鍼治療を受けた女性が肺に穴を空けられてしまう
by Alterfines
鍼治療は体の特定部位を刺激するため、専用の針(鍼)を体に刺したり、接触させたりする治療法で、中国や日本、韓国といった東アジアで発達しました。近年はヨーロッパなどにも広がっているのですが、ニュージーランドで鍼治療を受けた受けた女性が肺に穴を空けられるという事故が起きたことが報じられています。
Search decisions - Health and Disability Commissioner
https://www.hdc.org.nz/decisions/search-decisions/2019/18hdc00442/
Acupuncture Causes Woman's Lung to Collapse | Live Science
https://www.livescience.com/acupuncture-punctures-lung.html
ニュージーランドの保健当局が発表した報告書によると、ニュージーランドに住む33歳の女性は2018年3月、肩の痛みや息切れなどを訴えて鍼治療を受けたとのこと。鍼師は女性の不快感を和らげるため、肩井穴と呼ばれる部位に2本の鍼を刺したそうです。
肩井穴は東洋医学において重要な部位であり、首や肩の痛みやコリ、五十肩、頸肩腕症候群、頭痛、うつや自律神経失調症などの神経系疾患を治療する目的でも刺激されることがあります。指で触るとやや凹んだ感じがあり、強く押すと特有の鈍痛があるといわれています。
女性は鍼を刺された時に痛みを感じたそうですが、そのまま治療は続行され、およそ30分ほど鍼を刺し続けた後で鍼師は2本の針をねじって取り出しました。すると、女性は胸の右側に痛みを覚え、同時に息切れも感じたそうです。また、10分後にはさらに息苦しさが増したため、鍼師は別の場所に刺していた鍼も全て抜いてから追加の治療を施し、呼吸に気をつけて休息をとるように伝えて女性を家に帰しました。
by whitesession
しかし、女性は家に帰ってから左胸にもしつこい痛みを覚え、右胸にはしびれを感じるようになったそうです。その日の夜遅くになって女性は病院の救急科に入院し、両側の肺の一番上に突き出た部分(肺尖部)に穴が空いたことで気胸になっていると診断され、この穴が鍼治療によって空けられてしまったこともわかりました。このように、鍼治療が原因となって発生する気胸は、まれにあるそうです。
今回の鍼師が鍼を刺した肩井穴は、皮膚のわずか10mm~20mmほど下に肺があるため、鍼治療を行う際には非常に慎重にならなければならない部位だとのこと。世界保健機構(WHO)が2010年に発表したレポートによると、鍼治療が原因の気胸のうち30%は肩井穴へ鍼を刺したことが原因で発生していました。
日本においても、鍼治療で肩周辺に鍼を刺したことで気胸になったケースは存在しています。(PDFファイル)2012年の報告では、鍼灸マッサージ賠償保険が関わった気胸の取扱い件数は、1975年から2002年までの間に130件あったほか、針治療後の気胸で死亡したケースもあったとのこと。鍼師は治療を行う前に書面でリスクの説明を行う必要があると、ニュージーランドの保健当局は述べています。
by Owen Blacker
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