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人工衛星を運用するという宇宙企業「DigitalGlobe」は一体どのような事業を行っているのか?


人類が月に降り立った50年前は「宇宙は強大な力を持った国や支配力のある政府のものだ」とされていました。しかし、今や宇宙にも民間化・商業化の波が押し寄せていて、何百兆円という規模の市場への成長が期待されています。世界中のさまざまな業界を紹介するチャンネルWendover Productionsが公開する以下のムービーでは、観測衛星を飛ばす宇宙企業「DigitalGlobe」が注目されています。

Space: The Next Trillion Dollar Industry - YouTube


1992年に設立した宇宙企業のDigitalGlobeは、SpaceXのイーロン・マスク氏が大学を卒業するよりも前から商用観測衛星を飛ばしていました。事実、DigitalGlobeは宇宙から高解像度の写真を撮影する許可が与えられた最初期の企業であり、人工衛星を利用したリモートセンシング事業を行っています。


人工衛星にはさまざまな種類が存在します。例えば、静止衛星と呼ばれる人工衛星は、地表から約2万2000マイル(約3万6000キロメートル)という距離を、地球の自転と同じ角速度で周回しているため、地球上から衛星を見るとまるで止まっているように見える特徴があります。


一部の静止衛星は、テレビやラジオの衛星放送など、通信システムに用いられます。アメリカの衛星放送局であるDirecTVは、アメリカ上空に静止衛星を1基用意することで、アメリカ全土をサービスエリアに収めることを可能にしています。DirecTVは放送地域をアメリカに限定しているため、世界中に何基も人工衛星を飛ばす必要がありません。


一方、DigitalGlobeが所有する5基の衛星は静止衛星と異なり、地上から約380マイル(約620km)という低軌道を周回しています。1基目の「GeoEye-1」は2007年に打ち上げられ、最も新しい「WorldView-4」は2016年に打ち上げられました。5基の衛星はすべて地球観測衛星で、地上の写真を撮影するためのものです。


WorldView-4は、383マイル(約620キロメートル)上空から、1ピクセル30cm四方という非常に高い精度で地上を撮影することが可能です。実際にWorldView 4から撮影した画像を見ると、道路に描かれた線や標識が分かるほど。


DigitalGlobeが所有する観測衛星は静止衛星ではなく、太陽光の入射角を一定にすることで常に同一条件で観測できるよう周回する太陽同期軌道衛星です。例えば、DigitalGlobeの所有するWorldView-3は、現地時間の午前10時30分に上空を飛ぶように低軌道を周回しています。東京の上を飛んでいる時は日本時間で午前10時30分、パリを飛んでいる時はフランス時間で午前10時30分になるというわけです。


何日も、何カ月も、何年も撮影しながら周回を続けることで、WorldView-3は世界中の午前10時30分の様子を撮影することが可能になります。


総額で何十億円もする5基の観測衛星は、DigitalGlobeの管制司令室にいるわずか4人のスタッフによって、他の衛星やスペースデブリと衝突しないように調整されています。


さらに、周回する衛星と超ハイパワーなWi-Fiでデータをやりとりするためのアンテナが、世界数カ所に建てられています。このアンテナでは衛星から毎秒1GBのデータをやりとりすることが可能で、衛星からは毎日無加工の画像データが7TBも送られてくるとのこと。


アンテナが世界中のどこに設置されているかは企業秘密とのことですが、仮にドイツに1基あったとすると、観測衛星がヨーロッパ上空を通過する間にデータを受け取ることが可能だそうです。


収集された世界中の衛星写真は社会福祉のために用いられている、とDigitalGlobeは主張していて、実際にDigitalGlobeの衛星写真データはGoogleマップにも活用されています。他の例では、DigitalGlobeは、Microsoftの共同創業者であるビル・ゲイツの創設したビル&メリンダ・ゲイツ財団に、ザンビアに散在する家屋がどこにあるのかをまとめたデータを提供しています。このデータは、今まで地図に載ることのなかった村を改めて地図にまとめることで、ザンビアへの支援に必要なワクチンや食糧の数量を把握するために用いられているとのこと。


DigitalGlobeは記事作成時点で5基の観測衛星しか所有していませんが、衛星からのデータを運用し、何百億円もの収入を得ています。しかし、その大部分は観測衛星の維持・それを打ち上げるロケット・衛星と通信するアンテナへの投資に用いられ、ロケットやアンテナの開発に携わる企業に流れていきます。こうして、宇宙産業の市場は膨大な資金が動いていて、急激な成長を見せているというわけです。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1i_yk

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