メモ

誘拐事件の身代金の金額を下げるため「誘拐保険」が取り入れている方法とは?


親族や社員などが誘拐された場合の損害や損失を補填する保険に「誘拐保険」というものがあります。日本の保険会社では取り扱われていませんが、海外においては一般的な保険商品の1つとして扱われており、富裕層の人々や多くの企業が加入しています。実際に誘拐事件が発生すると、保険会社は身代金の負担はもちろんのこと、犯人との交渉の場においても保険会社が介入しており、その中には身代金を引き下げるためのテクニックが存在しています。

How kidnapping insurance keeps a lid on ransom inflation - Market capture
https://www.economist.com/finance-and-economics/2018/05/26/how-kidnapping-insurance-keeps-a-lid-on-ransom-inflation

誘拐事件の身代金は、毎年5億ドル(約540億円)~15億ドル(約1620億円)という膨大な金額となっており、その一部は誘拐保険から支払われています。2018年現在おいては、フォーチュン誌に掲載されるトップ500の企業のうち約75%の企業が誘拐保険に加入するなど、そのシェアは拡大を続けています。

また、誘拐事件が多発する国では、日本のように警察が事件に介入することがほとんどありません。このため、世界各国の裕福な家庭においては、事件発生時に人命のみならず財産面においても深刻な打撃を受けてしまう可能性があることから、誘拐保険に加入しなければならないという現実も存在しており、その高いシェアから保険会社にとっては切っても切り離せない商品となっています。

しかし、誘拐保険に加入する場合は、注意しなければならない点が存在しています。それは、「誘拐保険に加入していることを不特定多数に知られた場合は、保険が無効になる」というものです。これは保険に加入していることを誰かに知られてしまうと、誘拐されるリスクと高額の身代金を要求されるリスクが高まってしまうからです。


この「誰にも知られてはいけない」ということは事件を通じて徹底されています。実際に被保険者が誘拐された場合、保険会社は身代金を支払うのみでなく、危機管理の専門家を現場に派遣するのですが、この専門家は助言を行うのみで犯人との交渉は基本的に関係者が行い、犯人には保険会社が介在していることを悟られないようにされます。こうすることで、身代金がつり上げられるという問題を防いでいます。

誘拐犯との交渉に専門家が関わることで、当初要求された身代金額から最大10%減額することに成功したケースがあるそうです。実際、誘拐犯が身代金の額を決めるときは、その後の減額交渉に備えて目標額よりも高額に設定する傾向にあります。このため、身代金の要求を即座に受け入れてしまうと、誘拐犯側に「まだ交渉の余地がありそうだ」と認識され、金額をつり上げられる事態に発展してしまうことが考えられます。

誘拐事件の場合、多額の身代金を払ったとしても人質の待遇が改善されたり、無事に解放されることはほとんどないとのこと。危機管理会社のSeoane Consulting Groupに務めるカルロス・セオアネ氏は「高い身代金を支払うことが人質の安全につながることはありません」と語っています。


それでも専門家が交渉に関与することで、人質の生存につながっていることも事実です。アニヤ・ショートランド氏が書いた誘拐保険に関する著書では「人質が殺されるリスクは誘拐保険に加入している場合は2%、加入していない場合は9%である」と述べられており、保険に加入するだけで人質が死亡するリスクを約5分の1に下げられるとしています。

しかし、誘拐保険を採用する企業が増えている状況は、保険会社が身代金を支払うことを前提とした誘拐事件が発生するリスクを高めていることが懸念されており、新たな対策に乗り出す必要があると指摘する声も挙がっています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
誘拐されていた女性が車のトランクから脱出する一部始終を監視カメラが激写 - GIGAZINE

犯罪が発生しやすい時間・季節・日を犯罪種別ごとにグラフ化するとこうなる - GIGAZINE

ランサムウェアの脅しに屈して1億円を払ってしまったウェブホスティング会社 - GIGAZINE

FBIがデータを人質に取るサイバー犯罪の被害者に「身代金を支払うように」とアドバイス、カスペルスキーはこれに反論 - GIGAZINE

ハイジャック犯が身代金を持ってパラシュートで消えた完全犯罪「D.B.クーパー事件」から45年、FBIがついに自発的捜査を終了 - GIGAZINE

in メモ, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.