生まれてすぐに亡くなった5頭の赤ちゃんパンダの骨格が保存されていたため、研究チームはそのうちの2頭をCTスキャンすることができました。

また、研究チームは比較対象としてハイイログマナマケグマホッキョクグマレッサーパンダハナグマリカオンホッキョクギツネ、イヌの新生児についてもCTスキャンを行いました。研究チームは全ての骨格を3Dモデル化し、骨化の具合や骨の成長レベル、歯が形成されているかどうか、頭蓋骨のくっつき具合などを慎重に分析したとのこと。

クマ科の子どもが比較的小さな状態で生まれる理由について、「クマの妊娠期間が冬眠と重なる場合、絶食期間が赤ちゃんの早産につながるのではないか」という仮説があり、冬眠を行わないパンダにも進化の過程で早産の特徴が受け継がれた可能性が指摘されてきました。ところが、研究チームが多くの哺乳類の新生児を分析したところ、クマ科の赤ちゃんもほかの哺乳類と同様のレベルまで骨格が発達していたことがわかったとのこと。つまり、クマ科の赤ちゃんは早産だから小さいのではなく、しっかりと満期の妊娠期間を経て生まれてきたというわけです。

by trasroid

ところが、パンダの新生児だけは例外だったと研究チームは指摘。パンダの赤ちゃんの骨格はイヌの赤ちゃんと似ていましたが、その発達具合はイヌと比較して70%ほどしかなかったそうです。Smith氏はパンダの赤ちゃんについて、「人間でいう28週間目の胎児に似ています」と述べており、通常であれば40週間の妊娠期間を経るところが、わずか28週間目の時点で生まれてしまっている状態だと表現しました。

クマ科の動物は一般的に胚が長期間にわたって子宮内を浮遊し、着床するのが遅いという特徴があります。しかし、パンダはほかのクマと比較して着床後の妊娠期間が短く、ほかの哺乳類と同じ発達の過程をたどっているものの、十分に成長する前に出産されてしまっているそうです。「パンダの赤ちゃんは基本的に未熟です」と、Li氏は述べています。

一体なぜパンダの赤ちゃんが未熟な状態で生まれてしまうのかは不明ですが、研究チームは過去2000万年でクマの成獣のサイズが大きくなってきたことに関係している可能性があると指摘。成獣のサイズが大きくなった一方で、出生時のサイズが従来と変わらなかった結果、成獣と比較して未熟過ぎる状態で生まれてしまっているかもしれないとのことです。

by Diana Silaraja

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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