政治思想は遺伝するのか?「リベラル遺伝子」が発見される
二世議員、三世議員という言葉もありますが、そういった政治家は代々同じ政党だったり、代々保守、代々リベラルなど、支持基盤とともに政治思想や物事に接する根本的なスタンスというものも世襲している場合が多い気がします。
日本では政党が比較的細分化され、各政党の方針も時代により変化する感があるため「代々○○党支持」といったことは少ないかもしれませんが、共和党と民主党の二大政党制で「共和党=保守」「民主党=リベラル」といったイメージが定着したアメリカなどでは、政治家に限らず有権者も家族ぐるみで保守やリベラルであるという状況がわかりやすく存在することもあります。
もちろん育った環境や受けた教育などを通じて後天的に両親に影響を受ける部分は大きいでしょうが、実は政治的姿勢にも遺伝子に負う部分があるようです。
詳細は以下から。Researchers Find a ‘Liberal Gene’
カリフォルニア大学サンディエゴ校の政治科学と遺伝医学の教授James Fowler博士らは2000人のデータをもとに行った研究で、ドーパミン受容体D4をつかさどるDRD4遺伝子の特定の型をもつ人は、そうではない人と比べリベラルとなりやすいことを発見しました。ただしこれは、その遺伝子の持ち主が思春期に人とのかかわりが多い社交的な生活をしていた場合に限られるそうです。
ドーパミンは運動の制御や物事に対する情動的な反応、快楽や痛みを感じる能力などにかかわる神経伝達物質ですが、このドーパミンの受容体の一つであるD4受容体をコードする遺伝子のうち特定のタイプと、新奇探索行動(いわゆる「新しいもの好き」)とのかかわりが、これまでの研究で示されてます。そしてこの「新しいもの好き」な性格と、政治的にリベラルであることとの関係も示されています。
Fowler教授らは、「新しいもの好き」の遺伝子の持ち主は、友人の考え方や物の見方に、より興味を持つはずだと仮説を立てました。その結果、この遺伝子の持ち主でかつ平均より多い人数の友人を持つ人は、多様な社会規範やライフスタイルに接することになるはずで、リベラルな思想の形成につながります。
「遺伝的な素因と、思春期に友人が多かったという環境的要素、二つの要素の相互作用が、リベラルであることに関連づけられるのです」と研究者たちは語っています。この傾向は、人種や文化、性別や年齢にかかわらず確認されたそうです。
「この発見は、政治的所属は人々が経験する社会環境のみによって決定されるわけではないということを示唆しています」と語るFowler教授。社会的環境だけでは個人の政治的姿勢や信条は説明できないとして、遺伝子の果たす役割も考慮するべきであると結論づけています。
「次なるステップは、さまざまな母集団や年齢層で同様の調査を行うことです。より多くの研究者たちが政治的姿勢の形成にかかわる生物学的要素と環境の相互作用について着目し始めることを、願っています」とFowler教授は述べています。
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