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価格下落が続くSSD市場にとって素晴らしい1年になった2018年のSSD技術動向まとめ


SSDの価格は高止まりどころか値上がりしていた2017年を経て、2018年は容量単価が下落する一方という、ユーザーにとってはありがたい1年になりました。3D NAND技術で主要メーカー間で競争が起き、TLC NANDに続いてQLC NAND製品も登場するなど、充実した技術進化を見せた2018年のSSD動向をAnandTechが非常にわかりやすくまとめています。

AnandTech Year in Review 2018: SSDs
https://www.anandtech.com/show/13752/anandtech-year-in-review-2018-ssds

◆3D NAND
2018年は主要なNANDフラッシュメーカーすべてが64層以上の3D NANDの量産を1年通して行った初めての年になりました。2017年まではNAND業界最大手のSamsungの独壇場だった3D NANDは、主要メーカーも本格的に製品を投入することで競争が激しくなりました。

Intel・Micron連合は、Samsungに続いて2番目に早く3D NAND製品を導入しましたが、初期の32層製品では歩留まりが悪く量産できませんでした。しかし第2世代の64層製品は速度と電力効率が改善され、Samsungに挑める態勢が整ったとのこと。


東芝とWestern Digital・SanDisk連合は、第1世代の3D NANDでは商品化できず、第2世代もニッチな製品を出荷したにとどまりましたが、第3世代の64層製品のBiCS 3D NANDは大量生産に成功し、2018年は最盛期を迎えています。

Hynixは自社製品の一部に提供する以外には3D NANDを市場に投入していないものの、業界に先駆けて72層製品の生産に成功するなど、多層化技術で市場をリードしようとしています。

◆NVMe
高速インターフェースのNVMeにも競争の波が訪れました。これまで圧倒的な優位性を持っていたSamsungに対して、2018年には新しいSSDコントローラが次々と登場して、高速SSDの普及が大きく前進しました。

Western Digitalは第2世代のWD BlackとそのOEM製品で自社製のNVMeコントローラを採用しました。Western Digital以外にもSilicon MotionとPhisonが新世代のNVMeコントローラをリリースし、Samsungに挑戦しています。


また、新世代のNVMeコントローラは、エントリレベルを含む幅広い範囲へのNVMe導入を後押ししました。とはいえエントリレベルのNVMe接続のSSDでさえSATA接続のSSDに比べて高価だとのこと。なお、高価なハイエンドのNVMe SSDはエントリーレベルのNVMe SSDよりも価格下落のペースが速いため、NVMe全体の価格帯の幅はより狭まりつつあるそうです。

高速なNVMeですが、依然としてランダムIO性能やSATAよりも劣る電力効率に改善の余地はあるとAnandTechは指摘しています。

◆QLC NAND
2018年に、ついにNANDフラッシュセルあたり4ビットを格納するQLC NANDが登場しました。QLCの登場によって、2ビット格納のMLCは今や高級品扱い、1ビット格納のSLCはコンシューマー向け製品を市場で見かけることすらなくなりました。

セルに4ビットを格納するQLCではデータ書き込みパフォーマンスと耐久性が大幅に低下することが懸念されています。ただし、QLCも数年前のSSDに比べて耐久性が悪いということはなく、低価格TLCの3分の1という書き換え回数とはいえ汎用ストレージとして実用上問題のないレベルだそうです。


また、コンシューマー向けだけでなく、エンタープライズストレージ市場にもQLCは投入され、7200RPMのHDDとの競争が始まろうとしています。QLC NANDに加えてキャッシュ用に高性能・高耐性のSLC NANDを使用したハイブリッドモデルによって、高速性と耐久性の両面で優れる製品が登場します。

AnandTechによると、QLCはまだ初期段階であり、2019年はSSD業界の大きなトレンドの一つになると述べています。

◆エンタープライズ向けのフォームファクタ争い
データセンターなどのエンタープライズ向けのSSDでは、フォーマット戦争が起こっています。M.2はホットスワップをサポートしていない上に小さすぎるという欠点があります。2.5インチサイズのU.2ドライブはホットスワップに対応しているものの、2枚の積層PCBによる発熱問題があり冷却面で難があります。

そこでIntelは独自の規格「Ruler」を発表し、ライバルのSamsungも「NF1」という規格を発表するなど、エンタープライズ向けのSSDフォームファクタのデファクトスタンダードを巡った争いが起こっています。

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コンシューマー向けには決して降りてこない高性能なSSDですが、データセンターなどで用いられる量は巨大です。IntelやSamsungや他のメーカーも含めて、エンタープライズ市場を制する規格争いは2019年も激しさを増しそうです。

◆IntelとMicronの分離
SSDが普及する直前の2008年にIntelとMicronはパートナーシップを締結しました。これによって設立されたIM Flash Technologiesは、技術面でSSD市場をリードする重要な役割を果たしてきました。

このIM Flash Technologiesは最終的に「3D Xpoint」技術の実用化にこぎつけ、IntelはOptaneメモリシリーズをリリースすることに成功しました。

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そのIntel・Micron連合は、2018年についに関係を解消することが発表されました。今後はIntelとMicronはそれぞれ別々の道を進むことになります。AnandTechは、Intelはエンタープライズ向けストレージに特化していき、対照的にMicronはコンシューマー向けも含む広範なNANDビジネスを展開する可能性があると指摘しています。


◆中国NANDメーカーの台頭
中国のTsinghua Unigroupは、子会社のYMTCを通じて3D NAND市場に参入する見込みです。YMTCのNAND技術は現時点では周回遅れですが、2019年後半には64層の3D NANDを量産し、96層製品はスキップして、2020年に128層製品を投入することで、一気に主要なNANDメーカーに追いつこうという計画を打ち出しています。韓国や日本、アメリカのメーカーに加えて中国メーカーも参入することで、NANDビジネスはさらに激しい競争が繰り広げられそうです。

このような3D NAND製造競争の激化と歩留まりの向上を背景に、2018年にSSDの価格は急激に低下し始めました。SSD価格の低下傾向は、仮にNANDメーカーの生産能力向上ペースが低下したとしても2019年前半まで続くとAnandTechは予想しています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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