世界最大手のライブプロモーター「Live Nation」に独占禁止法違反の疑いがあると指摘される
アメリカの大手ライププロモーター「Live Nation」と大手チケット販売会社「Ticketmaster」は、2010年にアメリカ司法省からの承認を受けて合併し、「Live Nation Entertainment」が発足しました。当時すでにLive Nationは世界最大のライブプロモーターであり、Ticketmasterも業界内でトップを走るチケット販売会社として知られていました。そのため専門家からは「巨大な2社の合併により独占的な市場になってしまうのでは?」と疑問の声があがっていたのですが、その危機感は現実になってしまっているようです。
Live Nation Rules Music Ticketing, Some Say With Threats - The New York Times
https://www.nytimes.com/2018/04/01/arts/music/live-nation-ticketmaster.html
両者の合併に関しては、業界トップ同士の合併が独占的な市場を形成し、健全な競争関係を維持できなくなると批評家や競合他社からの指摘がありました。そこでアメリカ司法省は、競争関係の維持を目的とした条件を設けた上で認可を行っており、「この条件により、発券業務での競争を促進することができるため、Live Nationの独占的な活動を防止できます」と説明していました。
さらに、当時の司法省反トラスト局長のクリスティン・A・バーネイ氏は合併に条件を設けたことに関して「この業界には、強力なライバル企業を生み出すのに十分な土壌がまだ残っています」と述べており、チケット価格の引き下げを期待できることを示唆していました。
By Serhio Magpie
合併の条件の1つとして挙げられたのが、Ticketmasterが発券業務で使用しているソフトウェアのライセンスをライバル企業であるAEGに移譲することでした。この条件を受け入れるため、Ticketmasterは発券ソフトウェアのライセンスを所有する子会社のPaciolanを売却します。
しかし、AEGはTicketmasterのライセンスを取得することはありませんでした。なぜなら、AEGは「良い発券システムが大量の契約を結ぶわけではない」と認識していたからです。Paciolanの発券業務ソフトウェアはAEGのビジネスを助けるほどの機能を持っておらず、また会社自体も利益を得られる部門はTicketmasterに吸収された後だったのか、ビジネス的に終焉を迎えていたとのこと。つまり、AEGはPaciolanを所有して得られるライセンス料よりも支払うコストの方が大きいと判断し、子会社化を見送ったようです。
このため、合併から8年が経過した2018年現在でも、発券業務はLive Nationの一強体制が続いており、業界内であらゆる部分に影響を与えています。また、Tikcketmasterはアメリカ国内で集客力のある上位100のアリーナのうち80カ所のチケット販売を担っており、他社が入り込む余地を与えていません。このため、アメリカにおけるチケット価格は過去最高の水準を保っているのが現状です。
司法省の関係者によると、Live Nationはコンサートツアーを開催するにあたり、会場関係者に対してTicketmasterと契約するように圧力をかけているとの報告があったそうです。告発された内容には「Ticketmasterと契約しなかった場合、Live Nationはこの会場でイベントを行わないと脅されたあげく、実際に興行が減らされた」とあり、Live Nationに独占禁止法違反の疑いがかけられています。
By John Taylor
アトランタにある人気アリーナの1つであるグウィネットセンターの運営者からも、2013年のMatchbox Twentyのライブツアーに関して同様の苦情が報告されています。当時のグウィネットセンターは、チケット発券サービスをTicketmasterから競合会社のAEGに切り替えたばかりでした。すると、Live Nationはグウィネットセンターをツアーの会場から外し、別のTicketmasterと契約している会場を使うようになったそうです。
この行動について、Live Nationは「市場動向などからの自然な変動によるものです」と説明しています。しかし、グウィネットセンターのダン・マークハム氏は「Live Nationの担当者は我々に対し、イベント会場を変更すると警告していました。そのためイベントがなくなることは予想していました」と述べています。
AEGによると、これは一例にすぎないと語っており、多くの事例があることを示唆しています。しかし、Live Nation側は真っ向から否定しており「私たちは決して脅迫や報復を行いません。AEGが意図的に曲解して我々を陥れようとしているだけです」と述べています。
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