機械学習×TensorFlowで交通事故や渋滞を素早く検知できるシステム
アメリカのアイオワ州は年間平均で約33cmもの雪が降り積もる地域であるため、特に冬になると道路を安全な状態に保つことが重要となります。毎年冬になると自動車事故が急増するアイオワ州ですが、この問題に取り組み冬の道路における安全性と効率を改善するため、機械学習を用いて交通状況を分析し渋滞を特定したり事故発生を素早く検知することができるシステムを開発しました。
When Iowa’s snow piles up, TensorFlow can keep roads safe
https://www.blog.google/technology/ai/when-iowas-snow-piles-tensorflow-can-keep-roads-safe/
Keeping Iowa roads safe with AI - YouTube
「多くの人が言うように、アイオワの天気が気に入らなくても、10分も待てば天気が変わってしまうんだ」と語るのはジェフ・ウェリック氏。
そんなコロコロ天候が変わるアイオワ州で、ウェリック氏はローランド=ストーリー・コミュニティ・スクール・ディストリクトのバスの運転手として働いています。
ローランド=ストーリー・コミュニティ・スクール・ディストリクトの最高責任者であるマット・パットン氏は、「アイオワの多くの子どもたちは、学校に通うために10~12マイル(16~19km)ほどの距離を移動します。学校の校長として私が特に気にかけているのは、子どもたちの安全な登下校です」と語っています。
「通常、朝の4時40分に起きたら外に出て、道路の状態を確認します。道路確認は私とマットが行っており、マットが担当する道路の反対側を私が担当しています」とウェリック氏。
パットン氏は「天気がコロコロ変わるとしても、アイオワの道路で何が起きているのかを詳細に把握しておくことは我々にとって非常に重要です」と、通学に長い距離をかけるアイオワの学生の安全を守るため、冬の間は特に道路状況のチェックを細かく行ってきたことを明かしています。
続いて登場したのは、アイオワ州交通局の交通管理センターでディレクターとして働くボニー・カスティーロ氏。「アイオワ州交通局にとっての目標は、旅行者を効率的かつ安全に目的地まで届けることです。我々は400以上のカメラと他のデータ源からくる情報を1日24時間365日にわたって絶えずチェックし続けています。我々の元に入ってくる多種多様なデータを分析することはとても困難です」と、交通局の仕事について語っています。
交通局内にある交通管理センターには多くのモニターが並んでおり、ここで日々カメラから送られてくる情報をチェックしながらアイオワ州の交通状況をチェックしています。
アイオワ州交通局で働く情報専門化のトレイシー・ブランブル氏は、「我々はアイオワ州の助けを借りて、交通局のデータフローを要約し、より迅速に分析できるようにすることを望んでいます」と、交通局が扱う大量のデータをより賢く分析・使用するためのシステムの重要性を説いています。
そこで、アイオワ州交通局とアイオワ州立大学の交通研究所の間で行われたのが、冬の道路の安全性と効率を改善するために「機械学習」を用いるというプロジェクト。
交通研究所でディレクターを務めるニール・ホーキンス氏は、「我々は交通管理のために機械学習を用いるというアイデアにとても興奮しています。GoogleのTensorFlowは交通量のパターンや情報を理解するための助けとなり、我々はより正確な予測から警報などを出すことができるようになります」とコメントしています。
ホーキンス氏らは交通局の扱う膨大なデータを分析し、事故や渋滞などをいち早く検知するシステムを開発。
開発に携わったアイオワ州立大学の研究科学者であるTingting Huang氏は、「TensorFlowと機械学習を用いて、400台ものカメラから集められた映像から『交通事故が起きたかどうか』を自動で検出し、交通事故が発生した場合には交通局のエンジニアに情報を送信することができるシステムを開発しました」と述べています。
固定カメラや除雪機に取り付けられたカメラから集められた視覚データを分析し、渋滞の特定や事故現場へのより迅速な対応などが可能となります。なお、機械学習とTensorFlowの組み合わせで交通状況を改善しようとしているのはアイオワ州だけではありません。それほど多くの雪が降らないカリフォルニア州では、交通渋滞の緩和のためにTensorFlowが使用されました。
「テクノロジーが学区全体で何が起こっているのかどうかを判断するのに役立つなら、我々は子どもたちにとってより良い決断を下せるようになるはずです」と語るのは、ウェリック氏。
さらに、パットン氏は「正直に言うと、朝起きて道路状況を確認するために運転する必要がなくなれば、朝の5時前に起きることはないでしょうね」と笑いながらシステムの恩恵について語っています。
ホーキンス氏が「機械学習は我々の持っていたデータと自動車を結び付ける革命的な方法を提供してくれました」と言えば……
カスティーロ氏は「アイオワ州の道路は、我々が持ち合わせる『より安全で効率的な交通状況を提供するための技術』のおかげで、より良いものとなったことは明らかです」と語り、機械学習とTensorFlowのおかげで冬のアイオワの交通状況を大幅に改善することができたと述べています。
なお、アイオワ州の交通局は機械学習が交通事故の発生予測や、事故の発生理由をよりよく理解するためにも使用できるとしています。また、冬の季節は交通状況が悪くなり通勤時間が長くなりがちですが、それでも嵐の間はクルーズコントロールを使用することを控えることを推奨しています。
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