愛犬は叱るのではなく褒めて伸ばすべき
目に入れても痛くないほどかわいがっている愛犬でも、あまりにも言うことを聞かなかったり粗相をしたりと、悩みの種になってしまうこともしばしば。そんなときに、「こうしなさい」「そうしちゃだめ」と声を荒らげて叱りつけるのではなく、ちゃんとできたことにごほうびを与える形の方が、犬にとって良い影響を与えるということが研究論文で示唆されています。
Does training method matter?: Evidence for the negative impact of aversive-based methods on companion dog welfare | bioRxiv
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/823427v1
ポルトガルのポルト大学の研究者らが2019年10月末に公開した論文によると、犬のトレーニング方法としては報酬をベースにしたポジティブな方法と、嫌悪療法をベースにしたネガティブな方法とがある中で、嫌悪療法を用いたやり方は犬の福祉に悪影響を与えると批判を受けてきたそうです。しかし一方で、そのような主張は科学的証拠に裏付けられてきませんでした。また、従来の研究は研究用の犬や警察犬のような訓練の場で行われてきたため、いわゆる「愛犬」のトレーニング法と犬の幸福度にかんする長期的研究は欠けていたとのこと。
研究ではまず、報酬ベースで訓練されてきた42匹の愛犬と、嫌悪ベースで訓練されてきた50匹の愛犬を複数のトレーニング施設から集め、合計92匹の愛犬の行動や唾液サンプルの採取を行いました。行動研究は、ビデオ撮影により犬の全体的なストレス状態を「唇をなめる」「あくび」などからチェックします。この際に唾液から検出されたストレスホルモンの量や、映像から観察できたストレス反応によると、嫌悪ベースの訓練を受けている犬たちの方がストレスレベルが高くなっていることが確認されました。
次のステップとして、犬がソーセージの匂いがするボウルまでどれだけ早く近づくかを実験しました。「ポジティブ」なボウルにはご褒美として食べ物が入れられ、「ネガティブ」なボウルには鼻で区別できないように匂いだけがつけてあったとのこと。ボウルの位置や距離を変えて数回トライアルが行われ、「ポジティブな位置」「ネガティブな位置」を把握させた上で犬がボウルまで向かう時間を計測します。
結果として、「ネガティブな位置」として覚えたボウルへ向かう犬は比較的ゆっくりとボウルに近づきました。これは、犬がボウルの内容について悲観的であることを意味すると考えられます。一方で報酬ベースのグループの犬は、ボウルの位置の学習やボウルまで向かう速度で優れた結果を見せたそうです。このとき、「ネガティブな位置」と覚えた場所に報酬入りのボウルを置いた場合でも犬はゆっくり向かったため、「食べ物を認識して早くなった」ということではないとのこと。
論文では、本研究は実験的研究ではなく経験的研究であるため、訓練方法と犬の幸福度に真の因果関係を認めることはできないと留保しつつも、「愛玩ペットとして飼われる犬の訓練方法の評価」を包括的かつ体系的に報告した最初の研究として意味があると述べています。合わせて、批判的なニュアンスを込めて、愛犬にストレスを与えず正しいことや悪いことを伝えるために、「嫌悪療法的な犬のトレーニング」を否定し、「報酬ベースによるトレーニング」の慣行を勧めています。
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