メモ

3次元の結晶模型を使って、ブラックホールの内部構造を「紙と鉛筆」で解明することに成功


数物連携宇宙研究機構(Institute for the Physics and Mathematics of the Universe、以下IPMU)の大栗博司主任研究員と山崎雅人氏(日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院理学系研究科博士課程2年)が、素粒子の究極理論とされる超弦理論の計算に3次元の結晶模型を使う方法を開発し、ブラックホールの内部構造を「紙と鉛筆」で解明することに成功したとのことです。

今回の研究では最新の幾何学を使うことで、ブラックホールの量子状態の一つ一つが、3次元の結晶の融け方に対応することを特定したことになり、結果、ブラックホールの内部構造の理解がさらに前進することになるそうです。

研究内容解説と図解は以下から。
[PDFファイル]結晶の模型を使って、ブラックホールの量子情報を解読
-IPMU大栗博司主任研究員と山崎雅人氏の研究成果がPhysical Review Lettersに掲載-


1974年に英国の物理学者ホーキング博士は、アインシュタイン方程式の解としては暗黒であるはずのブラックホールが、量子力学の効果で発熱を起こし蒸発することを示し、この現象が統計力学の法則に従うのであれば、ブラックホールの中には膨大な量子情報が隠されていることになるそうです。


超弦理論は、一般相対性理論と量子力学を統合し、知られている素粒子現象を基本原理から導出するために必要なすべての材料を含んでいるので、素粒子の究極理論とされているため、この理論を使えばブラックホールの量子情報が解読できると期待されており、2008年には高エネルギー加速器研究機構と理化学研究所のグループが、スーパーコンピューターを使ってブラックホールの温度を計算し、注目を集めています。

今回の研究では最新の幾何学を使うことで、ブラックホールの量子状態の一つ一つが、3次元の結晶の融け方に対応することを示した、というわけ。

例えば、氷は水の結晶であるわけですが、温まると角から水の分子が取れていき、だんだんと融けていくことになります。「図1」では、ブラックホールのない時空間はまだ融けていない立方体の結晶に対応し、結晶が融けるほど大きなブラックホールだということになっています。そして、結晶の一つ一つの原子の大きさが無視できる、いわゆる熱力学的極限においてはなめらかな時空間となり、ホーキング博士の予言通りの量子情報数が再現できることが、「紙と鉛筆」で証明されたことになるそうです。

図1:ブラックホールのない時空間はまだ融けていない結晶に対応。


図2:ブラックホールの量子状態は結晶の融解状態と一対一に対応。


図3:結晶が溶けるほど、大きなブラックホールになる。結晶の原子は時空間の最小単位。


図4:熱力学的極限でなめらかな時空間になり、ホーキング博士の予言通りの状態数が再現される。


ちなみに、このIPMUという組織は、宇宙の起源や運命、基本法則の解明を目指し、文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム(WPIプログラム)で設立されたものだそうです。

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in メモ, Posted by darkhorse

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