サイエンス

もしも「ドーナツ状」の地球が存在したら、そこは一体どんな世界なのか?


「天体の形は丸いもの」という常識にとらわれないで他の形状をもつ可能性はないのか?という命題は古くから天文学者の間で考えられていたようです。そんな命題に挑戦するかのように「ドーナツ状の地球」が存在したらどんな世界が広がっているのかについて科学的知見から検証する試みが行われています。

Andart: Torus–Earth
http://www.aleph.se/andart/archives/2014/02/torusearth.html

オックスフォード大学の人類学者であるアンダース・サンドバーグ博士は自身のブログ「Andart」で「ドーナツ地球」について重力、日照時間、気候などについて検証しています。

極と赤道
地球には北極点と南極点の二つの「極」が存在します。また、北極点と南極点から等距離の円周上を「赤道」が走っています。しかし、ドーナツ上の天体では地球と同じようには極・赤道は存在しません。そこで、サンドバーグ博士は、下のイラストのドーナツの腹の部分にある水色の円周を「極」、イラストの赤い部分を「外赤道」と呼び、ドーナツの穴の内側にもある極から等距離の円周上を「内赤道」と呼ぶことにしています。


ドーナツとフープ
ひとえに「ドーナツ状」と言ってもその形はさまざまです。そこで、サンドバーグ博士は、「ドーナツ地球」として、地球とほとんど同じ容積で穴の大きさが小さめの「Donut(ドーナツ)タイプ」と、地球に近い重力分布をもつものの地球の6倍の容積を持つ「Hoop(フープ)タイプ」の2種類についてそれぞれ検証しています。

なお、ドーナツタイプは穴の半径が1305キロメートル、中心から外側(外赤道)までの半径は1万633キロメートル、表面積は地球の1.6倍の8億2000万平方キロメートルで、フープタイプは穴の半径が1万1304キロメートル、中心から外側までの半径が1万9937キロメートル、表面積は地球の4.9倍の25億平方キロメートルのものが想定されています。

重力加速度
球形の地球上では地表面での重力はほぼ均一です。しかし、ドーナツ地球ではがらっと様子が変わります。下の図は、ドーナツタイプの重力分布を示したもの。極部分が最も重力加速度が大きく、逆に内・外赤道部分は重力加速度が小さいことが分かります。つまり、ドーナツ地球では内外の赤道の方が重力が小さく、極に近づくにつれて重力が大きくなるということです。


なお、ドーナツ地球の地表面から衛星を打ち上げ、ドーナツ地球の重力から逃れて宇宙の無限のかなたへ飛んでいくのに必要な速度である脱出速度(第二宇宙速度)についても計測されています。ドーナツタイプでは、外赤道からドーナツの穴と垂直方向への脱出速度は秒速11.4キロメートル、ドーナツの穴と水平な方向(東西方向)への脱出速度は秒速4.9キロメートルとのことです。

ドーナツの穴をより広げたフープタイプの重力分布はこんな感じです。ドーナツタイプに比べると内赤道の重力加速度が大きめであることが分かります。


日照時間
球状の地球でも緯度によって、また季節によって日照時間は変わります。そこでサンドバーグ博士はドーナツ地球についても地球と同じように地軸を約23度傾けた設定で日照時間の分布を季節ごとに検証しています。


ドーナツ地球では、夏と冬の時期には、広い範囲で白夜が発生。これは極付近の限られた地域でしか白夜を見ることができない地球と違って、より広い地域で日が沈まないことになります。

下の図はドーナツタイプの日照時間の長さを色で表したもの。夏はほとんどの地域が白夜状態ですが、反対に冬にはほとんどの地域で日照時間が大きく減っています。


フープタイプだとこんな感じ。内赤道では春・秋よりも冬の方が日照時間が長いことが確認できます。これはドーナツの穴から光が入ってくるドーナツ地球ならではの現象。なお、光の回折によって、春・秋には、一部地域では非常に赤みを帯びた美しい空が観察できるはずとのこと。



ドーナツ地球が衛星として「月」を持つことができるかについては、厳密にはコンピュータを駆使した解析が必要となるものの、サンドバーグ博士は可能性は非常に小さいとみているようです。


結論
もちろんドーナツ状の天体は自然界に存在しないとしつつも、もし仮に宇宙のどこかにドーナツ地球が存在するならば、それは重力も気候も季節も何もかもが地球とは異なった「冒険心をくすぐる素晴らしい世界」だろうとサンドバーグ博士は述べています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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