ハードウェア

従来の1000分の1の超省電力&バッテリーレスでHDストリーミング可能な「Backscatter」カメラシステムが開発されている


撮影した映像をリアルタイムで送信できるストリーミングムービーシステムの大きな弱点である電力性能を、なんと1000倍から1万倍まで省電力にできるカメラシステムがアメリカの技術者によって開発されています。最終的には、通信機器からのパルスを動力源にすることでバッテリー不要でHD画質のムービーをストリーミングできるカメラシステムが実現する見込みです。

Battery Free HD Video Streaming
http://batteryfreevideo.cs.washington.edu/

Researchers achieve HD video streaming at 10,000 times lower power
https://techxplore.com/news/2018-04-hd-video-streaming-power.html

バッテリーなしでHDムービーストリーミングが可能な「Backscatter」カメラシステムの原理は、以下のムービーで解説されています。

Towards Battery-Free HD Video Streaming - YouTube


ワシントン大学の研究者が開発中の「Backscatter」構造を持つカメラシステムは、スマートフォンや無線LANのハブから受け取った電波によって駆動できるカメラで、バッテリーを搭載する必要がありません。しかもHD画質でのストリーミングムービーを撮影可能です。このBackscatterカメラシステムがあれば、スマートフォンに映像を送信できるウェアラブルカメラやホームセキュリティカメラをバッテリーなしで動かしてストリーミングムービーを生み出せるとのこと。


このようなバッテリーレスのストリーミングカメラの仕組みを理解するには、既存のストリーミングカメラの仕組みと比較するのが最適です。一般的にストリーミングカメラは「イメージセンサー」「アナログ-デジタル変換機(ADC)」「無線機器」の大きく3つのコンポーネントから成り立っています。


この3つの部品のうち、イメージセンサーは100μW(10000分の1ワット)と非常に省電力なのに対して、ADCと無線機器は1W程度の電力を消費します。つまり、ADCと無線機器は「電力食い」というわけです。


そこで、消費電力のほとんどすべてを占めるADCと無線機器を切り離して、データ通信先のハブ端末に持たせるというのがBackscatterカメラシステムの基本的なアイデアです。


イメージセンサー部分に電波を送受信するアンテナを直接接続し、ADCと無線機器はハブ端末に移動させます。ハブ端末からパルス信号を受け取ったイメージセンサーは、パルス信号によって駆動できるとのこと。


撮影した画像情報は信号をハブ端末に返します。これによってBackscatterカメラシステムはハブ端末側から動力を得つつストリーミングデータを送り続けられるというわけです。


ムービーの最後に、Backscatterカメラシステムで撮影したストリーミングムービーのサンプル映像が収録されています。テスト機では720pのHDムービーを10fpsのフレームレートでハブ端末から最大14フィート(約4.3メートル)離れた距離で駆動させてムービーストリーミングに成功しています。


Backscatter技術は、これまでにも温度センサーなどの低ビットレートのセンサで使用されてきました。

バッテリーなしで無線通信できるIoTに最適な技術「WiFi Backscatter」とは? - GIGAZINE


ワシントン大学のジョシュア・スミス教授の研究チームは、Backscatter技術を使ってHDストリーミングムービーという比較的高ビットレートのデータ転送に成功しました。Backscatterカメラシステムでは、各フレームのピクセル情報を一連のパルス信号に変換します。パルスの波長はピクセルの値を、パルスの接続時間はピクセルの輝度に比例させることで、映像を生成するとのこと。


低解像度ではあるものの、既存のムービーストリーミング技術に比べて1000倍~1万倍の低消費電力によるストリーミングに成功しています。


現時点では小さなバッテリーを使っているシステムをバッテリーレスにすることが次の課題だとのこと。バッテリーフリーでHDムービーストリーミングが可能な小型・軽量カメラが実用化されれば、例えばスポーツ選手のプレイを妨げないで1人称視点のムービー撮影が可能なカメラが登場することなどが期待できます。

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in ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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