総額6億円超という史上最大規模の裏口入学ビジネスがアメリカの名門大学8校で発覚、女優ら50人が贈収賄容疑で逮捕
南カリフォルニア大学やスタンフォード大学などアメリカの名門大学8校の大学関係者が受験生の親から仲介業者を通じて金品を受け取って特定の学生を不正に入学させていたとして、FBIは大学関係者と仲介業者、そして有名女優や弁護士を含む親を逮捕しました。逮捕された関係者は合計で50人、贈収賄で動いた金額は総額で6億円を超えるとみられ、アメリカ史上最大規模の不正入学スキャンダルだと報じられています。
8 Universities. Millions in Bribes. 10 Corrupt Coaches. What You Need to Know About the Admissions-Bribery Scandal. - The Chronicle of Higher Education
https://www.chronicle.com/article/8-Universities-Millions-in/245873
Lori Loughlin and Felicity Huffman among wealthy parents accused by FBI in college-entrance bribery scheme - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/world/national-security/fbi-accuses-wealthy-parents-including-celebrities-in-college-entrance-bribery-scheme/2019/03/12/d91c9942-44d1-11e9-8aab-95b8d80a1e4f_story.html
裏口入学を行っていたと発覚したのは、南カリフォルニア大学・スタンフォード大学・イェール大学・ジョージタウン大学・カリフォルニア大学ロサンゼルス校・ウェイクフォレスト大学・テキサス大学オースティン校・サンディエゴ大学の8校。アメリカ司法省によると、この裏口入学スキャンダルにはWilliam Rick Singer氏が運営する「The Key」と呼ばれる組織が関与していて、大学関係者へ賄賂を送るネットワークが形成されていたとのこと。
アメリカの大学入学では、SAT(Scholastic Assessment Test、大学進学適性試験)やACT(The American College Testing Program)などのテスト結果の他に、高校4年間の成績とその推移、課外活動、小論文、面接結果が重視されます。学校の成績が優秀でなければ有名大学への入学は難しいものとなりますが、一方でスポーツ入学や一芸入学の枠も存在し、スポーツ強豪校のヘッドコーチには大学への入学推薦権限が与えられることもあります。今回の裏口入学スキャンダルは、このスポーツ推薦枠を悪用したものでした。
by University of the Fraser Valley
南カリフォルニア大学では、大学のスポーツクラブを管理しているシニアアソシエートアスレチックディレクターを務めるDonna Heinel氏の口座に130万ドル(約1億4000万円)が、2018年9月からは月に2万ドル(約220万円)が振り込まれていたことがわかりました。また、女子サッカーチームのコーチ陣が管理するプライベートのサッカークラブには35万ドル(約4000万円)が支払われたことも判明。関与している学生は24人以上だとのこと。
by Ken Lund
女子サッカーチームのアシスタントコーチであるLaura Janke氏はウソの選手プロフィールを作成し、Heinel氏に送信。このプロフィールに登録されている写真はサッカー経験が全くない女性のものでしたが、南カリフォルニア大学への入学資格要件を満たしているとして、推薦入学の承認を得ていました。
また、スタンフォード大学ではヨットのセーリングチームのヘッドコーチであるJohn Vandemoer氏が、Janke氏が作成したウソの選手プロフィールに従ってスタンフォード大学への入学申請を行っていたことがわかりました。その対価としてスタンフォードのセーリングチームには27万ドル(約3000万円)の支払いが行われたとのこと。なお、推薦を受けた学生は最終的に別の大学へ通ったそうです。
by Sandip Bhattacharya
カリフォルニア大学ロサンゼルス校では、男子サッカーチームのヘッドコーチであるJorge Salcedo氏が合計20万ドル(約2200万円)を受け取り、ウソのプロフィールを元に便宜を図ったといわれています。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の学生アスリート入試委員会は「高校で少なくとも1年以上サッカーチームに参加」という条件で、推薦を受けた女学生の入学を暫定的に認めました。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校への推薦を受けた女学生の両親は、Singer氏が創設した慈善団体に25万ドル(約2800万円)相当のFacebook株を譲渡したほか、プロフィールを作成した南カリフォルニア大学の女子サッカーチームヘッドコーチのAli Khosroshahin氏に5万ドル(約560万円)を支払ったことが判明しました。
記事作成時点で逮捕者は50人にのぼり、賄賂は総額590万ドル(約6億5000万円)に達していると報じられています。FBIは1年以上前から水面下で捜査を行っていたものの、事件発覚そのものは偶然によるもので、結果としてアメリカ全土に及ぶ大規模な汚職事件となったと発表しました。逮捕された保護者には大手法律事務所の弁護士や会社の社長など高所得者が多く、中にはドラマ「デスパレードな妻たち」で知られるフェリシティ・ハフマンや、ドラマ「フルハウス」に出演したロリ・ロックリンもいました。ハフマンは2019年3月13日にロサンゼルスの連邦裁判所に現れ、25万ドル(約2800万円)の保釈金を支払って釈放されました。
by Disney | ABC Television Group
仲介業者でありこの壮大な裏口入学ビジネスを運営したSinger氏は、2019年3月13日に連邦裁判所で自身の罪を認めました。Singer氏は裏口入学ルートを紹介して賄賂を仲介するだけではなく、運営組織を慈善団体に装うことで、賄賂を慈善団体への寄付のように見せかけ、脱税に利用できるようにしたと自供したとのこと。
このアメリカ史上最大規模の裏口入学事件を担当したAndrew Lelling検事は「この事件に関わった親を見ると、富と特権のカタログのようです。この事件は詐欺であり、裕福な人がその富を運用して名門大学への裏口入学を図る動きが広まっていることを示しています」と述べ、「この事件の主犯は親と大学関係者です」と、学生は起訴しないことを明らかにしました。
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