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路上で稼ぐ「バスキング」、どこでどの曲を演奏すれば投げ銭してもらいやすいか?約52万円も稼いでわかったことまとめ

by Stephen J Fyfe

大道芸など、路上でパフォーマンスをした後にパフォーマーが帽子などを差し出してお客さんからお金を集めることを「バスキング」と呼びます。日本ではあまり定着していない習慣ですが、2014年1月4日から2016年6月19日までに63回のバスキングを行い5000ドル(約52万円)を得たSteve Tjoaさんが、最もお金を集められた曲、演奏に向いている場所、お客さんの反応から見えてきた人間の行動などを公開中です。

My Experience Busking in San Francisco: 63 sessions, $5000 | Steve Tjoa
https://www.stevetjoa.com/busking

Tjoaさんがバスキングを行った理由は楽しみのためという理由のほか、San Francisco Civic Symphonyへの寄付を行うため、パフォーマンスの練習、マーケティングなどの理由が挙げられています。1人で演奏することもあれば、San Francisco Civic Symphonyのメンバーと演奏を行うこともあったそうです。

63回にわたって行われたバスキングの記録は、日時・1回あたりの総寄付額・1時間あたりの寄付額・場所などといった情報とともにGoogleスプレッドシートで公開されています。演奏の多くはアメリカ・サンフランシスコのパウエル駅で行われています。

Busking


◆人間の行動について
Tjoaさんが見ていて気づいたのは、「パフォーマンスの途中でお金を寄付するのは失礼」だと思っている人が多いということ。しかし、観客のうちの1人がパフォーマンスの途中で寄付するのを見ると、ほかの観客は「パフォーマンスの最中でも寄付をしていいのだ」ということに気づき、連鎖反応のように寄付が行われたそうです。さらに、寄付をした後に去っていいのかどうかについても人々にとって判断がつきづらい部分で、1人が寄付してからその場を去ると、他の観客も同様の行動をするようになったとのこと。


また、若い人よりは年齢が高い人の方が寄付の額が多く、40歳以上と見られる人は10~20ドル(1000~2000円)の寄付をすることも。さらに、子連れの母親が、子どもにお金を渡して寄付をさせる光景もよく見られました。

寄付されるものはお金だけでなく、コーヒー豆や花などもありました。画像の下部に写っているのはアラブ首長国連邦の紙幣で、価格は5UAEディルハム(約140円)。


また、演奏を聴きながら描いたイラストをプレゼントしてくれた女性もいました。


寄付をしてくれた少女がTjoaさんに「そのバイオリンを弾いてみていい?」と話しかける瞬間もあったそうです。


なお、Tjoaさんの観察によると、寄付の割合は男女でほとんど差はなかった様子。バスキングについて、「あらかじめ楽器のケースの中にお金を入れておくべき」という意見もありますが、Tjoaさんは、「多くの通行人はそもそもケースの中にお金が入っているか気に留めないので、ケースの中にあらかじめお金が入っているか否かで大差は生まれない」としています。

◆演奏する曲について
優れた音楽が必ずしも路上でたくさんのお金を集められるわけではないことは、過去の実験からわかっています。2007年には世界的バイオリニストのジョシュア・ベル氏がアメリカの首都ワシントンD.C.の地下鉄に普段着で現れバッハを演奏したところ、ほとんどの人が足をとめずに過ぎ去ってしまいました。

Stop and Hear the Music


そして、Tjoaさんによると、テンポが遅く演奏が難しい曲よりも、軽快な曲の方が客受けがよいこともある様子。バッハのパルティータ 第3番などは、多くの寄付を簡単に集めることができたそうです。

Hilary Hahn-Bach partita N°3 prelude - YouTube


テンポの速い曲は人々を魅惑しますが、テンポがゆっくりした叙情的な音楽も寄付を集めることができました。エドワード・エルガーの「愛の挨拶」は技術的な難しさが求められず、演奏に集中でき、多くのお金をを集められたとのこと。

David Nadien plays Elgar's Salut d'Amour - YouTube


また、1人で演奏するよりもアンサンブルの方がよりお金が集まるという結果に。ただし、Tjoaさんらが複数人で演奏したところ、1時間あたり307.76ドル(約3万2000円)の寄付を集められたそうですが、これを1人当たりに換算すると1時間あたり38.47ドル(約4000円)になるとのことで、1人で演奏する時に集められる寄付金とあまり変わらなかったようです。


Tjoaさんが1人で演奏する時に演奏していた曲リストは以下の通りです。

バッハ:無伴奏 ヴァイオリン・ソナタ 第1番
バッハ:無伴奏 ヴァイオリン・ソナタ 第2番
バッハ:無伴奏 ヴァイオリン・パルティータ 第2番
バッハ:無伴奏 ヴァイオリン・ソナタ 第3番
バッハ:無伴奏 ヴァイオリン・パルティータ 第3番
シューマン:子供の情景
ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲 第2番
シューベルト:アヴェ・マリア
ショパン:ノクターン 第9番 変ホ長調 作品9-2
エドワード・エルガー:朝の挨拶
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 カンツォネッタ
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲 パッサカリア
オーケストラのソロをランダムに

◆演奏する場所について


バスキングに理想的な場所の条件は以下の通り。

・安全である
・風が吹いていたり日光がまぶしかったりしない
・防音の建物
・人通りが多い
・人々がお金を置いてくれやすい

この時、ラッシュアワーの駅など「人通りが多すぎる」場所は、人々が忙しく雑音も多いため、あまりお金を集められないので避けるべきとされています。人がほどほどに多い場所だと適度に音楽が響きわたり、通行人とパフォーマーの間に障害物がないのでお金を集めやすいそうです。


◆安全について
Tjoaさんがお金を盗まれたのは2回。いずれも10代後半から20代前半の若者が犯人とのこと。パフォーマーの多くは壁を背にして演奏しますが、これは人に背後に立たれると警戒してしまうことが理由です。

◆まとめ
Tjoaさんにとって、バスキングを行っていて最も怖かったのは、初日に家を出る瞬間でした。そして、駅に到着して演奏場所に譜面台を置いた時に、人生で最も居心地が悪い体験をしたそうです。

しかし、実際に演奏を初めてしまえば、あとは簡単だったとのこと。通行人の99%にとって自分は背景の一部でしかないということに気づけば、人はリラックスして演奏に集中できます。特に、土曜日の朝10ごろ時は人が少なく初回の演奏にはオススメで、慣れてきたころに午後2時に挑戦すればいいとTjoaさんは語っています。

なお、日本では路上でのパフォーマンスが取り締まられることがありますが、国や街によっては合法的に認められているところも存在します。

バスキングを通して気づいた3つのコト|オーストラリアビートボックスバスキング武者修行|ZU-nAオフィシャルブログ Powered by Ameba
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いま日本では風営法改正案の事例など、夜のクラブに対して非常に取り締まりが厳しくなっています。加えて、路上ライブはある特定の地域を除き、警察にすぐに止められる始末。特定の地域でも、音量や場所の制限があり、アマチュアが開放的に気持ちよくパフォーマンスできる場所は少ないです。

でも、いま僕がいるオーストラリアでは、バスキング行為が合法的に認められており、市役所で発行されているライセンスをしっかり持っていれば、禁止区域以外どこでもパフォーマンスができます。禁止区域というのも非常に少なく、危険なパフォーマンス(火を使ったり、ものを高く投げる等)をしない、例えばちょうどビートボックスは、本当にどこでもパフォーマンスが可能です。

街中にはバスキングをする人=バスカーが沢山おり、街にいる人たちもそれが普通のことなので、特に気にせず、自分の好きな表現者のパフォーマンスは止まって観ています。

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in メモ,   動画,   アニメ, Posted by darkhorse_log

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