サイエンス

木星の縞模様の大気の下には「9つのサイクロンが密集」など地球の想像を絶する世界が存在することが判明


太陽系で最大の惑星で、地球から見て火星のさらに外側に位置する木星は、表面に見えるカラフルな縞模様と、その中でひときわ存在感を放つ大赤斑と呼ばれる大きな渦があることが外観上の大きな特長です。NASAが探査機を送りこんで実施している調査からは、新たに木星の大気の厚さが3000kmもあり、その下の見えない部分にはなんと9個ものサイクロンが集合している場所があるなど、地球の常識では考えられないような現象が起こっていることが明らかになりました。

NASA Juno Findings - Jupiter’s Jet-Streams Are Unearthly | NASA
https://www.nasa.gov/feature/jpl/nasa-juno-findings-jupiter-s-jet-streams-are-unearthly

Unveiling the Depths of Jupiter’s Winds
https://wis-wander.weizmann.ac.il/space-physics/unveiling-depths-jupiter%E2%80%99s-winds

この成果は、NASAが2011年に打ち上げて2016年から木星の観測を行っている探査機「ジュノー」によってもたらされたものです。濃いガスによって覆われている木星の表面には主にアンモニアでできた雲が存在するため、その内部はこれまでほとんど明らかにされてきませんでした。しかし、ジュノーに搭載された赤外線観測装置などによって、隠されていた内部の様子が明らかになってきています。


ジュノーが2017年2月2日に取得した赤外線観測データをもとに、NASAがコンピューター処理で再現した木星の北極部分の様子がコレ。イタリア宇宙機関から供給された「木星赤外オーロラマッパー」(Jovian Infrared Auroral Mapper:JIRAM)が捉えた内部の様子では、中央にあるサイクロンの周りを8個のサイクロンが直径4000km~6000kmの円を描いて取り囲むように並んでいることがわかります。これら9個のサイクロンはほとんど位置や規模を変化させておらず、消滅や合体といった動きも見せていないとのことです。


また、南極部分でも同様の光景が繰り広げられています。北極と同じ2017年2月2日の様子では、中心にあるサイクロンの周りを5つのサイクロンが直径5600km~7000kmの同心円を描いて取り囲んでいることが見てとれます。あまりに密集しているために、それぞれのサイクロンから伸びた渦の先端が隣のサイクロンに触れているほどなのですが、この後の約7カ月間にわたる観測の間ではほとんど変化が見られず、互いに独立して存在し続けていたそうです。


ジュノーの研究責任者を務めるサウスウエスト・リサーチ・インスティテュートのScott Bolton氏は、「これらの驚くべき科学的成果は、木星の思いがけない一面の発見をもたらしてくれ、今後さらに高性能な機器によってまだまだ未知の事柄が発見される可能性があることを証明しています。ジュノーの特徴的な周回軌道と非常に高精度な電波観測機および赤外線観測機器のおかげで、これまでの見方を変える(パラダイムシフトな)発見がもたらされました」「ジュノーはまだ初期ミッション全体のおよそ3分の1を終えたところですが、すでに木星の新しい姿がもたらされてきています」と述べています。

ジュノーはまた、搭載されている重力観測装置を用いて木星全体の重力マップを作成。これにより、木星表面に現れている美しい模様が作られるメカニズムの解明が期待されています。ジュノーの研究チームの一員で、ローマ・ラ・サピエンツァ大学に所属するLuciano Iess氏は「ジュノーの観測では、木星の重力場は北半球と南半球で非対称となっていることが示されており、これは表面の模様とも類似しています」と述べています。


木星のようなガス惑星の場合、大気の状態に表れる非対称性は、そのさらに深部における大気の流れに大きく影響を受けます。濃いガスは木星内部に近づくほど重力の影響を受け、重力の強い部分にはより多くのガスが集まり、その密度の差が気流に影響をあたえ、最終的に惑星表面の模様として表れます。この表面の模様と、木星の重力マップがよく似たパターンを持っていることが今回のミッションによって明らかにされているというわけです。

木星を特徴付ける表面の模様は、非常に高速で流れる空気の層の違いによって作り出されています。この模様ができる仕組みも、一部明らかになってきています。


その仕組みは、木星の重力分布と内部構造に影響を受けているとのこと。以下の短いムービーでは、その様子が一部解説されています

NASA's Juno Spacecraft Reveals the Depth of Jupiter's Colored Bands - YouTube


木星の表面の動きをタイムラプスで見ると、いくつもの層「バンド」が重なって互い違いに逆の方向に雲が流れていることがわかります。


研究者は、このバンドがどの程度内部にまで及んでおり、どのような仕組みで生み出されているのかの謎に取り組んできました。


その結果、木星内部には上層のようなジェット気流を持たず、ほぼ個体と同じ状態で安定している水素とヘリウムの液体のコアが存在していることがわかってきました。前述の通り、この大気の層は3000kmほどの厚みがあり、その下に水素とヘリウムの液体のコアが存在している、というわけです。


2018年3月7日には、上記の研究結果などを含む4本の論文が発表されており、さらに興味深い木星の姿が次々と明らかにされています。

木星の大気圏、厚さ約3000キロ 研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
http://www.afpbb.com/articles/-/3166596

論文によると、木星の大気の厚さは3000kmにもおよび、その下部にある水素とヘリウムの液体コアは一様に回転しており、固体のような振る舞いを示していることも明らかにされているとのこと。また、木星の大気は惑星全体の質量の100分の1を構成するという内容も明らかにされています。地球の大気が持つ質量が地球全体の100万分の1しかないことと比較すると、いかに木星では大気が多くの部分を占めているのかがわかります。

ジュノーは今後も観測を続け、2021年のミッション終了までさらに多くの発見をもたらしてくれるものと期待されています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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