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中国のウイグル族収容施設は急速に拡大を続けているという指摘


中国の西端にある新疆ウイグル自治区には、イスラム教を信仰する大勢のウイグル族の人々が住んでいます。中国政府は「ウイグルの人々に対する圧力を強めている」と人権団体などから国際的な非難を浴びていますが、ウイグル族をはじめとする少数民族に対する強硬姿勢を示しています。そんな新疆ウイグル自治区にはウイグル族を中心とするイスラム教徒を収容する施設があるとのことで、ロイターが独自にウイグル族収容所について調べた調査結果をまとめています。

Tracking China’s Muslim Gulag
https://www.reuters.com/investigates/special-report/muslims-camps-china/

ウイグル族と中国政府は以前から衝突を繰り返しており、2009年にはウイグル騒乱として知られる大規模な治安部隊とデモ隊との衝突が発生しました。ウイグル騒乱について「中国政府の発表はウイグル族の被害を過小に報告している」といった非難も寄せられていますが、中国政府はそれ以降さらにウイグルの人々への圧力を強めています。

2018年9月には、中国政府から新疆ウイグル自治区の住民に対し「スマートフォンに監視アプリをインストールするように」という通知が出されたと報じられており、、中国政府がウイグル族への監視体制を強めている様子が伺えます。。

中国政府がインストールを強要する「監視アプリ」から住民はどうやって身を守ればいいのか? - GIGAZINE


そんな中、新疆ウイグル自治区にはウイグル族を収容する施設があるという指摘があり、国連会議で議論の対象となりました。施設内部には一説によると100万人ものウイグル族が収容されているともいわれていますが、中国政府は単なる教育施設に過ぎないと主張しており、施設に関する詳しい情報は明らかになっていません。

そこでロイターは中国政府がウイグル族を収容しているといわれている施設について、多数の衛星写真や施設の建設に関係する文書などを利用して調査を行ったとのこと。

以下の画像はウイグル族収容施設とみられる建物を遠くから撮影したもの。山脈の麓に位置する土地にはいくつもの建物が建ち並んでいます。


手前側にある一画がトルファン市高昌にある地方公社の職業スキル教育トレーニング・センターとされる建物。ここにはウイグル族の人々が収容されているとみられており……


周囲は壁によって仕切られています。


また、建物の四角に設置されているのは警備員が警戒する見張り台だとのこと。


施設の建設に関する80の文書をもとに、ロイターは衛星写真から明確に識別可能な39の施設を確認。およそ2年間にわたってその施設の建設状況を追跡したところ、急速に施設が拡大している状況をロイターは確認したとしています。

新疆ウイグル自治区は西をカザフスタンやキルギスタン、北や北東でロシアやモンゴルなどと接しており、中国で最も大きな砂漠であるタクラマカン砂漠を有しています。そんなタクラマカン砂漠を取り囲むかのように、ウイグル族収容施設は点在しているとのこと。


特に2017年から収容施設の規模は急速に拡大しているようで、確認できる最も巨大な施設であるコルラ市の施設は2017年4月以降、従来の2倍ほどの規模になっているとロイターは述べています。


上記の衛星写真から建物部分を抜き出したのがコレ。図の白い部分が2017年以前に建設されたコルラ市にある施設の建物部分、オレンジ色の部分が2017年4月以降に新たに建設された建物部分です。


ロイターが調査を開始した2017年4月の時点で、ウイグル族収容施設とみられる39の施設は合計で539棟もの建物を有しており、総面積は約38万平方メートルほどでした。


ところが、その後2018年8月までに施設の規模は急速に拡大。建物数はおよそ倍の1129棟、敷地面積は3倍近い約1万平方メートルにまで拡大しており、この大きさはサッカーコート140個分ほど。記事作成時点でも施設の建設は続けられています。


新疆ウイグル自治区の達坂城区にある施設を捉えた以下の衛星写真を見ると、2017年初め頃の時点では広大な砂漠に建物の基礎が見えるだけだったのが……


2018年10月には多くの建物が建ち並んでいます。


カラーで見ると、荒れ地の真ん中に突如として現れた壁に囲われている施設の様子がよくわかります。


中国政府の警察や治安部隊は新疆ウイグル自治区に入り込んだ外国人のレポーターに対して厳しい監視を行っており、実際に新疆ウイグル自治区で取材を行ったロイターのレポーターはほぼ常に警察の監視下に置かれていたとのこと。ある時はウイグル族収容施設とみられる施設に近づこうとしたレポーターに対し、治安部隊が制止してきたこともあったそうです。


施設の外壁には鉄条網が巻かれ、監視カメラが設置されて監視塔がそびえ立つ様子は、まるで刑務所を連想させます。


ロイターが外国に脱出した8人の元拘留者に話を聞いたところ、「刑務所のような施設ではトイレを含むあらゆる行動がカメラやマイクで監視され、睡眠も自由にできない」と元拘留者は述べました。また、中国の国歌や主張を暗唱させられたり、共産党が掲げる言葉を正しく言えなかった人々には食事が与えられなかったり、宗教を放棄するように強要されたりと、耐えがたい待遇に自殺を考えたという人もいたとのこと。中国政府が主張する「ウイグル族のための職業訓練施設」という内容とは違う施設内の実態が明らかになっています。

インタビューを受けた8人のうち4人がウイグル族、4人がカザフ族だったとのことで、ウイグル族に限らずイスラム教徒であれば施設に収容されていたようです。8人のうち中国に家族を残している人がほとんどであり、全員が匿名を希望したとのこと。

新疆ウイグル自治区には多くの漢族が入植を進めており、町中のモスクの近くには中国の国旗がはためいていたり……


モスクが水タバコやアルコールを提供するバーになっていたりと、本来の宗教施設としての実態はありません。中国当局が監視の目を光らせているということもあり、モスクには礼拝する人が訪れないそうです。


カシュガルの市場には多くの漢族が行き交い……


ウイグル族の女性が通り過ぎる背後には、巨大な習近平国家主席の顔がスクリーンに映し出されていました。


なお、中国当局は今回の調査に関してロイターの質問に答えなかったとのことです。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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