電子レンジの仕組みがわかるムービー「How a Microwave Oven Works」
日常生活になくてはならない家電製品の1つである電子レンジ。そんな電子レンジが、どのような仕組みで動いているかについて、YouTubeでさまざまな機械のメカニズムを説明しているengineerguyがわかりやすく解説しています。
How a Microwave Oven Works - YouTube
「電子レンジは工学分野の素晴らしい偉業です」と語るのが、今回電子レンジの仕組みを解説してくれるYouTuberのビル・ハマック氏。
「電子レンジは3つ構成要素で成り立っています」
「まず1つ目が、この真空管。これはマグネトロンと呼ばれる真空管の一種で、食品を加熱するエネルギーを発生させます」
「2つ目は庫内にある穴です。この穴は、電磁波が通ってくる導波管の一方の開口部で、もう一方の開口部につながっているマグネトロンで生み出された電磁波を庫内に運んでくる役割があります」
「3つ目はエネルギーを庫外に出さず、食品のみに当てるための部屋です」
「マグネトロンが放出するエネルギーはマイクロ波と呼ばれる電磁波であり、電子レンジはこの電磁波を使って食品を温めます」
「電子レンジ以外にも、多くの加熱調理器が存在しますが、伝熱の仕組み自体は変わりません。分子レベルでは『熱=分子の運動』となり、温度を上昇させたいのであれば分子を運動させる必要があります」
「オーブンや釜にジャガイモを入れて温める場合……」
「加熱すると内側の壁が熱を放射して、ジャガイモを外側から温めます。このため、ジャガイモの外側の温度が上がりやすくなり、中央部分の温度が低くなる傾向があります」
「しかし、電子レンジのようにマイクロ波を使って温める場合、ジャガイモは中央部分から温度が上昇する傾向にあります」
「なぜ中央から温まるのでしょうか?」
「それは水分子(H2O)に関係します。水は水素と酸素の化合物で、水素原子2つと酸素原子1つで構成されており……」
「水素原子側が陽(+)極、酸素原子側が陰(-)極に帯電しているため、双極子モーメントは水素原子側から酸素原子に向かって発生します」
「そして、これらの分子に運動エネルギーを与えるため、マグネトロンから放出されるマイクロ波を当てます。この波は電場および磁場を持っており……」
「電場と磁場の向きが急速に変化するという特徴があります。この電子レンジの場合、電場と磁場の向きが1秒間に24億5000万回変化します」
「このとき、水分子は電場の向きに合わせて整列しようとするので、波の動きに合わせて振動を開始。そして水分子がこすれ合うことで、分子摩擦が生じて熱を発生します。この分子摩擦の熱を使って温めることが、電子レンジの仕組みというわけです。また、電子レンジでジャガイモを加熱したときに中央から温まる理由は、ジャガイモの中央部分に多く含まれている水分子がマイクロ波に反応したからと考えることができます」
「次にチーズを使って、マグネトロンから放出されるエネルギーの波長を調べてみましょう」
ハマック氏は電子レンジのターンテーブルを取り外した後、円柱状の柱をセット。その後、ハマック氏は柱の上にチーズを敷き詰めた鉄板をのせ、電子レンジで加熱を行います。
ハマック氏は加熱したチーズを取り出し、中身を見てみると……
赤枠で囲まれた部分の「(加熱され)チーズが溶けた箇所」と黄緑色の枠で囲まれた「(加熱されず)チーズが溶けていない箇所」に分かれていることがわかります。
「これは庫内に波が存在することを示しています。この波は定常波であり、庫内に高温と低温の箇所を生じさせていることもわかります」
「青い矢印の山と谷のピーク部分が最も高温となる場所で……」
「赤い点は波が動いても変化しないため、加熱されない場所になります」
「溶けたチーズの間隔を確認すると、2.5インチ(約6.4cm)なので……」
「庫内を流れるマイクロ波の波長の半分の長さが約6.4cmであることがわかります」
「波長の長さがわかると周波数を求めることが可能です。周波数は光速を波長で割ることで求めることができ、計算すると2.34GHzとなります。実際の電子レンジの周波数は2.45GHzであることから、それなりに高い精度で求められることがわかります」
「電子レンジにとって最も重要な事実は、高出力の電磁波を放出することが可能なマグネトロンを作り出したということにあります」
「今、この電子レンジのマグネトロン部分を取り出しましたが、このデバイスは革新的なデバイスです。実際のマグネトロンはもっと小さく、ここで見えている大半の部品は冷却用のフィンであり、マグネトロンが動作するときに放熱するための装置です」
「そして冷却用フィンの内側に真空管があることを確認できます」
「これは冷却用フィンから取り出したマグネトロンで、上下の磁石と……」
「真空管で構成されています」
「真空管の外側には銅陽極、中央に陰極のフィラメントがあり……」
「電圧をかけると中央のフィラメントから外側の陽極に向かって、電子を放出します」
「真空管の上下に取り付けられている磁石によって、中央の陰極から陽極に向かって放出された電子は、ローレンツ力でフィラメントに戻ってきます」
「この磁力をうまく調整することで、フィラメントから放出された電子を陽極の円筒内をグルグル周回しながら陰極に戻るように設定して、マイクロ波を放出できるマグネトロンとして動作させることが可能になります」
最後にハマック氏は「このような高度な仕組みを精巧かつ低コストで実現できるようになったことに、驚きを隠せません」と語っており、ムービーを締めくくっています
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