サイエンス

砂糖入り飲料のせいで年間220万人が2型糖尿病になっており心血管疾患と合わせた死者は34万人に達するという研究結果


ジュースや炭酸飲料などの砂糖が入ったドリンクは世界中で愛飲されていますが、近年は砂糖の過剰摂取が健康に悪影響を及ぼすことが懸念されています。新たに学術誌のNature Medicineに掲載された論文では、砂糖入り飲料のせいで年間220万人が2型糖尿病に、120万人が心血管疾患になっているという研究結果が報告されました。

Burdens of type 2 diabetes and cardiovascular disease attributable to sugar-sweetened beverages in 184 countries | Nature Medicine
https://www.nature.com/articles/s41591-024-03345-4


New study links millions of diabetes and hear | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1069329

Sugary Drinks Linked to Global Rise in Diabetes, Heart Disease - The New York Times
https://www.nytimes.com/2025/01/06/health/sugary-soda-beverages-diabetes-heart-disease.html

砂糖入り飲料は固形食品と比べて急速に摂取・消化されるため、満腹感が少ないままカロリー摂取量が増加して肥満につながるほか、糖の代謝に関わるインスリンやその他の調節経路に影響を及ぼします。また、砂糖入り飲料はカロリーが高い一方で栄養価がほとんどないため、健康的な食品が砂糖入り飲料に置き換えられてしまうことも問題です。

このような公衆衛生上の問題となっている砂糖入り飲料が、世界各地で具体的にどのような健康被害を引き起こしているのかを確かめるため、アメリカ・タフツ大学の研究チームは、世界の食生活に関する包括的なデータベースであるGlobal Dietary Databaseを用いて分析を実施。データには世界184カ国で測定された砂糖入り飲料の摂取量と、2型糖尿病および心血管疾患の発症率などが含まれていました。

研究チームはsugar-sweetened beverages(SSBs:砂糖入り飲料)を「8オンス(約226.8g)あたり50kcalを超えており砂糖が添加された飲料」と定義しており、この定義では砂糖が追加されていない100%果物あるいは野菜のジュースや、人工甘味料が入ったノンカロリー飲料、甘くした牛乳などは砂糖入り飲料に含まれません。


分析の結果、2020年だけで220万人の2型糖尿病と120万人の心血管疾患の新規発症が、砂糖入り飲料に関連していることが示されました。これは、すべての2型糖尿病の9.8%、心血管疾患の3.1%が砂糖入り飲料によって引き起こされていることを意味しています。さらに、2020年には全世界で約34万人が、砂糖入り飲料に関連した2型糖尿病あるいは心血管疾患で死亡したと推定されました。

地域に着目すると、砂糖入り飲料に起因する症例の多くが、サハラ以南のアフリカとラテンアメリカに集中していることも明らかになりました。サハラ以南のアフリカでは、2型糖尿病の新規発症の21%以上が砂糖入り飲料に起因しており、ラテンアメリカやカリブ海地域では2型糖尿病の新規発症の約24%、心血管疾患の新規発症の11%以上が砂糖入り飲料に関連していると報告されています。


特にコロンビアとメキシコ、南アフリカは砂糖入り飲料による悪影響を強く受けている国だとのこと。コロンビアにおける2型糖尿病の新規発症の48%以上は砂糖入り飲料に起因しているほか、メキシコでも新規2型糖尿病の約30%が砂糖入り飲料に関連していました。南アフリカでは新規の2型糖尿病の27.6%、心血管疾患の14.6%が砂糖入り飲料に起因するものでした。

世界的に見ると、砂糖入り飲料の摂取量は女性よりも男性の方が、高齢者層よりも若年層の方が多い傾向がみられました。また、サハラ以南のアフリカや南アジア、ラテンアメリカ、カリブ海地域では教育水準の高い成人ほど砂糖入り飲料の摂取量が増えましたが、中東や北アフリカでは教育水準が低い成人の方が砂糖入り飲料の摂取量が多かったと報告されています。

以下の図は、「a」が砂糖入り飲料に起因する2型糖尿病患者の数を人口100万人あたりで表したもので、「b」は砂糖入り飲料に起因する心血管疾患患者の数を人口100万人あたりで表したもの。いずれもアフリカや中東、南北アメリカで患者数が多いことがわかります。


日刊紙のニューヨーク・タイムズはこの結果について、北米やヨーロッパでの売上減少に直面した飲料メーカーは、アフリカや中南米の発展途上国での顧客開拓に力を入れていると指摘。論文の筆頭著者であるタフツ大学のダリッシュ・モザファリアン教授は、ニューヨーク・タイムズに対し「規制当局や政策立案者は、航空事故やテロなどの悲劇的な死には適切に対処しますが、砂糖入り飲料が引き起こすもっと多くの死と苦しみは隠されているため、人々の心を動かすことがありません。これは変えなくてはならないのです」と述べました。

研究チームは砂糖入り飲料による害を軽減するため、公衆衛生キャンペーンや砂糖入り飲料の広告規制、砂糖入り飲料への課税といった多面的なアプローチを求めています。実際に100ml当たり5g以上の砂糖を含む飲料に課税する「ソフトドリンク業界税(SDIL)」、いわゆる砂糖税が導入されたイギリスでは、子どもが飲料から摂取する遊離糖類が半分になったことが報告されています。

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in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

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