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電話を発明したグラハム・ベルが研究を進めた異形凧「四面体凧」、当時の実物はこんな感じだった


電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルは発明家のほかにも科学者、工学者などとしての研究活動を行っていました。自身の母と妻が耳の不自由な「ろう者」であったことから、聴覚機器に関する研究を進めた結果、電話の発明に帰結したことが知られていますが、ベルの研究分野はそれよりも広く、その範囲は「科学全体にまたがって」いたという記録も残されています。そんなベルは、4つの三角を合わせた三角すいの「四面体」を組み合わせた凧「四面体凧」を発明して研究を進めていました。

Alexander Graham Bell’s Tetrahedral Kites (1903–9) | The Public Domain Review
http://publicdomainreview.org/collections/alexander-graham-bells-tetrahedral-kites-1903-9/

ベルが行った研究の様子は、多くの写真と文書で残されており、アメリカ議会図書館に所蔵されて誰でも閲覧できる状態になっています。

2人の人物が持ち上げる四面体凧。多くの三角形によって構成されるフレームに布の幕を張った構造になっており、風を受けて揚力を得ることで凧と同じように空に浮かぶようになっています。


この四面体凧を発明したのが、グラハム・ベルその人。この写真が撮られたのが1904年だとすると、1847年生まれのベルが57歳頃の様子であることがわかります。


単純な構造を持つ四面体凧は、簡単に規模を拡大または縮小することが可能です。


複数の四面体凧を組み合わせて作られたこの凧には「Siamese Twins」(結合体双生児)という名前が付けられている模様。


実際に四面体凧を飛ばしている様子も写真に収められています。最も少ない面の数「4」で立体を実現できる四面体は、得られる揚力と重量の比が最も良くなるという特性を備えているため、飛行体として優れた性能を発揮すると考えられていたようです。


人々が見守る中、空に浮かぶ四面体凧。


最終的には、四面体凧に人を乗せて飛ばすことを目指して開発が進められた四面体凧。


動力源とみられる装置とともに置かれた四面体凧。


さまざまなバリエーションも開発されていた様子。四面体を使うことで機体構造がトラス構造になり、強度と軽さを両立できることもメリットになっていたはず。


現代の「飛行機」とはまったく異なる考え方で作られていることが伺いしれますが、凧としての性能を極めるとこの形に行き着くのかも。


ドーナツのような構造の凧も作られていたようです。


さらには、鉄アレイのような凧も。これが後のTIEファイターである……というのは間違いで、右下の写真のように、長手方向に風を受けて浮かぶようになっているようです。。


主翼のような、大きな面を持った四面体凧も作られていた模様。


四面体凧を持つ夫人とキスをするベルの姿もちゃっかり収められています。


これらの研究の後、ベルはアメリカとカナダにまたがる研究チーム「Aerial Experiment Association(AEA)」を1907年9月30日に設立し、航空機に関する研究を進めました。その中では「Cygnet I」「Cygnet II」「Cygnet III」と呼ばれる3機の四面体凧が作成され、実際に人を乗せて飛ぶ実験が行われたとのこと。


Cygnet IIを横から見るとこんな感じ。自己相似的な無数の三角形からなるシェルピンスキーのギャスケットのようなフラクタル図形に通ずる構造を持つことがよくわかります。


中に入るとこんな景色だったようです。


AEAには多くの技術者が集まっており、四面体凧のほかに固定翼を持つ機体「Red Wing」も開発されていました。


1908年には、AEAに所属していたグレン・カーチスが固定翼機「ジューン・バグ」を完成させ、初飛行を行います。これに先立つ1903年には、かのライト兄弟がライトフライヤー号による人類で初めての航空機による飛行を実現していましたが、当時はこの記録は公式なものとは認められていなかったため、カーチスと「ジューン・バグ」が初めての飛行と認定されていました。

その後、カーチスとライト兄弟は特許を巡る熾烈な争いを繰り広げ、カーチスは現代のカーチス・ライト・コーポレーションの礎となる「カーチス・エアロプレーン&モーター」社の設立者となっています。また、商業活動に関することなく、純粋に航空機の研究を進めるために設立されていたAEAは、事前の取り決めに従って1909年3月31日に解散し、その役目を終えています。

100年以上も前に作られた四面体凧ですが、現代の3Dプリンター技術でよみがらせることが可能。アーティストのSehun Oh氏は、自身のサイトで四面体凧の3Dデータを公開しており、3Dプリンターがあれば誰でも出力して飛ばしてみることができます。
OpenKite
http://www.sehunoh.com/openkite.html

実際に四面体凧を飛ばしている様子をムービーで見ることもできます。

Open Kite on Vimeo

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in 乗り物,   動画, Posted by darkhorse_log

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