リチウム・硫黄電池により電気飛行機の飛行範囲を2倍にできる可能性が示される
By stevanovicigor
動力を全て電動化した電気飛行機が抱える課題のひとつに、バッテリーの小型化が挙げられます。重量あたりのエネルギー比の向上は電気飛行機にとって非常に重要であり、この問題を解決する方法としてリチウム・硫黄電池の使用が注目されています。
Lithium Sulfur Battery Project Aims To Double The Range Of Electric Airplanes IEEE Spectrum - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/energywise/aerospace/aviation/lithiumsulfur-battery-project-aims-to-double-the-range-of-electric-airplanes
イギリスのアビンドンにあるOxis Energyは、電気飛行機で安全に使用できる電池として、リチウム・硫黄電池を提案しています。リチウム・硫黄電池による電気飛行機の実現可能性を実証するため、小型電気飛行機の開発を行うBye Aerospaceが設計した電気飛行機で約1年間実験を行いました。
両社の共同プロジェクトにより開発されたリチウム・硫黄電池は500Wh/kgという値を示しました。IEEE Spectrumの記事によると、2017年に発表されたリチウムイオン電池の重量あたりのエネルギー比は260Wh/kgなので、その2倍近い性能があることがわかります。
このエネルギー効率の向上により、バッテリーの総重量が半分に削減され、少なくともBye Aerospaceがこれまでに製作した小型飛行機よりも、飛行範囲を1.5倍~2倍に拡大できると予測されています。リチウム・硫黄電池による電気飛行機が実現された場合、より大きな飛行機にもリチウム・硫黄電池を搭載できる可能性が高くなります。
リチウム・硫黄電池があまり注目されてこなかった理由の1つは、充放電サイクル中のカソードの劣化による寿命の短さです。Oxis Energyは「今後2年以内に、バッテリーを500回のサイクルで使用可能にする」と述べています。
もう1つの理由は安全性で、リチウム・硫黄電池は過熱しやすい傾向があります。Oxis Energyは、リチウム・硫黄電池を設計する際、突然の放電や液漏れを防ぐため、セラミックの硫化リチウムを「不動態被膜」として組み込んでいます。また、不燃性の電解質も使用されているとのことです。
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