留守番電話を廃止したコカ・コーラ社に象徴される「働き方」の変化とは
By NaNa 57 Cute Devil
インターネットの発達・普及はもとより、近年ではスマートフォンのような情報端末が爆発的に普及したため、人々の暮らしは一変したと言えます。ビジネスの世界でも同じことが言え、今では10年前にどうやって仕事をしていたのか思い出せない人も多いはず。そんな中、世界的清涼飲料メーカーであり世界有数の企業でもある「ザ・コカ・コーラ カンパニー」は留守番電話システムを廃止して業務の効率化を進めるという取り組みを進めていることがBloombergで報じられています。
Coca-Cola Disconnects Voice Mail at Headquarters - Bloomberg
http://www.bloomberg.com/news/2014-12-22/coca-cola-disconnects-voice-mail-at-headquarters.html
2014年12月、コカ・コーラ カンパニーでは社内で使われていた留守番電話システムが廃止されました。その目的について同社の情報担当役員Ed Steinike氏は「業務のやり方を単純化して生産性を高めるため」と従業員に宛てた社内メッセージで説明しています。それ以降、相手に不在を知らせる音声案内では後でもう一度かけなおすか、「何か別の方法(an alternative method)」で連絡を取るように要請するメッセージが流されるようになったそうです。
By Barron Fujimoto
しかし、メールや携帯電話、スマートフォンが当たり前の時代でコカ・コーラ社が取った対策については「今ごろになって留守番電話を撤廃?」という声が挙がっても不思議ではありません。Bloombergによると、同社は旧来システムからの改革に遅れを取っていた巨大企業の一つであり、メッセージを一つ一つ聞いて内容を確認せざるを得ないという非効率性が残る企業だったとのこと。
社内の反応もそれに準じたものだったといえるようで、2014年11月に従業員に対して通知された変更内容に対しては小さな混乱も生じたとのこと。この変更案は同社の世界的な業績の落ち込みを受けて決定された改革案の一部であり、改善案全体では2019年までに年間で30億ドル(約3600億円)のコストを削減して、従業員の雇用を安定させることが目的とされています。
この留守番電話廃止によって軽減される直接のコストは年間でも10万ドル(約1200万円)に満たないとのことですが、同社では業務が単純化・効率化されることによって、それ以外の面での改善効果につながることを期待しているといいます。
By Commercial Cleaning Services
この改革案によって最も影響を受けたのは、比較的年齢層が高い世代とのこと。普段からメールでのやりとりに慣れている若い層にとってはさほど苦にならない新しい方式も、上の年齢層にとってはハードルが高いようで、MIT(マサチューセッツ工科大学)のMichael Schrage主任研究員は「40代以上の人は、留守番電話に病的にまでさいなまれている」とその実態について指摘しています。
事実、コカ・コーラ本社の中でも留守番電話を使い続けていたのは一部の限られた従業員だけの模様。上記の従業員に宛てられたメッセージによると、同社では留守番電話の廃止を進めて来ており、「ビジネス上で緊急の必要がある場合」に限ってシステムの利用を認めていたとのこと。実際に利用し続けていたのは全体のわずか6%の従業員だけということでしたが、今回の改革案が実行されることで今後は一切の使用ができないことになりました。
近年のスマートフォンを使えば、留守番電話にメッセージが残されていてもそれが誰からのものであるかが一目でわかり、本当に確認する必要があるものを簡単に見分けることが可能です。また、かかってきた電話を携帯電話に転送することはすでに当たり前のことであり、今では留守番電話の音声メッセージをテキスト化して、本人にメールが届くというシステムを使っている例もあります。アメリカ有数の通信会社であるAT&T社のVishy Gopalakrishnan氏は「いま世界の企業は、インターネットの技術を使って電話、Eメール、テキストメッセージ、ムービー配信を一つに統合したシステムへの移行を進めています。これにより各機能間での重複がなくなります」と語っています。
By Albert Mollon
さらに今後は、固定通信網の利用からモバイル回線への移行が進み、人々の働き方が変化することが予測されてます。常にネットを通じて「つながる」状態が実現されることで、世界中のどこにいても電話がつながり、メッセージが確認でき、同じ内容の仕事を行えるという多様な働き方が可能になる、とする考え方です。
アメリカでは、広く普及していたケーブルテレビ(CATV)の利用をやめてYouTubeやhulu、Netflixのような動画配信サービスに乗り換える「コード・カッティング」と呼ばれる風潮が広がっています。放送局の都合にしばられずに自由に番組を視聴できることが受け入れられているのがその背景にあるのですが、今後はビジネスの世界でも「コード・カッティング」が加速していくことになるのかもしれません。
By Terry Lewis
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