サイエンス

GoogleのAIは転移性の乳がんを99%の精度で検知することが可能


毎年多くの死亡者が発生するがんは循環器系やリンパ系を通って体内を移動し、体の別の場所に新たな腫瘍を形成する転移という現象を起こすことがあります。一般に転位性のがんは検出が困難であることが知られていますが、Googleが開発したAIは「99%の精度で転移性の乳がんを検知できる」と発表されました。

Artificial Intelligence–Based Breast Cancer Nodal Metastasis Detection | Archives of Pathology & Laboratory Medicine
http://www.archivesofpathology.org/doi/10.5858/arpa.2018-0147-OA

Google AI claims 99% accuracy in metastatic breast cancer detection - VentureBeat
https://venturebeat.com/2018/10/12/google-ai-claims-99-accuracy-in-metastatic-breast-cancer-detection/

乳がんは多くの女性が人生に一度は発症するがんであり、世界中で毎年50万人もの人々が乳がんによって亡くなっているとのこと。2009年にボストンの保健所で乳がん患者を対象に行われた研究では、乳がん患者のうち4人に1人が不十分な検査や診断といったケア段階でのミスを経験していることが判明しています。乳がん患者の死亡原因の90%はがんが転移した結果といわれていますが、転移性がんの検知はベテランの医者でも時折見逃してしまうことがある、非常に困難な課題です。

そんな転移性の乳がんについて、GoogleのAI部門とサンディエゴ海軍医療センターのAI研究者は、乳がんのリンパ節への転移を自動で検出する新たながん検知アルゴリズムを開発したと発表しました。「リンパ節アシスタント」または「LYNA」と名付けられたこのAIシステムは、The American Journal of Surgical Pathologyという医学誌に論文が掲載されました。

熟練した病理医であっても、転移性の乳がんを検知する精度には限界があるとのこと。2017年に発表された研究では、「ベテランの病理医であっても、限られた時間の制約下では微少ながん転移の62%を見逃してしまう」という結果が明らかになっています。「AIのアルゴリズムは、がん検知に利用するスライド上の全ての組織パッチを評価することが可能です」と研究チームは述べており、LYNAには病理医を訓練する時と同様のフレームワークを適用して学習させたとしています。

by NASA Goddard Space Flight Center

LYNAはオープンソースの画像認識ディープラーニングモデルである「Inception-v3」をもとに作られており、入力された画像からピクセルレベルでがんを探します。研究チームはLYNAをトレーニングする過程で、トレーニングに使用する組織パッチのラベルを、良性:腫瘍=4:1にすることでトレーニングの効率を上昇させることに成功しました。

その結果、LYNAは転移性乳がんの画像診断精度測定に使用する評価セットの測定で、実に99.3%もの精度を達成することができたとのこと。わずかな誤認例もみられたものの、気泡や出血、染色過多といった診断用スライドの不具合による悪影響も受けず、人間の病理医よりも優れた転移性乳がん検知能力を示したとされています。

研究チームは「LYNAは病理医よりも高い転移性乳がんの検知能力を持っており、病理医の診断のサポートを行うことで診断作業の効率性向上やミスの減少に役立てることができます」と述べ、新たな転移性乳がん検知AIに手応えを感じています。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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