AIによる「ピッタリな食材や飲み物の組みあわせ」予測が高精度でプロの見解と一致、今後は新メニューの提案も
by microgen
世界中のシェフや料理研究家たちが日々食材や調理法の研究を行っていますが、ソウルにある高麗大学校の研究者らは、わずかな食材の組み合わせを教えただけで、食材にぴったりな別の食材や飲み物の組み合わせを発見するAIを開発しました。
KitcheNette: Predicting and Recommending Food Ingredient Pairingsusing Siamese Neural Networks
(PDFファイル)https://arxiv.org/pdf/1905.07261.pdf
AI predicts new food and drink pairings | VentureBeat
https://venturebeat.com/2019/05/20/ai-predicts-new-food-and-drink-pairings/
高麗大学校の研究グループは、査読前の論文を投稿するプレプリントサーバーのarXiv.comに、「機械学習を用いて食材の組み合わせを予測するAIを開発した」との論文を掲載しました。
研究グループが「KitcheNette」と名付けたAIには、「Siamese Networks」というトレーニング手法が使用されました。これは、2つのニューラルネットワークが相補的に作用しながらテキストや画像の学習を行っていく機械学習の手法のひとつで、「お手本」となるデータが少なくても効果的なトレーニングを行うことが可能な手法だとのこと。
研究グループはこのSiamese Networksにより、100万件以上もの料理のレシピから抽出した約635万パターンの食材の組み合わせを解析しました。その結果、5%分の「既知の食材パターン」から、「ジン&アクアビット」「ライム&ノパル」「わさび&ノリ」といった食材の関連性を予測することに成功したとのこと。わさびとノリは日本人にもなじみのある食材ですが、「ジンとアクアビット」や「ライムとノパル」はそれぞれ北欧料理とメキシコ料理に分類される食材や飲み物です。
また、「KitcheNette」に「シャンパンとオレンジの絞り汁」や「オレンジの絞り汁とスパークリングワイン」といったカクテルでよく使われる組み合わせを評価させたところ、高い評価を下した一方で、「スパークリングワインとタマネギ」といった普通はしないような組み合わせは低く評価したとのこと。
さらに、「KitcheNette」に赤ワインや白ワインなどのアルコールに合う食材を見つけるよう指示したところ、「赤ワインにはビーフストック(牛肉のだし汁)」「白ワインにはムール貝」といった組み合わせを推奨しました。これらの組み合わせは、料理研究家のアンドリュー・ドーネンバーグ氏が著した「What to Drink with What You Eat」という本で言及される料理と飲み物の組み合わせに高精度で一致したとのこと。
また、「KitcheNette」は既存のレシピにはない未知の組み合わせまで発見しています。以下の画像は実際に「KitcheNette」が「赤ワイン」に合うと推奨した食材と、ドーネンバーグ氏の著書で推奨されていた組み合わせの比較です。右側には、プロが選んだ赤ワインに合う食材の一覧が記載されていて、上からアルファベット順に「牛肉」「チーズ」「狩猟肉」などが並んでいます。
これに対して、「KitcheNette」が推奨した食材が左側の一覧で、ランクが高い順に「beef_stock(ビーフストック)」「beef_cheeks(牛の頬肉)」「lamb_shank(仔羊のすね肉)」などが並んでいます。
「KitcheNette」がオススメする食材はやや斬新すぎるところもあるものの、既存のレシピにはない新しい食材の組み合わせも発見しています。「*」のマークがついている食材が未知の組み合わせで、「pan_juice(食材の煮汁)」といったものから、加工肉の発色剤として使われる「saltpeter(硝酸カリウム)」や、うまみ調味料の「ajinomoto(味の素)」も推奨しています。
なお、「KitcheNette」がオススメする日本酒に合う食材がこれ。調味料である「みりん」や食材の「かたくり粉」など、おつまみにできるかどうかはともかく、見事に日本の食材や調味料が選ばれています。
研究グループは、今後さらに機能を実用的なものにするため、食品を化学的に分析した情報などを用いて学習モデルを発展させていく考えだそうです。
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