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AppleやAMDを渡り歩いた天才エンジニアのジム・ケラー氏がRISC-Vの未来やオープンソースへの熱意について語るインタビュー動画が公開


AppleのA4チップやAMDのZenマイクロアーキテクチャなど、数々のチップ開発に携わってきた天才エンジニアのジム・ケラー氏は、2021年にAIチップのスタートアップ・Tenstorrentの社長兼CTO(最高技術責任者)に就任しました。そして2023年初頭にTenstorrentのCEOとなったケラー氏に対し、エレクトロニクス業界のメディア・EE Timesが独占インタビューを行いました。

Jim Keller on AI, RISC-V, Tenstorrent’s Move to Edge IP - EE Times
https://www.eetimes.com/jim-keller-on-ai-risc-v-tenstorrents-move-to-edge-ip/

Jim Keller on AI, RISC-V, Tenstorrent’s Move to Edge IP - YouTube


近年のケラー氏はオープンソースの命令セットアーキテクチャ「RISC-V」に強い関心を寄せているとのこと。従来の命令セットアーキテクチャはライセンスによって縛られていたのに対し、オープンソースであるRISC-Vはライセンス不要で利用でき、開発そのものにも参加できるというメリットがあります。

ケラー氏は、「私はオープンソースが勝つと信じています。人々はLinuxに切り替えたら、誰もNTOS 360に戻りませんでした。これは一方通行です。時間の経過と共にRISC-Vが勝つと思います。それはあなたが所有できるテクノロジーであり、ライセンスを取得する必要はなく、ライセンス料の値上がりに驚くこともありません」と述べています。

Tenstorrentはまだビジネスの初期段階にあり、いくつかのIPやハードウェア、クラウドサービスなどを販売したものの、まだチームは小規模だとのこと。ケラー氏は、「技術者として、私は賢い人たちとの関わりにとても興味があります。賢い人が『あなたのハードウェアにオープンソースでアクセスして、好きなようにプログラミングしたい』と言ったら、私に断る理由はありません」とコメントしました。


「どのように他社との競合を避けているのでしょう?」という質問に対しては、依然としてRISC-Vに取り組んでいる企業は小さく、IntelやArmに比べれば小さいため互いに競合する事態にはなっていないと回答。


その上で、RISC-Vに取り組む企業の価値はネットワーク効果のユーザーが増えるごとに増していくため、しばらくは「競合が問題にならない成長段階」が存在するとケラー氏は予想しています。その後には競争が発生し、企業の統合といった事態が生じるものの、それはすでにTenstorrentが大きな成功を収めた後のことだそうです。


また、インタビュアーはTenstorrentが韓国の多国籍企業・LGエレクトロニクスに対し、AIアクセラレータや高性能コンピューティング(HPC)のIPをライセンス供与したことについても言及。「LGエレクトロニクスが他のIPプロバイダーでは見つけられず、Tenstorrentで見つけられたものは何だったのでしょう?」と質問しています。

これに対しケラー氏は、LGエレクトロニクスが欲しがっていたのは「所有でき、変更でき、ニーズに答えられる、プログラム可能なIP」だったと回答しています。AI分野のIPは焦点が狭い範囲に向いており、プログラムするのが困難であるため、特定のIPが次のモデルでは機能しないことも多いとのこと。この問題点についてケラー氏らが説明したところ、LGエレクトロニクスから提携を持ちかけられたそうです。


インタビューの中で、ケラー氏は繰り返し「オープンソースであること」の利点について語っています。かつてスタートアップに勤めていたケラー氏がサーバーにNTを使用していた時、バグのせいで実行できないツールがいくつかあったため、Microsoftにバグを報告したとのこと。しかし、1年後のアップデートでもバグは解決されていなかったそうです。一方、Linuxに切り替えた後に周辺機器で似たような問題が発生した際は、インターネットで検索したり同僚に相談したりして、わずか1時間半で問題を解決することができたとケラー氏は述べています。

ケラー氏は、オープンソースの利点は「実際にソフトウェアの詳細を確認できること」であると述べ、AI用ソフトウェアスタックを2023年中にオープンソースで公開する予定だと話しました。実際は2022年のうちにリリースする予定だったものの、ソフトウェアスタックが乱雑すぎたため、適切にパーティション化するために公開を遅らせたとのこと。


元動画は48分もあるロングインタビューとなっており、紹介したやり取り以外にも大手企業との競争やイノベーションなどについて詳しく語っています。

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in ソフトウェア,   ハードウェア,   動画, Posted by log1h_ik

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