「食のクラウドソーシング化」の功罪とは?

by grafvision

「外食やお手伝いさんの雇用によって人は幸せになれる」という研究結果もあるとおり、日常生活に必要なことをプロに任せることは生活の満足度を向上させることが示唆されています。その一方で、「自分の健康に直結する調理や食事まで他人任せにすることにはリスクがある」とブロガーのアレックス・ダンコ氏は警鐘を鳴らしています。

Cooking As A Service – danco.blog
https://alexdanco.com/2019/05/09/cooking-as-a-service/

ダンコ氏が「食のクラウドソーシング化」について考えるようになったのは、東京在住のエンジニアであるパトリック・マッケンジー氏の以下のツイートがきっかけです。自動運転技術についての一連のツイートの中でマッケンジー氏は「2040年までに『料理』は今日における裁縫やガーデニングのようなニッチな趣味になると思います」と意見を述べています。

I think cooking will, by 2040, be a niche activity like e.g. gardening or sewing, not something which one would reasonably expect from substantially every household.

It's getting squeezed by a combination of long-running social changes, cultural norms, and...

— Patrick McKenzie (@patio11)


事実として、アメリカではどんどん外食が多くなっていることが研究により明らかになっています。

以下の画像はアメリカの所得層ごとの家庭での食事と外食の割合をグラフ化したもので、縦軸がそれぞれの食事から摂取するカロリーを、横軸が年代を表しています。また棒グラフの色が薄い部分は外食の、色が濃い部分は家庭での食事の割合をそれぞれ表しています。グラフは左から「低所得」「中所得」「高所得」に分かれていますが、いずれの所得層でも、年代が最近になるにつれてほぼ一貫して外食の割合が増えているのが見てとれます。特に、一番左の「低所得」の家庭では、1965~66年には5%しかなかった外食の割合が、2007~08年には28%にまで増加しています。


この調査結果には、次の3つの現象が背景にあるとダンコ氏は指摘しています。

◆1:生活水準の向上
人々の生活は1965年に比べて格段に向上しています。その結果、人々は「仕事としての料理」に対してより多くの代価を支払うようになり、それに比例するようにして外食産業に従事する人も年々増加しています。

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◆2:料理の不可視化
外食産業における技術の向上やサプライチェーンの発達により、料理が実際に行われる場所と、消費される場所とは切り離されるようになってきました。また同時に、外食市場に供給される食材や労働は年を追うごとにより「安価」で「代替可能」かつ「信頼性が高い」構成要素となりつつあります。これにより、マクドナルドのような大企業は、手軽でおいしい食事を、低コストで大量生産することができるようになりました。

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◆3:食事の選択肢の増加
外食文化の隆盛により、人々は自宅で料理しなければならない時代よりもはるかに多い選択肢を得られるようになりました。昔は手に入らなかった食材や、自宅では到底できない調理法で作られた料理を、手ごろな価格で食べることができます。その結果、ディナーのメニュー選びは「今晩何を作れるか」から「何を食べたいか」に変化しました。「Uber Eats」などの配送サービスに代表されるテクノロジーの進歩が、この傾向を大幅に加速させているとダンコ氏は主張。「食」はいまやインターネット配信で供給される映像コンテンツとなんら変わらない商品になりつつあります。

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ダンコ氏は、この「食のクラウドソーシング化」には良い側面と悪い側面とがあると指摘しています。

良い側面は、人々の余暇が増えるということです。食事の準備を個々の家庭で個別に行うより、一括で行った方が効率的で理にかなっています。誰もが1日に複数回行わなければならない食事がより効率的に供給されるようになれば、誰にとってもプラスになるといえます。


悪い側面は、健康的な食生活をも人に委ねるということにつながるということです。例えば、ある人がいつも食べている10ドル(約1100円)の食事の代わりに、13ドル(約1400円)でヘルシーな食事を食べることに決めたとします。これは言い換えれば、企業が健康的な食事に上乗せした3ドルの価格を受け入れたことになりますが、この3ドルがいつ5ドルや10ドルにならないとも限りません。企業が利益を最大化しようとすることで、健康的な食事が低所得者の手が届かないものになってしまう危険があるわけです。

「健康的な食事が追加料金を必要とするプレミアムオプションになりつつある現状は、決して素晴らしいものではない」ダンコ氏は締めくくっています。

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in , Posted by log1l_ks

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