教室でホワイトノイズを流すと注意散漫な生徒の学習効果が上がるが、普段から集中できる生徒には逆効果


ノイズ(雑音)は、一般的には集中すべき対象から注意をそらし学習や集中力を要する作業などの妨げになると考えられますが、人によってはノイズが集中に役立つこともあるようです。

ストックホルム大学の研究者らが行った実験により、普段注意力が散漫で教師の話を集中して聞くことができない子どもでは教室でホワイトノイズを流すことにより学習効果が上がり、逆に普段から注意力が高い子どもにとってはホワイトノイズは学習の妨げとなることが明らかになりました。教育の現場で応用することができれば、注意力散漫な子どもたちによる学級崩壊を防ぐ手段となるかもしれません。

詳細は以下から。Abstract | The effects of background white noise on memory performance in inattentive school children

雑音は通常集中の妨げとなると考えられますが、タスクに関係のない適度な雑音のある環境での方が、そのタスクのパフォーマンスが上がるという場合もあり、この雑音の効果はADHD(注意欠陥・多動性障害)の子どもでも報告されています。最近の研究では、ドーパミンにかかわる内部ノイズと確率共鳴の理論(人の耳が知覚できないほど小さい音量のシグナルにホワイトノイズを重ねると、シグナルが強まり聞こえるようになるという原理)をベースにした計算モデルにより、ドーパミン受容体遮断によってドーパミンの低下した状態の人にとっては、適度な雑音がパフォーマンスの向上に貢献するという仮説が立てられています。

計算論的神経科学モデルにより予測される、注意力のある子ども(破線)と注意散漫な子ども(実線)の、ノイズ量によるパフォーマンスの差。


ストックホルム大学の心理学者Göran Söderlund博士らはノルウェーの中学校で7年生(11歳~12歳)の2クラス51名の生徒(男児25名、女児26名)を対象に実験を行いました。生徒たちは教師により7段階のリッカート尺度で「注意力」を評価され、スコアが6~7だった生徒10人が「注意散漫」なグループとして、それ以外の生徒は対照群として、ホワイトノイズの有無による学習効果の違いを比較しました。

ホワイトノイズとはすべての周波数で同じ強度となるノイズで、簡単に言えば非常に不規則なノイズとのこと。どういった音かは以下のリンクから聞くことができます。

White_noise.ogg

なお、「注意散漫」なグループの10人のうち6人が「過活動」でもあると教師から評価されましたが、ADHDと診断されている生徒や薬物治療を受けている生徒はいませんでした。生徒たちは学校での成績や読解能力も評価され、認知能力全般や学習能力、短期記憶力、推論能力や問題解決能力なども測定され、「注意散漫」な生徒で読解能力が低かったほかは、注意散漫なグループと対照群との能力に差はなかったとのことです。

実験ではこれらの生徒に耳で聞いた文章を記憶するテストを実施しました。テストは説明や練習問題なども含み合計45分間で、12の短い文をランダムな順番で含むリストを聞き、そのリストを思い出すというもの。文は例えば「ボールを」+「転がす」などの「名詞+動詞」の短文で、リストは8種類、合計96の文を含みます。

読み上げはスタジオで録音されたCDで、「ノイズを含むリスト」4つと「ノイズを含まないリスト」4つから成り、回答時間(耳で聞いた文を生徒が思い出す時間)にはノイズはない状態でした。なお、ホワイトノイズの音量は78デシベル、読み上げの音量は86デシベルで、これは生徒たちが読み上げられた文をはっきりと聞き取ることができる十分な音量の差で、かつこれまでに行われた研究でノイズがパフォーマンスに影響するとされているしきい値を超える十分な音量のノイズです。

その結果、テスト全体(96文)の成績を見ると注意散漫なグループと対照群で差はなく、生徒全体を見ると「ノイズ有り」と「ノイズ無し」でのパフォーマンスに違いは見られなかったのですが、「ノイズ有り」と「ノイズ無し」での成績をそれぞれのグループごとに比較すると、注意散漫なグループでは「ノイズ有り」の方が好成績、対照群では「ノイズ無し」の方が好成績という真逆の結果だったそうです。


また、それぞれの生徒の「ノイズの有無による成績の差」と、「教師により評価された注意力」(7段階評価のスコア)は相関し、スコアが高い(注意力がない)生徒ほどノイズによるポジティヴな効果が大きく、スコアが低い(注意力がある)生徒ほどノイズによるネガティヴな効果が大きかったとのこと。つまり、普段注意力がある生徒ほど、雑音により集中を乱されやすいようです。

今後さらに多数の被験者に対しさまざまな音量で実験を行い、教育の現場でノイズを生かせるようになることが期待されます。普段から注意力のある子どもには逆効果とのことなので一般的な教室で授業中常にホワイトノイズを流すというわけにはいかなそうですが、注意散漫な子どもを集め少人数のグループで指導する場合や、家庭で宿題をさせる場合などには、近い将来実践できるようになるのではないでしょうか。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log