シークレット・サービスになりたい人は必読の書「入隊試験受験ガイド」
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By Ben Murray
映画などで目にすることも多いアメリカの「シークレット・サービス」といえば、スーツの下に銃を隠し持って大統領などVIPの警護にあたり、必要とあらば武力を用いてでも要人の安全を確保するというまさに警護の「プロ中のプロ」と呼べる存在。特に日本人にとっては謎多きシークレット・サービスの世界ですが、組織を管轄するアメリカ合衆国シークレットサービスのウェブサイトでは、シークレット・サービスになるための「入隊試験受験ガイド」なるものが公開されています。
SPECIAL AGENT ENTRANCE EXAM PREPARATION GUIDE
(PDFファイル)http://www.secretservice.gov/join/SAEE-StudyGuide.pdf
![](https://i.gzn.jp/img/2014/09/24/secret-agent-preparation-guide/p00.png)
シークレット・サービスを目指すうえで必ず通らなければならない試験が「Special Agent Entrance Exam:SAEE」と呼ばれる筆記試験です。SAEEを受験するためのガイドブックは、大きく3つの章で構成されています。
【目次】
第一章:SAEEの概要
第二章:SAEEの実際の中身
第三章:SAEEを受験する前準備
各章の内容や試験の例題は以下のようになっています。
◆第一章:SAEEの概要 (Overview of the SAEE:PDF 3ページ)
SAEEは、シークレット・サービスの職務において成功裏に任務を遂行する能力を検証するために開発された試験です。試験は紙と鉛筆を用いる筆記試験で行われ、以下のセクションに分かれています。
セクション1:論理に基づいた推論 (Logic-Based Reasoning)
与えられた条件をもとに、論理的思考能力を試す試験となっています。各条件ごとに4つの問題が出され、受験者は「正(True)」か「誤(False)」、もしくは「十分な情報なし」を選択して解答します。全30問が出題され、回答時間は40分。
セクション2:過去の経験に関する質問・パート1 (Experience Inventory, Part 1)
受験者がこれまでの生活で遭遇した経験についての質問。全64問で、回答時間は20分。
セクション3:言語用法 (Language Usage)
「メモ」と「概略報告」などの2種類の書類が与えられ、受験者は文法、構文、句読点、慣用法など言語能力についての間違いを指摘します。25問で回答時間は40分。
セクション4:過去の経験に関する質問・パート2 (Experience Inventory, Part 2)
セクション2と同じ類いの質問ですが、特に過去の上司や教師との関係を問われる問題。全96問で回答時間は30分。
セクション5:詳細観察 (Detail Observation)
与えられた写真をもとに、短時間で状況を観察して把握する能力をテスト。写真は実際に任務にあたった際に見ることになるであろう光景が再現されています。写真を見た後に受験者は写真とは関係のない質問を受け、さらにその後、今度は写真に関係のある質問を受けます。その際には写真を見ることは不可。写真は3枚あり、それぞれ質問が3セット行われます。回答時間は40分。
◆第二章:SAEEの実際の中身(Preparing for the SAEE:PDF 4ページ)
試験に際して、以下のような規則が設定されています。
・試験は定刻通りに開始される。遅刻の場合は一切受験できない。
・身分を示すIDの掲示が必要
・試験会場に私物の持ち込みは一切禁止
・携帯電話などのデバイスは電源をオフにすること
・各セクションが完了しても、指示があるまで次のセクションに進んではならない
・試験中の退席は認められない。トイレなどに行く場合は挙手し、試験官に問題用紙などを手渡してから部屋を出ること。この場合、試験時間の延長は認められない。また、退席が認められるのは1度のみ。
・設問内容に疑問点がある場合は、試験官に尋ねること。他の受験者と試験内容について会話を行ってはならない。
・試験結果は、実施日から5~10日以内にメールで通知される。
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それぞれのセクションで出される問題の例と回答は以下のようなものとなっています。
【セクション1:論理に基づいた推論】 (Logic-Based Reasoning:PDF 5ページ~20ページ)
このセクションでは、与えられた4つの設定に基づいた判断が問われ、クリティカル・シンキング(批判的思考法)、問題解決能力、判断能力、決断能力などが求められます。以下のような問題が全部で30問あり、回答時間は40分。
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‐例題‐
・設定
1.メリンダはシークレット・サービスのエージェントである
2.スーザンはジョージア州に行ったことがない
3.全て(all)のシークレットサービスのエージェントはジョージア州に行ったことがある
4.フレッドはスーザンと一緒に働いている
・問題
以下の問いに対し、「正(True)」、「誤(False)」または「情報不十分(Insufficient Information)」を選択すること。
問1.スーザンはシークレット・サービスのエージェントである。
a) 正
b) 誤
c) 情報不十分
問2.フレッドはシークレット・サービスのエージェントである
a) 正
b) 誤
c) 情報不十分
問3.メリンダはジョージア州に行ったことがある
a) 正
b) 誤
c) 情報不十分
・回答例
問1:誤
「スーザンはジョージア州に行ったことがない」と「全てのシークレット・サービスのエージェントはジョージア州に行ったことがある」という設定から、スーザンはシークレット・サービスのエージェントではないと判断される。
問2:情報不十分
シークレット・サービスのエージェントではないスーザンと一緒に働いているということだけでは、フレッドがシークレット・サービスのエージェントであるかどうかの判断材料にはならない。
問3:正
「メリンダはシークレット・サービスのエージェントである」と「全てのシークレットサービスのエージェントはジョージア州に行ったことがある」という設定から、メリンダはジョージア州に行ったことがある。
【セクション2:過去の経験に関する質問・パート1】 (Experience Inventory, Part 1:PDF 21ページ)
過去の経験に関する質問は2つのパートに大きく分かれており、パート1では受験者がこれまでに遭遇したシチュエーションについて質問が行われます。質問される内容は以下のようなもの。
![](https://i.gzn.jp/img/2014/09/24/secret-agent-preparation-guide/p21_m.png)
‐例題‐
・問題
1.自分の仕事を管理するために、To-Doリストを用いていた
2.言いたいことが伝わらずに苦労したことがある
3.チームを助けるために、自らに割り当てられていなかったタスクを受け持ったことがある
これらの設問に対し、受験者は以下の4つから選択して回答を行います。
・回答例
a) Never (まったくない)
b) Once or Twice (1回か2回だけある)
c) Several Times (何回かある)
d) Frequently or Routinely (よくある、またはいつもある)
設問数は全部で64個、回答時間は20分となっているために、受験者はペースよく回答を進めることが求められることになります。
【セクション3:言語用法】 (Language Usage:PDF 22ページ~33ページ)
このセクションでは、受験者の言語能力が問われます。「メモ」と「概略報告」などの2種類の書類が与えられ、受験者は文法、構文、句読点、慣用法などについての間違いを指摘します。
‐例題‐
・設定
以下の文章を読んで、以下の問いに答えなさい。
![](https://i.gzn.jp/img/2014/09/24/secret-agent-preparation-guide/p24_m.png)
・問題
問1.以下のうち、間違いを含んでいないのはどの段落か?
a) 第3段落
b) 第4段落
c) 第10段落
d) 上記以外
問2.以下のうち、間違いを2つ含んでいるのはどの段落か?
a) 第5段落
b) 第6段落
c) 第9段落
d) 上記のBとCの両方
問3.以下のうち、不適切な用語を用いているのはどの段落か?
a) 第2段落
b) 第8段落
c) 第11段落
d) 第12段落
・回答例
問1:d) 上記以外
第3段落に含まれている「recovery」は「recoveries」の間違い。
第4段落に含まれている「were」は「we're」の間違い。
第10段落に含まれている「continue」は「continues」、「through out」は「throughout」の間違い。
問2:上記のBとCの両方
第5段落には間違いなし。
第6段落に含まれている「little」は「few」、「quantities」は「quantity」の間違い。
第9段落に含まれている「about」は「between」、「have」は「has」の間違い。
問3:第12段落
第2段落には間違いなし。
第8段落にも間違いなし。
第11段落にも間違いなし。
第12段落に含まれている「capitol」は「capital」の間違い。「capitol」は実在する単語ではあるものの、本来とは異なる意味を持つ単語のためにここでは不適切な用法と判断される。
このように、まるで「英語の試験」のような問題が全25問出題され、回答時間は40分となっています。
【セクション4:過去の経験に関する質問・パート2】 (Experience Inventory, Part 2:PDF 34ページ)
このセクションでは、「仕事を完了させるのに時間がかかったこと」や「間違いを犯した場合に責任を受け入れるか」「『もっといい方法がある』と思っても、指示どおりに作業をおこなうか」といった質問が問われます。この設問では本人の過去の状況が問われるため、予習する要素が一切ないのが特徴といえます。
![](https://i.gzn.jp/img/2014/09/24/secret-agent-preparation-guide/p34_m.png)
質問の一例は内容は以下のようなもの。
‐例題‐
・問題
あなたの以前の上司か教師のどちらか、もしくはその両方は以下のような人物だった
・選択肢
a) Strongly disagree (まったく意見が合わない)
b) Disagree (意見が合わない)
c) Neither agree nor disagree (どちらでもない)
d) Agree (意見が合う)
e) Strongly Agree (意見が合う)
設問数は全部で96問もあるのに対し、回答時間は30分となっています。
【セクション5:詳細観察】 (Detail Observation:PDF 35ページ~48ページ)
このセクションでは、実際の任務時に与えられるような写真を見せられ、内容を読み取る能力がテストされます。たとえば、試験官はまず写真の状況として「シークレット・サービスのエージェントは犯罪調査や警護任務にあたるために他の組織と共同で任務にあたる場合がある。次の写真は金融犯罪の調査について他の組織と打ち合わせを実施している風景のものである」という説明文を読み上げます。
続いて、2分半だけ以下の写真を見ることができます。このときに注意すべき点は「人物」「物体」「背景に写っている物」の3つ。
![](https://i.gzn.jp/img/2014/09/24/secret-agent-preparation-guide/p38_m.jpg)
写真を見る時間が終わると、この写真とは全く関係のない質問を受けてから、写真に関する以下の質問に答えていきます。
・問題
問1.以下のうち、最も電話機に近い位置にあったものはどれか?
a) コーヒーマグ
b) ゴミ箱
c) ペーパークリップ
d) 鉛筆
問2.机の上のコーヒーマグは何色だったか?
a) 黒と緑
b) 黒と白
c) 青と金
d) 青と赤
問3.以下のうち、写真に写っていたものは?
a) 空白のフリップチャート
b) 非常口灯
c) 青色のノート
d) 黒いスーツジャケットを着た女性
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・回答例
問1.d) 鉛筆
問2.c) 青と金
問3.a) 空白のフリップチャート
このように、個人的な背景を問うものから、最後の設問のように実際の任務に近いテストケースが試される幅広い設問になっているのが特徴と言えそうです。
◆第三章:SAEEを受験する前準備
最後の章では、受験に備えた準備方法と試験中のアドバイスが記載されており、主な項目は以下のようなものとなっています。
受験に備えた準備方法
・本書の例題をよく読み、試験内容に慣れておくこと
・試験が近づいたらよく睡眠をとること
・本番が近づいてきたら、エクササイズを行うとストレスの発散になります
・当日の試験会場までの道のりと所要時間を把握しておけば、余計なストレスに悩まされずに済みます。予行演習をしておくのもよいアイデアです。
・試験当日はなるべく早く会場に到着すること
・朝食をしっかりとる
・残り時間を把握できるように、腕時計を忘れないこと
試験中のアドバイス
・問題文はよく読むこと
・問題文は最後まで読んでから回答すること
・不確かな場合でも回答しておくこと。推測の回答でもペナルティは与えられません。
・一問に時間をかけすぎないこと
・答案用紙の欄がズレていないか、定期的にチェックすること
・答えがわからなくても、落ち着いて前向きに回答を進めること。パニックになってはいけません。深呼吸を行い、全ての問題に最善を尽くすこと。
・ほかの受験者が早く問題を解き終わっても心配せずに自分の回答に専念すること。
・答案用紙の答えの並び方をもとに答えを推測しないこと。回答はランダムに並ぶように配置されています。
最後の最後で、国の要人の安全を守るシークレット・サービス候補者に向けたものとは思えないほど肩の力が抜けたアドバイスになっているのがじつに興味深い「受験ガイド」でした。
![](https://i.gzn.jp/img/2014/09/24/secret-agent-preparation-guide/p49_m.png)
これを見て「できる」と思った人は、一度受験してみてもいいのかもしれません。ただし、受験にはアメリカの市民権を得ていること、21歳以上37歳以下、体に入れ墨などのタトゥーを一切入れていないことなどが必須の条件です。
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in メモ, Posted by darkhorse_log
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