コラム

Web2.0のビジネスモデル その2「ベータ版」


今までなかったネットに関するあれこれ」を全部まとめて「Web2.0」と呼び、ゆえに「技術トレンド、情報モデル、そしてそれらに伴うビジネスモデルの変化を扱う総称」である、というように定義、そしてビジネスモデルとしてのWeb2.0の例その1として前回は「ロングテール」について見てみたわけです。

今回はWeb2.0のビジネスモデル、その2ということで「ベータ版」について。

言うまでもなくベータというのは未完成品のこと。それが一体どのような側面からWeb2.0であると言えるのかを見てみましょう。
・その2:ベータ版
まずこのベータ版、つまり未完成ではあるがとりあえずサービスを提供するという発想は以前からあったものです。マイクロソフトは昔から、登録したユーザーにWindowsのベータ版を提供し、その意見をフィードバックさせて正式な製品版を完成さています。

しかしWeb2.0でいうところのベータ版というのはさらに対象を拡大させているのが特徴。特定の限られた人だけではなく、希望する人なら誰でも利用できるというところに特徴があります。


通常であれば未完成品を一般に公開するというのはリスクが高すぎるのですが、Web2.0の場合はあえて「これは未完成品のベータ版です」ということをユーザーに周知徹底することにより、サービスの中身をユーザーの利用動向に合わせて変化させたり、あるいは多少の不具合が出てもいいから新機能を搭載したりできるわけです。

このようにしてユーザーの声を受けてどんどん改良し、そして新機能を搭載することによってサービスはより使いやすいものとなるはずです。そうすると結果的によいものができあがり、最終的に同ジャンルにおける勝者となる確率は上昇します。というのも、正式な完成版を出すのには時間がかかるが、ベータ版であれば未完成でよいのですぐに出すことができるため、市場が未成熟な早期のうちに出すことで、ある程度のユーザーの囲い込みが可能となるからです。同業他社よりも一歩先んじるというのはビジネスにおいては重要なことであり、それを可能にするのがWeb2.0では「ベータ版でとりあえず出してみて反応を見る」ということにつながるわけです。

また、Web2.0を最初に提唱した文章の中には「End of the Software Release Cycle」という章があります。この中で「永遠のベータ版(the perpetual beta)」という表現が使われており、これがまさに今までのベータ版の概念と、Web2.0のベータ版の概念の差を表しています。

Web2.0においては、ユーザーの意見を吸い上げ、そして的確に反映するというのが技術的に可能なサービスを作り上げる傾向が強く、結果として常に新しいアイディア、新しいコンテンツが参加するユーザーから提供され続け、それらを取り込んだ新しいサービスが次々とできあがります。そして完成したらオワリではなく、さらによりよく、より便利に、いつまでも進化していきます。つまり、オワリがないわけです。いつまで経っても完成品にならない代わりに、いつまでも進化し続ける可能性を手に入れたと言えます。そのため、永遠のベータ版であり続けることこそがWeb2.0である、というわけです。

このようにして永遠のベータ版として提供することにより、当初はビジネスモデルとしてさっぱり形が見えなかったものが改良の後についにビジネスモデルとして結実する場合もあります。

例えば、わかりやすいので今までも頻繁に例として出しているGoogle自身も、当初はベータ版でした。なんとかビジネスとしての目処が付いてきた1999年9月21日にロゴからベータ版の文字列を外しています。「検索」という行為がどうやって直接の利益に結びつくのかが当時は誰もわかっていなかったわけですが、とにかくGoogleは「ベータ版としてやってみた」わけです。

なお、Googleのサービスの特徴として、いまだにベータ版のものが多数あります。どれもこれもWeb2.0的なものばかりです。

Google ニュース 日本版英語版は既に正式版となっている)

Google Video

Google Labs

日本でもソーシャルネットワーキングサービスの「mixi」は、同ジャンルでは日本最大であるにもかかわらず、ベータ版のままです。

ソーシャル・ネットワーキングサイト [mixi(ミクシィ)]

言うなれば、Web2.0の「ベータ版」というのは「未完成品」という当初の意味合いが薄れており、「常に修正と改良がされる」という意味であるわけです。誤解しがちですが、決して逃げ道や免罪符としてベータ版を標榜しているのではありません。

また、この「ベータ版」というWeb2.0的発想はビジネスモデルとして非常に価値のある技術やサービスを生み出す可能性が最も高い手法でもあります。

FOXNews.com - Dvorak: Learning From Google - Science And Technology News | News On Technology

この中でGoogleのエンジニアたちについて触れられている部分があり、要するに新しいサービスや技術を作る場合、誰かに許可を事前に取る必要は全然無く、とりあえず作ってみて、ユーザーに使ってもらい、その反応をまずは見てみる、ということがGoogleという会社自体の方針であるということが書かれています。つまり、ベータ版を作るのに許可は必要なく、とりあえず作って様子を見てみようよ、というわけ。

このような考え方だとエンジニアはとっても楽です。作りたいものを作ればいいので、モチベーションが全然違います。モチベーションが高い状態で作られたモノはいいモノであることが多いです。それを実際にユーザーに使ってもらうと、本当にいいモノなのかどうか、そしてもっといいモノにするにはどうすればいいかがよく分かるようになります。

この流れはヒット商品を作り出すときに必要な要素、ビジネスモデルでいうところの有用な技術の開発とそれが市場に受け入れられるかどうかというマーケティングを同時に行っていることになります。今までは市場のリサーチやマーケティングは大変であり、その正確さも期待できませんでしたが、ベータ版として実際の市場に出せば、的確なデータを採取することが可能ですし、悪い点があれば修正する余地もあります。極端な話、そうやって「確実にこれはビジネスになる!」と判断してからビジネスモデルを構築することも可能なわけです。

ここで再度、「Web2.0の条件4つ」というのを見てみます。

・Web2.0の条件その1:自動化
・Web2.0の条件その2:双方向性
・Web2.0の条件その3:敷居を下げる
・Web2.0の条件その4:無料


どれもこれも、ベータ版をやろうとすると、不可避なモノであることが分かると思います。ネットサービスにしろ、ソフトウェアにしろ、自動化されているのは当然として、その自動化は双方向性を生み出すものであり、敷居を下げて無料にすることによって、ベータ版としての意味が出てきます。このように、ベータ版という考えは、今までの完成品を出して利益を得るというビジネスモデルではない、新しいWeb2.0的ビジネスモデルを支える基礎であるというわけです。

次回はWeb2.0のビジネスモデル3つめの特徴である「オープンソース」について。

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in ネットサービス,   コラム, Posted by darkhorse_log

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