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世界で初めて加齢に伴う視力喪失患者への人工網膜デバイス移植に成功


視力が著しく低下したり失明した人に人工網膜を通じて外界の映像をイメージさせるデバイス「Argus II」が、加齢に伴い生じる「加齢黄斑変性症」によって視力を失った患者へ移植され、視力を取り戻すことに世界で初めて成功しています。

Bionic eye implant world first - BBC News
http://www.bbc.com/news/health-33571412

人工網膜デバイス「Argus II」がどのような装置なのかは、以下の記事を見れば一発で理解できます。

失明や視力が極端に落ちた人の視覚をサポートする人工網膜デバイス「アーガスII(Argus II)」をアメリカ食品医薬品局が認可 - GIGAZINE


80歳のレイモンド・フリンさんは乾燥型加齢黄斑変性症を患い、周辺視野は維持しているものの、中心視力を完全に消失し日常生活にも支障を来した状態でした。そこで、視力を取り戻すために、フリンさんはマンチェスター王立眼科病院の先進プログラムに参加して、人工網膜デバイスArgus IIを移植する手術を受けることを決断しました。

これまで徐々に視野が狭くなる病気である網膜色素変性症の患者へのArgus IIの移植実績はありましたが、加齢黄斑変性症への移植は初めてだったとのこと。


手術はマンチェスター大学の教授やマンチェスター王立眼科病院が共同で4時間がかりで行い見事に成功。術後のフリンさんの様子は、以下のムービーで確認することができます。

Argus II - Retinal Implant - Bionic Eye - Retinal Prosthesis System - YouTube


医師の診察を受けるフリンさん。中心視力は完全に失われていることが分かりました。


いよいよArgus IIの移植手術。手術前に医療チームと記念撮影。


手術を執刀するパウロ・スタンガ教授。手にしてるのが移植するArgus IIのユニット。


これがArgus IIのユニットで、ピンセットでつまんだ丸い装置が映像を処理する部分。


爪の上に載せられたのが、人工網膜です。


手術が無事終わって2週間後のフリンさん。画面に映るドットで作られた模様(パターン)を見ながら回答しています。


「今度は水平になりました」とフリンさん。スタンガ教授は「素晴らしい。完璧です」と話しています。


サングラスのような形をしているのがフリンさんの装着するArgus IIで、これに取り付けられたカメラで撮影した映像は網膜に移植したユニットに送られ、目の前のものを認識できるようになる仕組み。


「今後はよりフリンさんにあった、調整をしていきましょう」と話すスタンガ教授。


こうしてフリンさんは視力を取り戻すことに成功しました。


「よりよく見えるようなベストセッティングを探すのが今後の課題です」とスタンガ教授は述べました。


Argus IIでは精細な映像まで伝えることはまだできないとのこと。しかし、以前はドアの形など異なるパターンを検出することに成功しており、視力を回復した患者の生活の補助ツールとして活用されてきた実績があるそうです。スタンガ教授は、先進国でも多くの患者がいる加齢黄斑変性症でArgus II移植が成功して、簡単なパターン認識ではあるものの視力回復に一定の効果が見られたことには初期研究として大きな意義があると考えており、今後はフリンさんと協力して研究を進めることで、加齢が原因で誰にでも起こり得る視力喪失の症状を緩和する技術の開発に期待しているとのことです。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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