「YouTube公式の著作権フリー音源」を使ったムービーが著作権侵害の申し立てを受けてしまう
by lukasbieri
YouTubeはクリエイターの著作権を保護するため、「Content ID」という仕組みを通じてコンテンツの所有者が自身のコンテンツを管理できるようになっています。YouTubeにムービーを投稿して活動するYouTuberたちは「YouTubeが公式に提供する著作権フリーの音源」を使用するなどして、うっかり著作権で保護されている音源などを使用しないように配慮していますが、「YouTubeが提供する著作権フリーの音源を使ったのに著作権侵害の申し立てを受けてしまった」という報告が上がっています。
'Royalty-Free' Music Supplied By YouTube Results in Mass Video Demonetization - TorrentFreak
https://torrentfreak.com/royalty-free-music-supplied-by-youtube-results-in-mass-video-demonetization-191118/
Matt Lowneさんは、ゲーム実況を中心として活動するYouTuberです。Lowneさんのチャンネルは、記事作成時点で26万人を超える登録数を誇っており、投稿したムービーの総再生数は5600万回以上となっています。
多くのYouTuberたちと同様に、Lowneさんも自分のチャンネルで著作権侵害の問題が起きないよう、細心の注意を払っています。そこで、ムービー中のBGMとして使用する音楽は、YouTubeが「プロジェクトに使える無料の音楽」として提供しているオーディオ ライブラリのものを利用しているとのこと。
YouTubeが提供するオーディオ ライブラリには、以下のように著作権フリーの楽曲が数多く用意されており、YouTubeにムービーを投稿したい人々が自由に楽曲を使うことができます。Lowneさんは多くの実況ムービーのイントロ音源として、このオーディオ ライブラリの中から「Dreams」という楽曲を使用していました。
しかしLowneさんは、2019年11月15日の朝早くにYouTubeから大量の「著作権侵害の申し立て」メールを受信したそうです。メールには、「あなたのムービーはSonyATV、PeerMusic、Warner Chappell、Audiam and LatinAutorが所有しているコンテンツを含んでいる可能性があります」と記されており、該当するムービーの収益化がストップされてしまったとのこと。なお、ムービーに広告自体は表示され続けており、収益は関係各社で分配することになっている模様。
So SonyATV just copyright claimed every single KSP video I've made.
— Matt Lowne (@Matt_Lowne) November 15, 2019
I guess this whole YouTube thing was fun while it lasted. pic.twitter.com/5OtQKRupAz
「Dreams」の作曲家であるJoakim Karud氏は、自身の楽曲をYouTubeなどで自由に使うことを許可しています。しかし、Lowneさんと同じく「Dreams」を使用した楽曲が著作権侵害の申し立てを受けたTwitterユーザーによると、「Dreams」の中にはKenny Burrellの「Weaver of Dream」という楽曲がサンプリングとして用いられており、この点が著作権侵害に該当したとのこと。
SonyATV & Warner Chappell have claimed 24 of my videos because the royalty free song Dreams by Joakim Karud (from the OFFICIAL YOUTUBE AUDIO LIBRARY BTW) uses a sample from Kenny Burrell Quartet's 'Weaver of Dream'.
— Jez (@Th3Jez) November 16, 2019
VERY grey area, any help?@YouTube @YTCreators @TeamYouTube pic.twitter.com/Ig4wK2CU1W
もちろんLowneさんはこの著作権侵害の申し立てに対し、YouTubeに手動で異議申し立てを行ったそうですが、すぐに申し立ては却下されてしまったとのこと。残された手段は各ムービーについて個別に異議申し立てを行うことしかありませんが、異議申し立てに失敗した場合はムービーが削除されるだけでなく、アカウントに対する警告が与えられてしまいます。コミュニティガイドライン違反の警告を3カ月以内に3回受けてしまうと、YouTubeアカウントが停止される「3ストライク制度」が存在するため、何らかの形で音楽会社に負けてしまう可能性を考慮すると、Lowneさんにとってこれは魅力的な選択肢ではないとのこと。
YouTubeの公式オーディオ ライブラリからダウンロードしたにもかかわらず、今回のような事態に発展してしまったことを受け、Lowneさんは「YouTubeの公式オーディオ ライブラリは全く信用できません。申し立ての後にYouTubeは楽曲をライブラリから削除するだけで、楽曲を使用したムービーの受けた結果については全く無視するかもしれません」とコメントしました。
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