「幸せな音楽」を聴くと創造的な思考力が高まる可能性
作業に集中したいときに音楽を聴くという習慣がある人は多いものですが、音楽が「創造的な」思考能力に及ぼす影響を調べた実験から、「幸せな音楽」が効果的である可能性が指摘されています。
Happy creativity: Listening to happy music facilitates divergent thinking
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0182210
Happy music linked to creative thinking
https://www.reuters.com/article/us-health-creativity-music/happy-music-linked-to-creative-thinking-idUSKCN1BP2FK
オランダのラドバウド大学のシモネ・リッター博士とシドニー工科大学のサム・ファーがソン博士は、音楽が思考力に与える影響を研究しました。実験では、ラドバウド大学の学生ボランティア155人を5つのグループにわけた上で、それぞれ「静かな音楽」「幸せな音楽」「悲しい音楽」「不安な音楽」という4つの音楽を聴いた状態と、対照群としての「音楽なしの無音」状態でさまざまな作業を行わせて、成果を調べました。
なお、各タイプ別に選ばれた曲は以下の通りです。
・静かな音楽:カミーユ・サン=サーンスの「Le cygne(白鳥)」
・幸せな音楽:アントニオ・ヴィヴァルディの「The Four Seasons: Spring(四季の中の「春」)」
・悲しい曲:サミュエル・バーバーの「Adagio for Strings(弦楽のためのアダージョ)」
・不安な曲:グスターブ・ホルストの「The Planets: Mars, The Bringer of War(火星、戦争をもたらす者)」
思考力は「収束的思考」と「拡散的思考」の2種類について調べられました。複数の情報を集めて正しい答えにたどり着くのを競う収束的思考力からは、作業における論理的思考力や正確性を、既存の情報をもとにこれまでにない新しい発想でアイデアを生み出す拡散的思考力からは、作業における創造性を調べる目的で実験が行われたとのこと。
思考力の中でも論理性や深い洞察を必要とする「収束的思考」テストにおいては、音楽の種類によって成果に違いは現れないことがわかりましたが、「拡散的思考」テストでは、明確な差が現れました。古くからあるレンガの新しい使い方を数多く提案させるという拡散的思考を試すテストでは、「幸せな音楽」を聴いた被験者のスコアは、他の音楽を聴く被験者に比べて有意なスコアアップが確認されました。幸せな音楽以外の音楽では差が見られなかったことから、音楽があること自体ではなく、音楽の種類が創造性に影響を与えている可能性が見いだされたというわけです。
なお、実験では作業を行う前の気分についても調査されていましたが、結果に影響を与えることはさかったとのこと。さらに、被験者が好きな音楽ジャンルなどの音楽的な嗜好もテスト結果に影響を及ぼさないこともわかったそうです。
なぜ「幸せな音楽」だけが創造性に効果をもたらすのかについては解明されていませんが、研究者は脳の報酬系が放出するドーパミンが関係しているのではないかと推察しています。
ということで、作業の創造性を高めるために効果があるとわかった「幸せな音楽」の「The Four Seasons: Spring」は、以下のムービーで視聴できます。
Vivaldi's Four Seasons - Spring (Part 1) - YouTube
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