AIがスコッチウイスキーとアメリカンウイスキーを識別することに成功
ウイスキーは穀物をアルコール発酵させて蒸留し、木だるで複数年かけて熟成させて作られる蒸留酒であり、使用する原料や産地などによってさまざまなバリエーションが存在します。新たに、ドイツ・フラウンホーファー研究機構のプロセス技術・パッケージング研究所(IVV)の研究チームが、AIでスコッチウイスキーとアメリカンウイスキーを識別することに成功したと発表しました。
Odor prediction of whiskies based on their molecular composition | Communications Chemistry
https://www.nature.com/articles/s42004-024-01373-2
AI beats human experts at distinguishing American whiskey from Scotch | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2460910-ai-beats-human-experts-at-distinguishing-american-whiskey-from-scotch/
AI learns to distinguish between aromas of US and Scottish whiskies | Artificial intelligence (AI) | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2024/dec/19/ai-learns-to-distinguish-between-aromas-of-us-and-scottish-whiskies
ウイスキーの香りは「オレンジ」「洋ナシ」「ラベンダー」「ダークチョコレート」「バニラ」「カラメル」「アーモンド」「干し草」「ピート」など、さまざまな言葉(匂い記述子)で表現される複雑なものです。これらは多種多様な化学物質の混合物によって生み出され、口や鼻の中で起きる相互作用によっても変化してきます。
訓練を受けた専門家はこうしたウイスキーの香りを適切に評価し、ウイスキーの味わいを評価することができますが、訓練は大変な上に主観的な評価も入るため多少のばらつきがあります。そこでIVVの研究チームは、AIアルゴリズムを訓練してウイスキーの香りを評価し、産地を識別することができるかどうかを調査しました。
まず研究チームは、9種類のスコッチウイスキーと7種類のアメリカンウイスキーを対象として、分子から匂いを予測する線形分類アルゴリズムのOlfactory Weighted Sum(OWSum)が両者を識別できるかどうかを調べました。
実験では、ウイスキーのサンプルから人間が報告した上位5つの匂い記述子を使用したところ、OWSumは約94%の精度でスコッチウイスキーとアメリカンウイスキーを識別できました。さらに、ウイスキーに含まれる分子データを使用すると、両者の識別精度は100%に向上したと報告されています。
研究チームによると、メントールやシトロネロールといった化合物は、キャラメルのような香りを生み出し、アメリカンウイスキーの予測因子となりました。一方、デカン酸メチルやヘプタン酸(エナント酸)といったスモーキーあるいは薬品臭の元となる化合物は、スコッチウイスキーの予測因子だったそうです。
さらに、ウイスキーに含まれる化合物に基づいて人間が評価した上位5つの匂い記述子を予測できるかどうかを調べたところ、OWSumやニューラルネットワークは人間のウイスキー専門家よりも高いスコアを記録しました。なお、今回行われた両AIモデルのテストでは分子の濃度を考慮しておらず、分子の有無のみが考慮されたとのことです。
研究チームのアンドレアス・グラスカンプ博士は、「AIの素晴らしいところは、非常に一貫性があることです。この一貫性は訓練を受けた専門家にもあります。私たちは人間の鼻をAIに置き換えるのではなく、効率と一貫性を通じて人間をサポートしています」とコメントしました。
今回の研究には関与していないグラスゴー大学のウィリアム・ペヴェラー博士は、AIはウイスキーの香りを人間より安定的に評価でき、ウイスキーブランドが一貫したスタイルを維持するのに役立つだろうと主張。その上で、今回の研究には少数のウイスキーしか含まれておらず、AIがより多くのウイスキーを識別する場合にどれほど機能するのか、そして熟成と共に生じる香りにどう反応するかは不明だと指摘しました。
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