これまでで最も強力な肥満治療薬「レタトルチド」が治験参加者の体重を25%減量させることに成功

これまでで最も強力な肥満治療薬になると期待されている「Retatrutide(レタトルチド)」の後期臨床試験データが公表されました。最高用量のレタトルチドを投与された肥満患者は、80週後に体重が平均で25%も減少し、延長期間を含む104週後には平均30%も体重が減少したことが報告されています。
Retatrutide, a Triple Hormone Receptor Agonist, for Treatment of Obesity | New England Journal of Medicine
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2604169
Most powerful obesity drug yet: People lost up to 25% of weight in trial - Ars Technica
https://arstechnica.com/health/2026/09/most-powerful-obesity-drug-yet-people-lost-up-to-25-of-weight-in-trial/
大手製薬企業のイーライリリーが開発しているのが、肥満治療薬の「レタトルチド」です。同社は肥満治療薬の「Zepbound(ゼップバウンド)」や、2型糖尿病治療薬の「Mounjaro(マンジャロ)」などを販売しており、これはノボノルディスクの経口GLP-1受容体作動薬である「Semaglutide(セマグルチド)」を発展させたものです。イーライリリーは他にも、GLP-1とGIPに作用する「Tirzepatide(チルゼパチド)」という薬も販売しています。
レタトルチドは、GLP-1とGIPだけでなく、グルカゴンにも作用するという薬です。GLP-1・GIP・グルカゴンの3つは、いずれも食事に対する体の反応で重なり合う役割を持つホルモンで、血糖値・満腹感・食事量・代謝の調節を助けます。

3つのホルモンの相互作用は複雑で、場所やタイミングによって異なる働きをします。GIPは胃のすぐ先にある小腸上部のK細胞から分泌されるホルモンで、ブドウ糖に反応してインスリンの分泌を促すことで知られています。しかし、血中の脂肪の一種である中性脂肪の分解を促したり、脳に働きかけて満腹感を生じさせたりする作用も持ち合わせているそうです。この他、血糖値が下がり過ぎた時には、GIPはグルカゴンの増加を促します。
グルカゴンはすい臓のアルファ細胞から分泌されるホルモンで、GIPやGLP-1の主要な作用の一部とは逆の働きをします。血糖値が下がり過ぎた状態(低血糖)になると、ブドウ糖や脂肪酸を血中に放出。一方で、食後にはインスリンの産生を増やすほか、胃の内容物が腸へ送られる速度を遅らせたり、脂質の量を調節したりする役割を担います。
そして3つのホルモンの中でもっともよく知られるGLP-1は、消化管のさらに先、具体的には小腸の末端部分である回腸と大腸の細胞であるL細胞で作られます。GLP-1は糖に反応してインスリンの分泌を増やし、胃の内容物が腸へ送られる速度を遅らせ、脳に働きかけて満腹感を生じさせます。GLP-1は脂肪組織内の脂質の分解を促すシグナルを送ることも可能。さらに、GLP-1とGIPはいずれも、アディポネクチンという別のホルモンの分泌を促します。アディポネクチンは、インスリンの効きやすさを改善し、炎症を抑える働きを持つホルモンです。

レタトルチドは、GLP-1・GIP・グルカゴンという3つのホルモンすべての代わりに作用できますが、有効成分は単一の合成ペプチドです。分子内の異なる部分がそれぞれのホルモンに対応する受容体と相互作用し、ホルモンの役割を果たします。ただし、これらの受容体への結合の強さは、天然のホルモンと同じではありません。GLP-1とグルカゴンに比べるとレタトルチドの作用は弱い一方で、GIPに比べると約9倍強力です。また、このペプチドは安定化されており、血中で6日間にわたって活性を保つため、週1回の注射投与で済むというのも特徴です。
レタトルチドに関する試験には、11カ国・131の臨床試験施設から2339人が参加しました。参加者はほぼ同人数の4つのグループに分けられ、それぞれレタトルチドを4mg、9mg、12mgと、有効成分を含まない偽薬を投与されます。各グループの試験開始時の平均体重は約113kgで、平均BMIは40でした。被験者の内、変形性膝関節症を患っていたのが574人、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を患っていたのが243人です。
試験の結果、12mgのレタトルチドを投与された肥満患者は、80週後に体重が平均25%減少し、104週後には平均30%も体重が減少したことが報告されています。レタトルチドを投与された被験者全体では、3分の1以上が体重の30%以上を減らしました。
また、肥満に関連する変形性膝関節症を患う被験者の一部では、膝の痛みが最大62%軽減したと報告しています。肥満に関連する閉塞性睡眠時無呼吸症候群を患う被験者の一部は、1時間当たりの無呼吸などの発生回数が最大57%減少したと報告しています。
また、被験者は血圧・中性脂肪・低比重リポタンパク質コレステロール(LDLコレステロール)など、心血管や代謝関連の指標も全般的に改善しました。試験開始時には参加者の3分の1以上が糖尿病予備群でしたが、終了時には、90%以上が予備群の状態から脱しています。

この3つの作用を持つ薬剤の効果は、従来の肥満治療薬より強いように見えます。しかし、今回の試験ではチルゼパチドなどの既存の治療薬との比較は行なわれていません。減量効果やその他の健康上の利益が既存薬と比べてどうなのかは、今後の試験で調べる必要があります。
これまでのところ、レタトルチドの安全性は既存のGLP-1薬やGLP-1およびGIP薬と似ているようです。最も多く報告されたのは、吐き気・下痢・便秘など、一時的で軽度から中等度の消化器症状です。レタトルチドの投与中にめまいや低血圧を報告した被験者もいますが、こうした症状は降圧薬を服用している人に多く見られました。
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in サイエンス, Posted by logu_ii
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