「フェイタリティ」システムは、1992年に発売された「モータルコンバット」の1作目から実装されていました。相手より先に規定数のラウンドを勝利すると、ダウンした相手がふらふらと立ち上がり、「FINISH HIM!!(とどめを刺せ!)」と表示されます。
そこで間合いを調整しながら特殊なコマンドを入力すると、フェイタリティが発動します。例えばサブ・ゼロというキャラクターは、よろめいている相手の首根っこをつかんで……
そのまま首を引き抜いてしまうというあまりにも衝撃的なとどめの刺し方を披露します。このサブ・ゼロのあまりにもグロテスク過ぎるフェイタリティはアメリカでも大きな議論を巻き起こしました。
1993年に発売された「モータルコンバットII」では各キャラクターのフェイタリティが2つ以上用意され、さらにステージギミックを利用した「ステージフェイタリティ」や平和的に試合を終わらせる「フレンドシップ」などさまざまな新演出が実装されます。
「モータルコンバット」シリーズのメインキャラクターであるリュウ・カンは、巨大な竜に変身して相手を丸かじりするという派手なフェイタリティを披露。
前作では首を引き抜くというグロすぎるフェイタリティを披露して物議を醸したサブ・ゼロですが、IIでは相手を忍術で凍らせて……
強烈なパンチで相手の上半身を砕くというフェイタリティが追加されます。
「モータルコンバット3」は今までの東洋風の雰囲気から近代ファンタジーの世界観に変わり、ロボットや魔法使いのようなキャラクターが追加されます。アメリカ国内でもゲームの表現に対する規制が強まったことで、フェイタリティでの流血描写が赤ではなく黒や緑に変更されています。
リュウ・カンは「モータルコンバット」のアーケードマシンで相手をすりつぶすというコミカルな演出です。
マスクを脱いで肌の露出度も上がり、初代やIIと比べると「あなたは一体誰?」と思ってしまうほどに見た目が変わったサブ・ゼロは、凍らせた相手を鼻歌交じりで持ち上げてバラバラに砕いてしまいます。
なお、初代やIIのような見た目のサブ・ゼロは、アップデート版である「アルティメットモータルコンバット3」で使用することが可能です。
1997年に出た「モータルコンバット4」はシリーズ初の3D対戦格闘ゲームで、実写取り込みではなくなったからか、前作の規制は撤廃され、血しぶきは赤色に戻りました。この4作目は日本では発売中止となっています。
サブ・ゼロの忍術も3Dによって奥行きが与えられ、氷の一粒一粒がポリゴンで再現されています。
忍術によって相手を凍らせると、鋭いキックで相手の体を砕いてしまいます。また、もちろん3Dでも首を引っこ抜くフェイタリティも健在です。
5作目の「モータルコンバット:デッドリーアライアンス」はアーケードではなく、PlayStation 2やXboxなど家庭用ゲーム機専用タイトルとして2002年に発売されました。格闘スタイルや武器を切り替えながら戦うというシステムが追加され、さらに主人公だったはずのリュウ・カンがオープニングでいきなりフェイタリティをお見舞いされて死んでしまうという衝撃的な展開がプレイヤーを待ち受けます。
2作目以降はフェイタリティが各キャラクターに2つずつ用意されていたのですが、今作では1つのみに減ってしまいました。しかし、前作のカクカクしたポリゴンモデルからよりなめらかでリアルになったため、グロテスクさも前作よりアップしている印象で、この5作目も日本では発売中止となり、以降「モータルコンバット」シリーズは日本で公式に発売されていません。
また、サブ・ゼロは「背骨ごと首を抜く」というフェイタリティをさらにレベルアップさせ、「相手の全身の骨だけを器用に引き抜く」というスゴ技を披露します。
2004年には6作目の「モータルコンバット:ディセプション」が登場。今作では、相手にフェイタリティを繰り出される前に自ら命を絶つという「ハラキリ」というシステムが実装されています。
6作目はさらにキャラクターを追加したアップデート版がPSPでリリースされました。携帯ゲーム機でも3D対戦格闘ゲームが遊べるようになり、演出もグロテスクなままです。
7作目の「モータルコンバット:アルマゲドン」では、フェイタリティに連続攻撃を加える「クリエイトフェイタリティ」というシステムが導入されます。さらにキャラクタークリエイト機能も実装され、自分オリジナルのキャラクターのフェイタリティ演出を堪能することも可能となりました。
ステージフェイタリティも健在で、それまでの作品に比べて凶悪さがパワーアップしています。
モータルコンバットシリーズの8作目はなんとバットマンやスーパーマンなどのDCコミックスのキャラクターが参戦したコラボタイトル「モータルコンバット VS. DC Universe」です。
アメコミヒーローのとどめはフェイタリティではなく「ヒロイック・ブルータリティ」となっています。相手をむごたらしく殺してしまうのではなく徹底的に痛めつけるレベルにとどめたもので、あくまでもヒーローらしいとどめの刺し方が演出されます。
一方でジョーカーなどのヴィランや「モータルコンバット」シリーズおなじみのキャラクターのフェイタリティは、確実に相手の息の根を止めるような技となっていますが、今までのシリーズと比べるとグロテスクな演出はかなり控えめになっています。
2011年に発売された9作目の「モータルコンバット」は原点回帰をテーマに開発された作品で、初代から続くストーリーを一から全て構成し直した意欲作です。3Dモデルを使っていますが、あくまでも2D対戦格闘ゲームのシステムを採用しています。PS3・Xbox 360、PlayStation Vitaで発売され、キャラクターモデルも今までのものに比べてより細かい部分まで描写されています。
画質や音質が格段に向上したことで、前作で控えめになったグロテスクな演出もめちゃくちゃパワーアップ。美麗なグラフィックと生々しいサウンドにより、初代の演出を再現したサブ・ゼロのフェイタリティもかなりむごたらしいものになっています。
PS3版では「ゴッド・オブ・ウォー」のクレイトスが、フェイタリティ技も与えられて参戦しています。
またXbox 360版では追加ダウンロードコンテンツとして、映画「エルム街の悪夢」に登場する殺人鬼フレディ・クルーガーを使用することができます。
10作目の「モータルコンバットX」は2015年にPS4とXbox oneで発売されました。また前作に引き続き、映画の人気キャラクターがゲスト参戦。サブ・ゼロが、映画「エイリアン」に登場するエイリアンの首を引っこ抜くというコラボレーションが再現可能となっています。
エイリアンの他には映画「プレデター」のプレデターや映画「13日の金曜日」のジェイソン、映画「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスが参戦しています。
5作目で追加された戦闘スタイルの切り替えが10作目で復活し、フェイタリティも戦闘スタイルに合わせてバリエーションが豊かになりました。グラフィックもさらに向上し、サブ・ゼロの濁った目や青いベストに染み込んだ返り血まで細かく描写されています。