サイエンス

通常ではあり得ない「半一卵性双生児」が世界で初めて妊娠中に報告される

by freestocks.org

DNAを共有する一卵性双生児は性別も同じであり、「一卵性双生児の男児と女児」という状態は通常ありえないもの。しかし、オーストラリア・ブリズベンの研究者らが、この極めて珍しいケースを報告しています。

Molecular Support for Heterogonesis Resulting in Sesquizygotic Twinning | NEJM
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1701313

First semi-identical twins identified in pregnancy -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2019/02/190227173108.htm

Scientists stunned by discovery of 'semi-identical' twins | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2019/feb/27/scientists-stunned-discovery-semi-identical-twins


一卵性双生児は1つの精子と卵子が受精し、受精卵が分裂することで双子になるため、通常は同じ性別で、DNAを共有しています。一方、二卵性双生児は別々の卵子がそれぞれ精子と受精したことから生まれるため、性別が異なるケースもあります。

しかし、クイーンズランド工科大学のイケル・ギャベット博士が報告した内容によると、極めて珍しい「1つの卵子に2つの精子が同時に受精した」という半一卵性(semi-identical)双生児が確認されたとのこと。


研究者によると、半一卵性双生児の子どもは2019年2月時点で4歳。オーストラリア・ブリズベンで暮らす双子の母親は妊娠6週目に超音波検査を受けたところ、胎盤や羊膜腔が1つであったことから、「双子は一卵性双生児」と判断されたといいます。しかし、妊娠14週目で双子は女児と男児であることが判明しました。これは一卵性双生児ではありえないことです。

1つの卵子が2つの精子と受精すると、染色体の数は母親から1セット、父親から2セットで、計3セットになります。3セットの染色体を持つ受精卵は通常生きながらえることができません。しかし、ギャベット博士らが報告した双子は3セットの染色体を等しく分けて細胞の集まりを作り、その後2つに分裂して双子となったのだとみられています。細胞のうちいくつかは1つめの精子の染色体を持ち、別の細胞は2つ目の精子の染色体を持つことで、DNAを完全に共有するのではなく、部分的に共有する形で双子が生み出されたとのこと。


アメリカでは2007年にも半一卵性双生児が報告されました。この双子は、1人が幼児期に間性だと判断されたことをきっかけに医師の注目を浴びたとのこと。染色体が調べられたところ、男児と女児の染色体は母親側のものは一致していましたが、父親側のDNAは半分しか共有していなかったといいます。

ブリズベンのケースでは間性の報告はなく、帝王切開によって生まれた子どもは男女ともに健康に見えました。しかし、生まれて間もなく女児に血栓が見つかり、生後4週間で腕の切断を余儀なくされました。また、3歳の時に女児の卵巣が完全に形成されていないことが判明し、ガンのリスクを増加させると考えられたことから卵巣が切除されたとのこと。

妊娠中に半一卵性双生児が発覚したのは、ブリズベンのケースが始めて。研究者は「半一卵性双生児の事例がほとんどないのは、医師が誤診していたり報告されていないケースも存在するためだろう」と考え、二卵性双生児とその両親の遺伝データ968人分を分析したそうです。しかし、半一卵性双生児を示すデータは存在せず、また世界規模の研究でも報告は見つからなかったとのことです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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