フィットネストラッカーアプリ「Strava」が秘密のアメリカ軍基地の所在地を浮き彫りにする事態が発生
スマートフォンなどのGPS情報を使ってジョギングやサイクリングなどのアクティビティを記録・分析できるサービス「Strava」に登場した新機能「Heatmap」が、普通だと絶対に明かされることがないアメリカ軍の秘密基地の存在を浮き彫りにする事態が起こっています。
Fitness tracking app Strava gives away location of secret US army bases | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2018/jan/28/fitness-tracking-app-gives-away-location-of-secret-us-army-bases
Strava’s fitness tracker heat map reveals the location of military bases - The Verge
https://www.theverge.com/2018/1/28/16942626/strava-fitness-tracker-heat-map-military-base-internet-of-things-geolocation
Stravaに登場した「Heatmap」は、アプリを使っている人のアクティビティデータを取りまとめることで、地球上のどの場所で多くアクティビティが行われているのかを色で示すことができる機能です。Heatmapのページを開くと、サンフランシスコ周辺の地形図の上に無数のラインが表示され、多くアクティビティが行われている場所ほど明るい色で表示されていることがわかります。
Strava Global Heatmap
https://labs.strava.com/heatmap/
東京の都心部をアップにしてみると、多くのランナーを見かける皇居周辺が非常に明るくなっていることがわかります。また、皇居から西の方角にある明治神宮外苑や代々木公園、そしてマップ左上に位置する東京都庁の周辺でも多くのアクティビティが行われていることがわかります。
人々がどんな場所でアクティビティを行っているのかが一目瞭然になるHeatmap機能ですが、アメリカ軍にとっては少し迷惑な状況にもなっている模様。そのことが発覚する発端になったのが、Tobias Schneiderさんがつぶやいた以下のツイート。「フィットネス&ソーシャルメディア会社のStravaがアクティビティヒートマップ機能をリリース。軍の基地の場所を特定するのに優れている」というコメントとともに、シリアに置かれている「フマイミーン空軍基地」とみられる位置のヒートマップ画面をツイートしています。
Fitness and social media company Strava releases activity heat map. Excellent for locating military bases (h/t to @Nrg8000). https://t.co/n5RWcI7BJF pic.twitter.com/7zzNcYV42e
— Tobias Schneider (@tobiaschneider) 2018年1月27日
これはどうやら、基地で任務にあたる兵士やスタッフがスマートフォンやアクティブトラッカー「Fitbit」のトラッキング機能をオンにしたまま業務や訓練を実施したことで、活動の全てが記録されていてしまっていたことが原因。以下のツイートのマップには、おそらくシリアのどこかと思われる基地の中における軍関係者の行動バターンがクッキリと表れていることがわかるほか、主要施設と思われる場所がハッキリと明るくなっていることもわかります。
Somebody forgot to turn off their Fitbit. Markers trace known military outposts, supply and patrol routes. pic.twitter.com/7YTzoqKgDl
— Tobias Schneider (@tobiaschneider) 2018年1月27日
これは機密性の高い任務を行い、相手国に基地の存在を知られないようにしているアメリカ軍などにとっては大きな痛手になる可能性があります。世界各地の紛争について分析を行うInstitute for United Conflict Analystsでアナリストを務めるNathan Ruser氏はTwitterに「StravaのHeatmapは素晴らしいが、オペレーションセキュリティ(任務遂行上の安全性)にとっては好ましくない」という旨のツイートを投稿しています。
Strava released their global heatmap. 13 trillion GPS points from their users (turning off data sharing is an option). https://t.co/hA6jcxfBQI … It looks very pretty, but not amazing for Op-Sec. US Bases are clearly identifiable and mappable pic.twitter.com/rBgGnOzasq
— Nathan Ruser (@Nrg8000) 2018年1月27日
日本にある基地がどのような状況になっているのか確認してみました。神奈川県にある横須賀基地はこんな感じで、秘密の基地ではないので特に目新しい部分はなさそう。しかし軍関係者なのか一般人なのかは不明ですが、沖にある「猿島」にも一定の人の流れがあることがわかります。
沖縄県宜野湾市にある普天間飛行場はこんな感じ。もはや周辺の交通が多すぎて軍の関係者なのか、一般の沖縄県民の行動なのかを見分けることは不可能。滑走路の南にある、アルファベットの「B」のような形をした「いこいの市民パーク」に多くの人が訪れていることがわかります。
このような事態をうけ、Stravaが何らかの対応を取るのかは記事作成時点では不明。Ruser氏は「兵士が一般市民と同じようにトラッキング機能をオンにしたままで訓練を行うのは非常に危険。このログは普段のトレーニングの様子を明るみにするものであり、現地での行動パターンを明るみにすべきではない」とする旨のツイートで警鐘を鳴らしています。
If soldiers use the app like normal people do, by turning it on tracking when they go to do exercise, it could be especially dangerous. This particular track looks like it logs a regular jogging route. I shouldn't be able to establish any Pattern of life info from this far away pic.twitter.com/Rf5mpAKme2
— Nathan Ruser (@Nrg8000) 2018年1月27日
思わぬ弊害が明らかになってしまったHeatmap機能ですが、本来の使い方であれば非常に価値のある機能ということができます。皇居周辺をアップにすると、多くのランナーがジョギングを行っていることがわかり……
自転車乗りが多く集まる神奈川県のヤビツ峠も、その部分だけが明るく示されていることがわかります。
関西のロングライドコースの定番、「アワイチ」(淡路島一周)のルートも、クッキリと明るく見えることがわかります。
ここ数年人気の高まっている「しまなみ海道」を見てみると、最も明るいのは島を渡り始めて最初に表れる大きな橋「因島大橋」が最も明るくなっていることがわかりますが、それ以南のルートにはあまり人が向かっていないような様子も伺いしれるのが面白いところです。
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