グアテマラに衝撃的な姿の神様がいるというので会いに行ってきた
グアテマラの密教の神・サンシモン。きらびやかなネオンに照らされ、ネクタイを締め、サングラスにタバコをふかすその姿はまさに衝撃的。民間信仰とカトリックが融合して生まれたというサンシモンに会い行ってきた。
こんにちは。世界新聞社の松崎敦史です。世界一周中のわたくし、現在、グアテマラの古都・アンティグアにいます。今後はグアテマラから駆け足でパナマまで南下しようと思っています。
ピンクが現在地、青が経由地
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今週はグアテマラ第二の都市・ケツアルテナンゴに滞在していた時に会いに行った密教の神様について。グアテマラ南西部の高地地方、特にアティトラン湖周辺の村々には「サンシモン」という像を祭る、マシモン信仰というのがあります。サンシモンは民間信仰とカトリックが融合して生まれたらしいのですが、とにかくこの像の「見た目のインパクトが尋常じゃない」という話を聞いて、急いで会いに行ってきました。サンシモンはグアテマラ各地にあるらしいのですが、今回はその中でも三大サンシモン総本山と呼ばれるうちのひとつ、ケツアルテナンゴに近いスニルのサンシモンを紹介します。
ケツアルテナンゴからスニルへのルート
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スニルまでバスで30分です
何故か後ろから乗り込みます
乗客はまばら
スニルの村が見えてきました。日本の温泉街のような雰囲気
川で洗濯しています
村人に聞くと、「サーンシ、モ―ン!」とノリノリで教えてくれました。橋の向こうにいるとのことです。
村は殺風景で静まり返っています
すれ違う女性はほぼ民族衣装を着ています
ふと上を見上げると……標識を発見。
サンシモンまで100mですって!
少し行くとまた標識が……。
サンシモンまで85m!
15mずつカウントダウンですか。気合い入ってますね……と思ったら、以降標識が見あたりません。
村人に聞くと、看板のあった道から畑の中に折れる道の先を指します。辺りに方向を指す看板はなし……。何故に100mと85mだけ?
黒い壁に白字でなんか書いてあります。あれでしょうか?
館の前には黒い帽子をかぶった男性がいて、あたりには何かを燃やしたような臭いがたちこめています。直感的に「ここだ」と感じます。
館に入ろうとしたら男が声をかけてきて「金を払え」と言います。入場料が5ケツアル(約50円)、写真撮影料が10ケツアル(約100円)とのこと。
恐る恐る入ります。何か光るものが見えます。
サンシモンは部屋の奥に鎮座していました。暗闇の中にサンシモンが浮かび上がっています。
シルクハットにサングラス、ネクタイを締めています。異様な風貌に圧倒されて、写真を撮るのも忘れて固まってしまいました。
近づいてみます
タバコを吸っています。これは信者がくわえさせたものです。
こんな神様見たことありません
膝元にはお布施を入れる籠が。
部屋の中にはやたら軽快な音楽が流れていて、子供たちが走り回って騒いでいます。その中で静かにタバコをふかすサンシモン。ある種シュールな感覚に陥ります。
サンシモンのかたわらにキリスト像が祭られています
館の人はこちらには目もくれず、新聞を読んでいました
お祈りに来た人の子供でしょうか。めちゃくちゃ愛らしい
館の隣にお祈りグッズを扱う店があったので行ってみます
様々なお祈りグッズ
無造作にパンが載せられてます
お祈りに使う何かの植物。コレを酒に浸し、サンシモンの前で自分の身体を払います。
館に戻り、購入したろうそくを立てます
ろうそくには意味があって、赤は恋愛、青は仕事、水色は学業、ピンクは健康、黄色は商売にご利益があるそうです。そして、黒は気に入らない人に災いをもたらすという……。
帰ろうとすると、兄弟らしい女の子が見送りに出てくれました
運が良ければ、信者がサンシモンにお酒を飲ませるところが見られるということだったのですが……。残念ながら、それは叶いませんでした。来た道を引き返します。
すると、まさかの「SAN SIMON」の標識が。
路地を進むと、さらに標識。別のサンシモンがいるんでしょうか。
いました。ここでも同じ金額を払います
さっきの館の倍以上の広さです。同様に薄暗いのですが、音楽がかかっておらず、まさに静寂。
相当アングラな雰囲気です
サングラスなど身につけているものや周りの花が違います。表情などは同じのようですが、全く違う印象を受けます
やはりタバコをくわえています。灰が長くなると、館の女の子が逐一落としていました
はかまのようなものを着ています
管理人の女の子
祭壇
上にはサンシモンの吸い殻が
傍らにはキリスト像が横たわっていました
しばらくすると、男性が入ってきてお祈りが始まりました
そして、館の女の子がサンシモンを傾けたかと思うと……男性がお酒を飲ませはじめました。ちなみにお酒は下に映っている桶に溜まるようになっています
何かをつぶやきながらお酒を飲ませます
サンシモンに語りかける男性。真剣な表情が信仰の厚さを伺わせます
この地にスペイン人が侵攻したのが1500年代。スペイン人は当時住んでいたマヤ系先住民にキリスト教を布教しました。しかし、先住民はもともとあった土着の信仰(石彫の前で香を焚いて祈りを捧げるなど)を捨ててはいませんでした。スペイン人の監視をあざむくために、サンシモンに西洋風(スペイン風)の衣装を着せて、自らの信仰を守ったそうです。
あの不思議な風貌は、信仰を守りぬくための苦肉の策だったのか……。
現地人によると、キリストの復活際がある3月、キリスト像を村人が担ぎ、街を練り歩くことがあるそうです。その際、サンシモンも外に出ることになります。サンシモンはキリスト像の後をついて回るのですが、ついにはキリスト像を追い越して、キリスト像の方を振り返り、「ケラケラと笑う」という伝説があるとのことです。
何だか神妙な気持ちで館を後にしました。
(文・写真:世界新聞社/松崎敦史
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