今なお配給下にあるキューバで味噌汁をふるまってみた
2014年末、オバマ大統領がアメリカとキューバの国交正常化に向けた交渉を開始すると発表するなど、今話題のキューバにて、みそ汁をふるまってみました。
はじめまして!新しく世界新聞特命記者になった谷田部美亜です。味噌汁を振る舞いながら世界を旅して1年半以上が経ちます。今回はキューバで味噌汁を振る舞った様子をお伝えします。
◆なぜ味噌汁?
そもそも、なぜ私は味噌汁を振る舞うのか。世界一周旅行するなら、言葉の壁を越えてコミュニケーションできる芸を持ち合わせていたいと思ったのが一番最初のきっかけです。自分は歌も下手だし絵も描けないので、日本の「おふくろの味」味噌汁を振る舞おうと思い付きました。今は、味噌汁を作って旅するスタイルが、現地の人たちと触れ合う良い方法になり、もっぱら味噌汁に助けられる旅をしています。これまでに海外12ケ所で味噌汁を振舞ってきました。
◆キューバについて
Wikipediaのキューバの記事には「アメリカ大陸で初めて成立した社会主義政権にちなみ、「カリブに浮かぶ赤い島」と形容されることもある」とあります。
キューバといえば、サトウキビを原料とするほんのり甘いラム酒、「葉巻はキューバ産に限る」と言われるほど質の高い葉巻、ソウルに響く音楽。そして極めつけは人々。笑顔で「オラ!(スペイン語のこんにちは)」と挨拶を投げかけてくれ、こちらも自然と微笑み返してしまいます。
◆この人に味噌汁を作ります
味噌汁を振る舞うことになったのは、ハバナ滞在時に宿泊させてもらったミルカさん一家の面々です。しっかり者のミルカさん(左)、夜にはラム酒でご機嫌になっていることもある優しい旦那さん(中央)、そして歯科学校に通う一家期待の星、22歳の娘ミレネットちゃん(右)。
ハバナの歴史ある旧市街にミルカさん一家のアパートはあります。音楽が止むことのない、フレンドリーで賑やかなエリアです。
キューバには「casa particular」という、一般の自宅に外国人観光客が宿泊する仕組みがあります。旅人にとっても、国営のホテルより格安で宿泊することでき、かつキューバ人の生活の様子が見えるので嬉しい仕組みです。ミルカさんのように親切な宿主の場合、市バスの乗り方を教えてくれたり、スペイン語を教えてくれたり、体調を気にしてくれたりするので、うんとキューバを身近に感じることができ、毎日家に帰るのが楽しみでした。
友情の証に味噌汁を作りたい!そういう思いからある日、「家族皆で味噌汁を食べてみてください!」と提案をしました。味噌汁をきっかけにこちらの気持ちをうまく伝えることができると良いのですが……。
◆キューバの食文化
旅中に味噌汁を作る際にモットーにしているのが、その国の食文化をできるだけ理解するということ。何が食べられているかを知ることで、その国の人たちが「おいしい」と思ってくれる味噌汁に一歩近づくことができます。それではキューバの食べ物を一部ご紹介しましょう!
・定食
豚肉、チキン、山羊肉は良く食べられています。米は、白米か「コングリ」と呼ばれるしょっぱい赤飯のようなもの。芋、豆、サラダなどの野菜が付きます。この組み合わせの定食が多いです。店によって価格が全然違い、100円~1000円です。写真は、観光客向けの店でドリンクやデザート込みで1000円でした。
・山羊肉の煮込み
骨から出る出汁がおいしい一品でした。ゴロっとした茹でた芋も一緒にどうぞ。こちらは300円。
・ハムサンド
20円くらいで購入可能。しかし、パンもハムも、どのお店に行っても味が似ています。
・ピザ
オーブンで焼くピザは熱々で美味しい!トッピングにもよりますが、40円ほどで購入可能。
さて、いつもどんな味噌汁にしようか悩みます。キューバ料理は、素材の味を生かした淡泊な味付けのイメージが強く、また肉の存在も重要そうなので、しっかり味付けをした豚汁風の味噌汁を作ってみようと思いました。また、モチモチの食感がおいしいキャッサバという芋の存在にも気づいたので、キャッサバも入れて、味噌汁を食べただけでお腹いっぱいになるボリューム満点の味噌汁を作ることにしました。
◆市場へ買い出し
まずは買い出しです。キューバには食料の配給制度があります。この制度によって、キューバ人は低価格で食料を定期的に購入することができます。しかし、それでは足りないため、毎日開催されるこういった市場に行きます。私はキューバ人ではないのでこちらの市場で買い物をします。
こちらのお店で山羊肉を購入。500gで300円弱程でした。
今回買った野菜です。芋、新玉のようなタマネギ、甘いニンジン、生で食べたら激辛だったカブ、味噌汁ができあがってみたら「やっぱりあなたはオクラだったのね!」と判明したオクラ、長ネギ、キャッサバ。全部で150円程でした。
◆味噌汁作り開始!
こちらがミルカさん宅のキッチン。
まな板がありませんでした。それどころか、包丁もナタ並みの荒さです。
そして私にとって初めて扱う品種の芋、キャッサバ。これが最終的にモチモチに仕上がるわけです。味噌に合うんですね。
全ての野菜を切り終えました。
シンプルなキッチンですね。窓下に置いてある炊飯器のようなものが、今回使う鍋です。
よく見ると、ご飯もスープも肉や豆の調理もこれ一つでできるのです!
まずは、お肉や根菜類、火の通りにくい野菜から煮ることにしました。
そしてついに……味噌の登場です。自然な風味が際立つ、越後長岡味噌醸造たちばな味噌。私はこれをバックパックに入れて旅をしていて、これまで数十キロを消費しました。
通常、味噌汁は味噌を入れてから煮立てることはしませんが、今回は豚汁のように、根菜類に味噌の味をしみこませたかったので、少し火が通った段階で使う味噌の半分を入れてしまいます。
カブ、葱、葉ものなど火が通りやすい野菜も全て加えます。
最後に残りの味噌を溶き入れます。いい匂いですよ~!
◆感想
上出来です!オクラがトロッとしていて、キャッサバがモチモチで甘く、新鮮な山羊肉もいい味を出しています。味噌が野菜や肉にしっかり溶け込んでいます。
これ一食でランチが完結するボリュームです。
さあ召し上がれ。お母さんは「ビューティフル!」と喜び、お父さんは「旨い、旨い」と言いすごい勢いで完食してくれました。「なんていう名前の料理?」というお母さんの問いに「sopa de miso(スペイン語で味噌汁)。味噌は大豆で出来ているんですよ」と説明をしました。
ミレネットちゃんも「おいしい、ありがとう」と言ってくれました。
◆物は少ないが心は豊か
味噌汁を囲んでおしゃべりをしていると、ミレネットちゃんは自分のお話をしてくれました。「将来歯科医師になったら、キューバ政府の医師輸出プログラムで、外国に行けるかもしれないの」。やはり外国を知りたいのだそうです。
私が思うがままに世界一周旅行をしている一方で、キューバ人であるミレネットちゃんは、自国の通貨の価値が低い上、海外に行くことが難しい政治情勢下にいます。自分とミレネットちゃんの境遇の違いを思いました。
そうして交流を重ね、徐々にわかったことがあります。日本人とキューバ人。与えられた境遇は違えど、よりよい生活を送りたいと願い、誇りと希望を持って努力する個人の姿は、資本主義の日本でも社会主義のキューバでも、想像していた程変わりがないようでした。むしろ物資不足や海外へのアクセスが閉ざされた環境にいるからこそ、家族が協力し合う姿は心強く映りました。物資は少ないいけれど心は豊かーーそんな印象を抱きました。
味噌汁作りの旅から学ぶことは、これからも多そうです。
文・取材:谷田部美亜 https://misodamaworld.wordpress.com/
監修:世界新聞
sekaishinbun.net
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