13歳の女の子が「手を乾かすハンドドライヤーの騒音レベルは子どもの耳に有害」と4年にわたる研究で証明
公共の手洗い場では、紙やタオルの代わりに温風によって手を乾かすハンドドライヤーが設置されていることがあります。カナダに住む13歳の女の子が4年間かけてハンドドライヤーの騒音について研究し、「ハンドドライヤーから出る騒音は子どもの耳に有害なレベルである」と示した論文が学術誌に掲載され、話題になっています。
Children who say hand dryers ‘hurt my ears’ are correct: A real-world study examining the loudness of automated hand dryers in public places | Paediatrics & Child Health | Oxford Academic
https://academic.oup.com/pch/advance-article-abstract/doi/10.1093/pch/pxz046/5519522
Children wise to fear hand dryers, and 13-year-old proves it with published paper | CBC News
https://www.cbc.ca/news/canada/calgary/calgary-student-nora-keegan-hand-dyer-research-decibel-1.5185853
今回の論文を発表したのはカナダに住むノラ・キーガンさん。キーガンさんが9歳の時、ハンドドライヤーを使った後に耳が痛くなることがあったとのこと。その後10歳になっても同じ体験をしたことから、ハンドドライヤーの騒音で聴覚が悪影響を受けるかどうかを調べてみることにしたそうです。
by Mike Mozart
キーガンさんは騒音をデシベルで測定できる機械を使用して、壁からの距離やハンドドライヤーが設置されている高さで騒音を測定したとのこと。「子どもの身長、女性の身長、男性の身長でのデータがあればいいと思いました。また、業界標準である壁から18インチ(約46cm)での騒音レベルも測定しました。子どもは大人よりも腕が短いので、もっと近くで使用しているかもしれません」とキーガンさん。
キーガンさんは調査の中で、ハンドドライヤーから吹き出す気流に手を突っ込むと、騒音レベルが大きく跳ね上がることに気づいたとのこと。子どもの身長を想定して騒音レベルを測定したところ、カナダで一般的なハンドドライヤー2種は十分な騒音対策が施されておらず、およそ110デシベルの騒音を出すことがわかったそうです。110デシベルは、カナダの保健省が子ども向けのオモチャに定めている100デシベルという騒音規制を超える数値。環境省の発表する「(PDFファイル)生活騒音」というパンフレットによると、ゲームセンターの店内が80デシベル強、パチンコ店の店内が90デシベルとのことから、110デシベルという騒音がどれほどの大きさなのかよくわかります。
子どもの外耳道と鼓膜は大人よりも敏感で、さらに体が小さく腕も短いので、大人よりも耳に届く騒音のレベルは大きくなりがちで、「これは非常に騒々しい、ロックコンサートレベルの騒音です」とキーガンさんは述べています。キーガンさんは研究の成果をまとめて、学校の自由研究で発表したそうです。
キーガンさんはさらに同じ研究を4年間続け、13歳になってから「ハンドドライヤーで耳がおかしくなったという子どもたちは正しい:公共の場で自動ハンドドライヤーの音の大きさを調べる現実的な研究」と題した論文にまとめて発表。キーガンさんの論文は学校の自由研究の一環として発表されただけでなく、査読を経た上でカナダの小児科医療の学術誌「Paediatrics&Child Health」に掲載されました。
なお、論文の中でキーガンさんはハンドドライヤーの騒音を減らすさまざまな素材を研究したそうで、ノイズを11デシベルも減らすような新しいハンドドライヤーのモデルも考案したそうです。キーガンさんは「ノイズを低減するモデルを正しくテストする方法はわかりませんでしたが、非公式ながら学校の洗面所に設置したところ、騒音が激しくならないことを発見しました」「騒音低減モデルをメーカーやカナダ保健省に持ち込むことも考えていますが、これはあくまで1つの研究にすぎません。もっとハンドドライヤーをテストして、その騒音レベルについてもっと調査を重ねた方がいいと思います」と語りました。
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