サイエンス

情報を正確に着実に記憶するには一定時間おいて繰り返す「間隔記憶」が有効


学校の試験対策や語学学習など、学んだことを定着させる「記憶」は、あらゆる学習で必要です。学習効率を高め、記憶を確実に保持するために、一定期間を置いた後に再び覚えなおす「間隔記憶」が有効だと教養をテーマにするブログFarnam Streetは考えています。

The Spacing Effect: How to Improve Learning and Maximize Retention
https://fs.blog/2018/12/spacing-effect/

Mindhacker」の著者のロン・ヘール・エバンス氏は、「私たちの記憶は、『壮大』であると同時に『哀れ』です。信じられないほど素晴らしい仕事をすることがありますが、望んでいる通りには全然機能しないもの」だと述べています。瞬時に大量の物事を記憶できるコンピューターとは違い人間の脳は何かを記憶しようとするときに努力や献身さを要求するものですが、完璧に思い返すためには間隔を空けて記憶作業を繰り返す「間隔記憶」が有効だとエバンス氏は指摘しています。

間隔記憶の有効性を真っ先に提唱したのはドイツの心理学者のヘルマン・エビングハウス博士です。エビングハウス博士は物事を忘れていく様をグラフにした「忘却曲線」を生み出しました。人間の脳の忘却の過程では、非常に短い時間で急速に忘れ、ある程度忘れてしまうと忘却のペースは緩やかになるという指数関数のようなグラフを描きます。しかし、エビングハウス博士は、間隔を空けてから再び記憶しなおす回数を増やしていくことで、忘却のペースを非常に緩やかにでき、ほぼ完ぺきに思い返せるようになることを見つけました。


また、エビングハウス博士は、忘れてしまった情報は潜在意識の中に一定量が格納されているという「思い出の貯蓄」についても発見しました。意識的に引き出すことができない情報も、後から再学習すると引き出すプロセスを高速化できるため、繰り返し学習の効果が高まるのは思い出の貯蓄のおかげです。

このような脳の構造について「Fluent Forever」の著者のガブリエル・ワイナー氏は、「私たちは思考し、繰り返し、思い出し、想像することはできますが、記憶するようには作られていません。脳は重要なことを考え自然に保持するようにデザインされています」と述べ、人間の脳の構造的な問題を指摘しています。例えば、トラが恐ろしいものだということを学んだ場合、「トラは危険だ」と覚え続けようとしなくても、トラを忘れることはなく、遭遇したらすぐに逃げられるように情報として整理されていると述べています。

また、記憶にとって間隔記憶が有効な仕組みについては、脳には思い出を保存する特別な部位があるわけではないという考えがあります。この考えによると、記憶とは脳全体で作られるものであり、物事を様々なパーツにわけて脳全体で構成するものだとのこと。この点でも情報を保持する仕組みはコンピューターと人間の脳では異なっているそうです。

「最終的に脳はニューロンのネットワーク全体で単一のタスクを覚えますが、すべての脳の活動は意識下にあるもので、記憶の作業は意識的なコントロールが必要な領域で発生します。新しいスキルを練習しない人は、適切な感覚を得ることができません。努力なしに何かを身に付けることはできず、何度も試してみることで深い気付きが生まれ、努力することで物事を達成させられるのです」と「Mastery」の著者のロバート・グリーニー氏は述べています。


間隔記憶の有効性について体験的に理解できる人は少なくなさそうですが、教育課程でこの記憶方法を学ぶことは非常にまれです。そこで、Farnam Streetでは、間隔記憶を有効にするために以下のような学習ルーチンワークを提案しています。

・情報を振り返るスケジューリング
典型的には、1時間後、1日後、1日おき、毎週、2週間後と、1カ月ごと、6カ月ごと、1年ごとなど、あらかじめ間隔を定めてその都度、情報を再確認する。

・情報の整理に工夫をする
間隔記憶学習を行うために、再び情報を振り返りやすい形で保存しておく必要があります。例えばフラッシュカードや「Anki」などの繰り返しソフトなどは有効だとのこと。ちなみに、情報を整理してフラッシュカードに描き込む行為自体が情報を振り返る学習プロセスにもなっているそうです。

・進行状況を追跡する指標を持つ
学習プログラム「Duolingo」に組み込まれた学習成果を確認するポイントシステムや、日々の目標を定めるなど、学習の進捗を追跡することによって、進歩と改善の感触を得られるため、学習効果が高まるとのこと。

・集中する時間の設定
あまりに長い時間学習すると注意力が散漫になり、学習できる情報量が減ってしまいます。そこで、集中的に学習するためには時間は長くとも30分以内にとどめておいて、学習セッションの間に適度な休憩時間を設けるのがおすすめだそうです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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