空気電池の二次電池化実現に世界で初めて富士色素が成功
電池や環境デバイスを開発している富士色素株式会社が、世界で初めてアルミニウムを電極材料とした空気電池の二次電池化実現に成功したことを発表しました。
世界初!アルミニウム - 空気電池の二次電池化を実現|プレスリリース 配信サービス【@Press:アットプレス】
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地球温暖化や原油価格上昇などの問題から、自動車のエネルギーなどを電気エネルギーに転換していくことが注目されていましたが、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池は電気自動車やスマートグリッドに必要となる高性能の蓄電機能としてはエネルギー密度が不足しているとのことで、高性能な新しい二次電池の開発が期待されていました。
富士色素が注目していたのは、扱いやすく、安価なアルミニウムを材料とした金属-空気電池。アルミニウムは、他の二次電池の金属材料の候補と比較して、資源量が豊富であり、二次電池として最高といわれるリチウム-空気電池に次ぐ2番目の理論値容量があるとのこと。また、リチウムなどの空気に酸化されやすく不安定な物質は一切使わないので、空気中での安定した作動・製造も可能で、リチウムイオン電池のように爆発や燃焼する心配がありません。
実際に開発されたアルミニウム-空気電池の電池構造は、負極としてアルミニウム金属板を、電解液として水酸化ナトリウム水溶液を用いて、負極と正極である空気極と電解液の間に酸化物から構成されるアルミニウムイオン伝導体(タングステン酸アルミニウム)を組み合わたもので、アルミニウム-空気二次電池を空気中で0.2mA/cm-2の放電レートで放電したところ、初期放電容量は5.3mAh/cm-2であったとのこと。また、30回目の放電容量も約4.4mAh/cm-2となり、放電容量が8割以上維持されているのでアルミニウム-空気電池が二次電池として機能できることが証明されました。
放電1回で使い切りの一次電池であった、現在までのアルミニウム-空気電池を二次電池として機能させることが証明されたのは世界初とのことで、研究成果は2013年8月に英国王立化学会の学術誌RSC Advancesに掲載されています。
今後の課題は、作成したアルミニウムイオン伝導体の酸化物の多孔性が原因で、実験中に電解液が蒸発してしまい、電解液を補充しなければいけない問題をクリアすること。富士色素の常務取締役である森良平博士によると、アルミニウム-空気電池は1週間の放電が確認されていますが、今後は電解液をより安全で安価なNaCl、つまり塩水などを使用して検討する予定。また、伝導度の高いアルミニウムイオン伝導性を有するアルミニウムイオン伝導体なども使用して、さらなる充放電時間の延長、容量の大型化を目指す予定とのことです。
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