生き物

吸血コウモリは友達同士で血を分け合うことで友情を育み親友を作る

By CreativeNature_nl

吸血コウモリとして知られるチスイコウモリは、吸血によって得た血を仲間と分け合うことが知られてきました。チスイコウモリが同性の仲間と血を分け合うことを続けるとその仲間との「絆」が生まれ、行動を共にするようになるという研究結果が発表されています。

Vampire Bats that Cooperate in the Lab Maintain Their Social Networks in the Wild: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)31364-8

Vampire Bats Form Bloody Bonds Of 'Friendship' : NPR
https://www.npr.org/2019/10/31/774358215/for-these-vampires-a-shared-blood-meal-lets-friendship-take-flight

チスイコウモリは英語圏では「ヴァンパイアコウモリ(Vampire Bat)」として知られていますが、吸血することで獲物を殺すことはありません。チスイコウモリの主なターゲットは豚、馬、牛などの大型の家畜。鋭い切歯で標的の皮膚を裂いて、その傷口に舌を入れて血液を摂取します。


チスイコウモリの特徴は、餌である血を仲間と分け合うという点。母親が自分の子に餌を分けるというのは自然界で一般的にみられる現象ですが、チスイコウモリは母子間だけでなく、血縁関係のない仲間とも血を分け合います。仲間に血を分ける際には、すでにのみ込んだ血を吐き戻して分け与えます。

チスイコウモリが仲間に血を与える利他的行動は、チスイコウモリがすぐ餓死してしまうことに関連があると考えられています。チスイコウモリは毎晩大さじ1杯ほどの血をのむ必要があり、絶食状態が丸2日続くと死に至る可能性があるそうです。


ドイツ、アメリカ、パナマの研究者からなる研究チームは、23匹のメスのチスイコウモリを野生から捕獲して、研究室内で2年間飼育して観察を行いました。時間がたつにつれて、捕獲されたチスイコウモリ間での毛繕いや、血を分け与える頻度は増加していったとのこと。

このチスイコウモリ同士の「絆」は共に実験室内で飼育されている間だけの、一時的なものなのかどうかを疑問に思った研究チームは、チスイコウモリを野生に返して友情が続くかどうかを調査しました。研究チームは捕獲されて2年間飼育されたチスイコウモリと、対照群となる野生のチスイコウモリに指先ほどの大きさのセンサーを取り付けて野生に戻し、チスイコウモリたちの活動を観測したとのこと。以下がセンサーの実物。

By Simon Ripperger

センサーをチスイコウモリの背に取り付けるとこんな感じ。センサーの重さは2.5g未満とのこと。

By Simon Ripperger

このセンサーはチスイコウモリの現在位置を把握するものではなく、センサーをつけられたチスイコウモリ同士の「距離」のみを計測するもの。センサーをつけられたチスイコウモリ同士が毛繕いや血を分け合うために接近すると、記録が残るという仕組みです。

調査の結果、研究室で2年間飼育されて「絆」が生まれたチスイコウモリ同士は、野生に戻っても行動を共にし続けるということが判明しました。本研究に参加したジェラルド・カーター氏は、「チスイコウモリ同士の関係は、環境によらないということです。今回の調査結果は、今まで知られてこなかったチスイコウモリの生態で、我々にとって興味深いものでした」とコメントしています。

研究チームは、次なるテーマとして、チスイコウモリの吸血の標的となる牛にセンサーを設置して、「吸血のために付けた傷をチスイコウモリ同士で共有することはあるのか」を調べる予定とのことです。

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in 生き物, Posted by darkhorse_log

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