おいしいサンドイッチを作るために知っていそうで知らなかった基本がわかるレシピ本「サンドイッチの発想と組み立て」
単なるレシピではなく、世界各地の歴史ある定番のサンドイッチを研究しまくり、「パンと食材の組み合わせ」「パンの種類ごとに合う食材」「食材を挟む順番」などを組み立て、各国のサンドイッチをいいとこ取りした究極のオリジナルサンドイッチまで作れてしまうようになれる本が「サンドイッチの発想と組み立て」です。
表紙はこんな感じ。
著者のナガタ ユイさんによると、「本書では「世界の定番サンドイッチ」にこだわりました。なぜなら、世界中で愛され続けるサンドイッチの中には"サンドイッチ作りの基本"が凝縮されているからです。また、サンドイッチを組み立てる中で、私自身が知らなくて困ったこと、気付いたこと、メニュー作りに欠かせない食材、よく質問を受けること等を「サンドイッチの基礎知識」としてまとめています」ということ。
ずっしりと分厚いレシピ本です。
最初のページにはパンの種類ごとの特徴や、カットの方法などが書かれています。
日本人がよく食べる食パンについては、角食パンなら10mm~18mm、山型食パンなら10mm~20mmにスライスすることが図とともに説明されています。これだけだと「厚さが違うから、だからなんなんだ?」という感じですが、同じ重量の卵サラダを違う厚みで挟んだ場合にまるで見た目の印象が違うことがわかる写真が添えられているため、バランスの差がどれだけ大きな印象の差を生むかが実感できるようになっています。
バゲットの場合も適当に切るのではなく、1本を4等分にするのが向いており、具材を挟む切り口は真横に刃を入れるよりも少し上から斜めに切り込みを入れるとのこと。バゲットより太く短いバタールは30mm~40mmの厚さで斜めにスライスし、小さなサンドイッチであれば垂直に切れば良いそうです。
クロワッサンやドイツのパンなど、それぞれのパンによって最適な切り方が解説してあるため、「サンドイッチ向けにはこうやって切るのがいいのか」という基本をあらゆるパンについて押さえることが可能。これだけで本一冊に相当するレベルですがまだ序盤も序盤、本当に最初の数ページあたりでこの説明の濃さは特筆もの。
ごく当たり前に「これしかないだろう」と思っていたような切り方ですら覆されており、たとえばコッペパンの場合、「真上から真っ直ぐに切り込みを入れる」だけでなく、「真横より少し上から斜めに切り込みを入れてもよい」と書かれており、よくよく考えて実践してみると「なるほど」というのがわかるようになっています。
フランスのパーティー用の大きなパン「パン・シュープリーズ」の切り方を書いたページでは思わず「どこでそんなパン売ってるんだよ、近所のパン屋にないよ!」と言いたくなるところですが、ページ下部に「山型食パンでの応用」と書いてあり、この手の本にありがちな「そんなもんどうやって手に入れるんだ?」というようなことがあまりなく、非常に地に足の付いた本であることがよくわかります。
「定番サンドイッチの考え方」の章では、バゲットならパンの割合が3分の2に対して食材が3分の1というようにして、パンと食材のバランスはどうあるべきか?ということで、どこかのグルメマンガか何かのような徹底的なこだわりっぷり。
さらにすごいのがこれ、屋台・デリ・ベーカリー・カフェ・ダイナー・レストラン・ホテルなど「提供シーン」と「パンの種類」で分類した図。定番サンドイッチが親しまれる「普遍的なおいしさ」について徹底的に追求した結果生まれたもの。
そんな世界中のサンドイッチの種類を分析して編み出したのが「定番サンドイッチの組み合わせの法則」。まず基本の組み合わせがあり、さらにそこへ「プラスアルファ」の要素を追加、そして構成要素をバラして置き換えることで、オリジナルのアレンジメニューであるのにおいしいサンドイッチができる、としています。
つまり、おいしいオリジナルのサンドイッチを作るためには、これまで歴史上編み出されてきたさまざまな定番・名作サンドイッチを知っておく必要がある、ということに。そのため、本の中盤は定番サンドイッチのかなり正確なレシピを知ることができるようになっています。最初に登場するのはイギリスの「ローストビーフ・サンドイッチ」で、サンドイッチの語源にもなったサンドイッチ伯爵が賭け事の途中に片手で食べられて、なおかつ手の汚れないものとして出させたのがなんとコレ。サンドイッチの由来は知っていても、まさかそれが「ローストビーフ・サンドイッチ」であろうというところまではなかなか思い至らないもの。
各レシピの内容は基本的に断面図の写真を中心にして、どのような具材で構成されているかを説明するものとなっており、右ページにはいろいろとコツみたいなものが書いてあります。単純に具材をそろえて挟んでオワリというわけではなく、どの順で重ねるか、最終的にどうやって切るのか、中の具材は折りたたむのか、切る方向と直角に置くのか、というようなポイントもすっきりとまとめられています。
喫茶店やパン屋さんでよく見かけるサイコロみたいなあのサンドイッチは「ティー・サンドイッチ」という名称で、1930年ごろの上流階級にアフタヌーンティーのお供として社交の場で親しまれたもの。
基本となるティー・サンドイッチはそれぞれパンの種類が違っており、「ハム&マスタード」「チェダー&キュウリ」「スモークサーモン&ハーブクリームチーズ」「卵&クレス」「オレンジマーマレード&バター」の全5種類。
日本でもカフェやホテルなどでなじみがある「BLT(ベーコン・レタス・トマト)」はアメリカを代表するサンドイッチとのこと。1930年~1950年にかけてアメリカのダイナーで人気のメニューとなり、注文の際に食材の頭文字をオーダー表に記入したことがメニュー名の起源と言われているもの。
同じくアメリカの「クラブ・サンドイッチ」は3枚のパンで2~3種類のサンドイッチを1つにまとめたもので、フランスでは高級軽食として一流ホテルや老舗のカフェで提供されているとのこと。
19世紀初頭に東ヨーロッパからアメリカに移り住んだユダヤ人によりもたらされ、1980年に世界的なブームをおこしたのが「ベーグル・サンドイッチ」。
ドイツといえばソーセージが有名ですが、やはりサンドイッチにもソーセージを挟んだ「ヴルストブロートヒェン」のレシピを発見。ソーセージを手で食べるためのフォーク代わりに小さなパンを使っているそうです。
イタリアの「パニーノ」は小さいパンという意味で、「パニーニ」だと複数形にあたるとのこと。
さらに珍しいサンドイッチとしてはエジプトからイランにかけて親しまれている「ファラフェル」というコロッケを使ったものも。ピタやホブスと呼ばれるフラットブレッドに野菜やピクルスとともにひよこ豆のコロッケが入っています。
クミンやヨーグルトが使われたエキゾチックな味わいということで、読んでいるだけで段々とどれもこれも1回ぐらい作って食べてみたくなってくるのが恐ろしい点。
フランスの植民地下にあったためフランスパンが定着しているベトナムのサンドイッチ「バイン・ミー」。香草・ベトナムハム・レバーペースト・なますなどの組み合わせが一般的とのこと。
世界にはいろんなサンドイッチがありますが、忘れてはいけないのが日本の「かつサンド」。1895年から誕生した洋食文化のとんかつとパンが融合したというルーツが記載されています。
大量の世界各国の定番サンドイッチレシピが載っているわけですが、サンドイッチに使われる食材についても種類ごとに詳しく解説されています。例えばバターひとつにしても、エスカルゴバター・レモンバター・トマトバター・ロックフォールバター・アンチョビバター、さらにはバター以外の油脂としてオリーブオイル・ガチョウの脂・ピーナッツバター、というようにして多種多様なものがどのような場面で使うべきかが解説されています。
ベーコンやハムについても種類・置き方・切り方の各ポイントを丁寧に解説済み。
サンドイッチに欠かせない基本のソースについてもマヨネーズからベシャメルソースにいたるまでずらっと並んでおり、さらに「塩、スパイス&ドライハーブ」ということで少量を添えるだけでアクセントを与えてくれるものも豊富に取りそろえて説明してくれています。
組み立てる時の指南もあり、水分を吸うため「トマトとパンは接触させない」ということや、調味されておらず味がぼやけるため「トマトとレタスも接触させない」「トマトとレタスの間にソースを挟む」など、言われてみれば「確かに!」と思うことや、「なるほど……」と感心させられることがてんこ盛り。
そしてこれら膨大な知識を詰め込んだその果てには、「オリジナル・サンドイッチ コンセプトシート」というのがあり、順に埋めていくだけでオリジナルのおいしいサンドイッチが完成する、という仕組み。読み終わり次第、サンドイッチ屋を開業できるのではないかと思わず考えてしまうぐらいの充実っぷりです。
なお、目次は以下のようになっています。
◆サンドイッチの基礎知識 I
・パンについて
◆世界の定番サンドイッチ
・定番サンドイッチの考え方
◆イギリス
ローストビーフ・サンドイッチ
・パストラミビーフ&ポテトフライのサンドイッチ
・ローストポーク&シャルキュティエールソースのサンドイッチ
ティー・サンドイッチ
・キューカンバー・サンドイッチ
・ハム&マスタード
・チェダー&キュウリ
・スモークサーモン&ハーブクリームチーズ
・卵&クレス
・オレンジマーマレード&バター
・ヴィクトリア・サンドイッチ
オール・デイ・ブレックファスト
・オール・デイ・ブレックファスト・サンドイッチ
・オール・デイ・ブレックファスト・パニーノ
・イングリッシュ・マフィンのブレックファスト・オムレツサンド
◆フランス
バゲット・サンドイッチ
・ジャンボン・フロマージュ・
・フルム・ダンベール&ペッパーシンケン
・カマンベール・カントリーロースト
・バタールのサラダサンド
・ショコラのバゲット・サンドイッチ
タルティーヌ
・リエットのタルティーヌ
・フルム・ダンベールとバナナ
・カマンベールとリンゴ
・フランスの朝食(Column)
クロック・ムッシュ
・クロック・ムッシュ
・クロック・マダム
・ニンジングラッセのグラタン風クロック・ムッシュ
・カボチャとベーコンのグラタン風クロック・ムッシュ
パン・パニャ
・パン・パニャ
・ニース風ポテトサラダのヴィエノワサンド
・ラタトゥイユとスパイシーサラミのチャバッタサンド
パン・シュープリーズ
・パン・シュープリーズ
◆アメリカ
BLT
・BLT
・シーザーサラダ風BLCT
・BLAT
クラブ・サンドイッチ
・クラブ・サンドイッチ
・スペシャル・クラブサンド
・タンドリーチキンのクラブ・サンドイッチ
ルーベン・サンドイッチ
・ルーベン・サンドイッチ
・クレソンとリンゴとブルーチーズのホット・パストラミサンド
・ルーベン・パニーノ
ベーグル・サンドイッチ
・ベーグル&ロックス
・ナッツのハチミツ漬け&クリームチーズ・・・・・
・ブルーベリー&クリームチーズ
・生ハム&トマトクリームチーズ
エッグ・ベエネディクト
・エッグ・ベエネディクト
・モルタデッラと温製マヨソースのエッグ・ベエネディクト
・ペッパーシンケンちベシャメルチーズソースのエッグ・ベエネディクト
ブリトー
・グリルドチキンのブリート
・ベジタリアン・ブリート
・ハムとチーズとワカモレのブリート
ピーナッツバター&ジェリー
モンテ・クリスト
◆ドイツ
カルテス・エッセン
・カルテス・エッセン
・レバーヴルストとクリームチーズのサンドイッチ
・メットヴルストとワカモレのプンパニッケルサンド
ヴルストブロートヒェン
・ブラートヴルストブロートヒェン
・カリーヴルストブロートヒェン
・ザワークラウトとズースマスタードのホットドッグ
・レバーケースゼンメル
・ビアシンケンのサラダ風カイザーサンド
◆イタリア
パニーノ
・プロシュートとルッコラのパニーノ
・カプレーゼ風サラダ・パニーノ
・クアトロフロマッジとサラミのパニーノ
・モルラデッラのパニーノ
◆北欧
スモーブロー
・スモークサーモンのスモーブロー
・甘エビとゆで卵のスモーブロー
・ローストビーフのスモーブロー
・マリボーのスモーブロー
◆中東
ファラフェル
・ファラフェル
・揚げ野菜のピタサンド
・ケバブ風焼き肉サラダピタ
・トルコの「サバサンド」(Column)
◆ベトナム
バイン・ミー
・バイン・ミー・ティット
・ヌクマム風味の揚げ鶏とモヤシのスイートチリサラダのバイン・ミー
・ベトナム風焼き肉のバイン・ミー
◆日本
かつサンド
・とんかつサンド
・ヒレかつサンド
・ビーフかつサンド
・鶏から揚げのカンパーニュサンド
コッペパンサンド
・焼きそばパン
・ナポリタンパン
・マカロニサラダパン
・コロッケパン
フルーツ・サンドイッチ
・フルーツサンド
◆季節のオリジナル・サンドイッチ
・オリジナル・サンドイッチの組み立て方
◆春
◆LESSON1 旬の食材から発想するー旬食材のサンドイッチI
・春キャベツたっぷりかつサンド
・春キャベツたっぷりコロッケサンド
・春キャベツマリネのルーベン・サンドイッチ
・春キャベツのコールスロー&ハムサンド
・春キャベツたっぷり塩焼きそばパン
・鶏から揚げの甘酢あんサンド
◆LESSON2 旬の素材をアクセントに使うー旬食材のサンドイッチII
・菜の花&プロシュートのバゲット・サンドイッチ
・蕗味噌ドッグ
・新玉ネギマリネとスモークサーモンのライ麦パンサンド
・春ゴボウサラダのBLT
◆LESSON3 フルーツを取り入れるーデザート・サンドイッチ
・まるごとイチゴのデザート・サンドイッチ
・甘夏とクリームチーズのクルミパンサンド
・マスカルポーネとドライフルーツのブリオッシュサンド
◆LESSON4 アウトドアでいただくメニューを考えるーピクニックサンドイッチ
・ピクニックボックスサンド
・かつサンドミックス
・プチパンサンドとバラエティ・ボックス
・フランス風ピクニック・バスケット
◆夏
◆LESSON5 冷やしておいしい組み合わせを考えるーサラダ・サンドイッチ
・梅と大葉、ゴマ香る和風サラダサンド
・キャロットラペと生ハムとクリームチーズのチャバッタサンド
・サーモンマリネとアボカドのサラダサンド
・クロワッサン・サラダサンド2種
・パプリカチキンのシーザーサラダサンド・・
◆LESSON6 スパイスやハーブの個性を生かすーエスニック風サンドイッチ
・ハーブソーセージのサラダ風ナンドッグ
・ワカモレ&ガーリックソーセージドッグ
・タンドリーチキン&カボチャとキュウリ&チーズのサンドイッチ
・韓国風焼き肉とナムルのサンドイッチ
・スモークチキンとキュウリのギリシャ風サラダ・ピタサンド
◆秋
◆LESSON7 焼きたてを提供するーホット・サンドイッチ
・ラタトゥイユとミートソース入りラザニア風クロック・ムッシュ
・キノコクリームとローストチキンのパニーノ
・マッシュルームとエスカルゴバターのタルティーヌ
・イングリッシュ・マフィンのハムチーズサンド
◆LESSON8 パンに合う料理から発想するーグルメ・サンドイッチ
・シュークルート・サンドイッチ
・ピペラードのエッグ・ベネディクト風
・スペイン風オムレツサンド
・リヨン風サラダのトーストサンド
◆LESSON9 ワインに合う組み合わせを考えるー本格食材の小さなサンドイッチ
前菜になるサンドイッチ
・サーモンマリネとサワークリーム
・パン入りラタトゥイユのチコリカナッペ
・サントモールとミックスベリーのハチミツマリネ
メインになる小さなサンドイッチ
・ジャガイモとラクレット
・フォアグラとイチジクジャムのブリオッシュサンド
・リエットと根セロリのマリネ
デザートになるサンドイッチ
・カマンベールとリンゴ
・ロックフォールとナッツのハチミツ漬け
・ブリア・サヴァランとドライフルーツの赤ワインコンポート
◆冬
◆LESSON10 パーティーメニューを考えるーパーティー・サンドイッチ
・ワインに合うピンチョス風プレート
・オーバルプレートのパーティー・サンドイッチ
・長角皿のパーティー・サンドイッチ
・キッズ・パーティーのサンド・セット
・パン・シュープリーズ・バラエティ
◆LESSON11 和の食材を取り入れるー和風味のサンドイッチ
・ハチミツ味噌豚とセリとゴボウのフィセル
・焼豚と里芋フライの和風クラブ・サンドイッチ
・豚角煮のリエット風と里芋マッシュのバゲットサンド
・レンコンステーキと厚切りベーコンの和風バーガー
◆サンドイッチ作りで大切なこと あとがきにかえて
◆サンドイッチの基礎知識II
・バターについて
・チーズについて
・食肉加工品について
・ソースと調味料について
・野菜の下準備
・サンドイッチの組み立て方
なお、記事執筆現在のAmazonでの価格は2700円(税込)となっています。
Amazon.co.jp: サンドイッチの発想と組み立て: ナガタ ユイ: 本
・関連記事
サンドウィッチに秘められた力が目覚めるレシピ「本当に旨いサンドウィッチの作り方100」のサンドウィッチをいろいろ作ってみました - GIGAZINE
ケーキ・スコーン・サンドイッチが3段重ねのイギリスのアフターヌーンティー - GIGAZINE
サブウェイの夏らしいスパイシーな具材を挟んだサンド「スパイシータンドリーチキン&スパイシーシュリンプ」全3品試食レビュー - GIGAZINE
シェフがいなくてもバイトだけで手間暇かけずに速攻でおいしい高級サンドの提供を可能にする驚愕の冷凍技術 - GIGAZINE
完璧な断面でボリュームたっぷりのサンドイッチもカットできる「電動ブレッド&マルチナイフ」を使ってみました - GIGAZINE
マクドナルドがサンドイッチの製法の特許を申請中 - GIGAZINE
・関連コンテンツ