戦車の主砲などに用いられる超巨大サイレンサー
映画などで、殺し屋がピストルの前に細長い筒をとりつけ、音をほとんど立てずに標的を撃ち殺すシーンがよくありますが、この筒のことをサイレンサー(消音器)と呼びます。発射の際の衝撃波を和らげる働きをするのですが、ドイツではこれを戦車の主砲のような巨大な火砲にも応用しているようです。
詳細は以下。
German Artillery silencer !! - WW2 in Color History Forum
ドイツの重火器メーカーの軍需企業ラインメタル社と音響工学研究所IfLが開発したこの消音器は、兵器の研究施設などで周囲への騒音をなるべく抑えるためのもの。基本的には据え置きで使われるもので、実戦での利用は想定されていません。
ドイツ・メッペンの第91兵器技術センターにてM109 155mm自走榴弾砲を用いて試験中。
発射の際に出る高速のガスをいったんボディの中にためておき、ゆっくり放出することで音を軽減する仕組み。
銃身方向に垂直な出っ張りは、マズルブレーキからの発射ガスを受けとめるためのもの。
後ろから見るとこんな感じ。
ラインメタル社、IfL社、車両メーカーのマン社が開発した(PDFファイル)プロトタイプの資料がこちら。
試作はドイツ軍の主力戦車レオパルド2の120mm砲を用いて行われました。
手前側から奥のほうに弾が抜けていきます。
中身を取り出すとこのような感じ。この銀色の棒状の部分に発射ガスが衝突、エネルギーを分散させていきます。
これによって、弾丸は中央部から前に行きますがガスはタンクの中をあちこち動きながら減速し、徐々に外に出て行くように作られています。
前方部分はこのように仕切られており、ガスが外に出にくいようになっています。
周波数測定の結果。10Hz付近の低音部分での減音が大きいことが分かります。
距離ごとでの音圧測定では、全域で約20dBの減衰がみられました。
音の指向性パターン。後方への音の減衰は大きいですが、前方へは若干音が届きやすくなるようです。
実際に射撃したところ。まず最初に大きく一回発射ガスが出て、それからもう一度大きくガスが噴出、それから徐々に時間をかけてガスが出てきます。
左のグラフでは、発射ガスのエネルギーが一回で集中して音になっているのに対して、右側のマフラーを用いた測定結果では、細かい波に分解され、ピークが低くなっていることが分かります。
追記:
サイレンサーではなくサプレッサー(減音器)ではないかという指摘が来ていますが、文中ではあえて一般的な表記である「サイレンサー」を使用しています。
英語圏の一般的な文面では「サイレンサー」表記が好まれており、また「サプレッサー」とする場合も「サイレンサー」を併記していることが多いようです。米国の公的機関でも「サイレンサー」表記であり、例えば消音器の所持を規制する米国連邦銃器法の条文でもそうなっています。
対して銃器メーカーや実際のユーザーなどにおいては、より実際に即した表現として同種の器具を「サプレッサー」とすることがより好まれているようです。
・関連記事
戦車に乗った男性が携帯電話の基地局の鉄塔を次々と破壊 - GIGAZINE
フランスの道路の下から第二次世界大戦時のアメリカ軍戦車が発見される - GIGAZINE
学生によって自作された運転可能なハーフサイズの戦車 - GIGAZINE
イギリス国防省が光学迷彩のような「目に見えない戦車」を実用化へ - GIGAZINE
アメリカのAmazonでは戦車が売られている? - GIGAZINE
韓国、無人戦車を建造 - GIGAZINE
・関連コンテンツ