「歩くのが遅い人は脳や体が老けるのが早い」ことが判明
by Pressmaster
過去の研究により「歩く速度によって心疾患で死亡するリスクが変化する」ことが判明していますが、約900人を対象とした最新の調査により「歩く速さは脳や体の老化スピードと関係がある」ことが突き止められました。
Association of Neurocognitive and Physical Function With Gait Speed in Midlife | Dementia and Cognitive Impairment | JAMA Network Open | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2752818
New Zealand Study Connects Walking Speed with Brain Health in 45-Year-Olds | Duke Today
https://today.duke.edu/2019/10/new-zealand-study-connects-walking-speed-brain-health-45-year-olds
歩く速さと加齢の関係について明らかにしたのは、デューク大学のLine Jee Hartmann Rasmussen氏らの研究グループです。Rasmussen氏らは、過去の研究により判明していた「70~80代の高齢者の歩行速度は身体や中枢神経系の機能と密接な関係にある」との結果を踏まえ、「体がまだ丈夫な中年期でも同様の傾向が見られるのではないか」との仮説を検証することにしました。
by Mario Ohibsky
具体的には、1972年4月1日から1973年3月31日にかけてニュージーランドのダニーデンで出生した1037人を追跡した「ダニーデン研究(Dunedin Study)」の対象者のうち、45歳まで生存していて、なおかつ調査への協力に同意した904人に対し、歩行速度の測定やMRIによる脳スキャン、健康診断などのテストを実施しました。
その結果、45歳時点での歩く速度が遅い人ほど脳の容積や表面積が小さく、脳が老化傾向にあることが分かったとのこと。また、血圧や歯の健康度といった19種類の健康診断でも、肉体的な老化が早いことを示す兆候がみられました。さらには、8人のボランティアに対象者らの顔写真を見せる実験でも、歩行が遅い人は老けて見えたという結果が出ており、歩く速さと老化の関係は見た目から脳を初めとする全身にまで及んでいることが判明しました。
また、参加者が3歳の時に実施された認知機能の結果と歩行速度を比べてみたところ、3歳児の時に認知機能が低かった対象者は45歳の時点での歩行速度が遅いことも分かったとのことです。
研究チームは、幼児期の認知機能と45歳時点での歩行速度に関係が見られた要因について、次の6つの可能性が考えられると推測しています。
・認知機能の高さと、歩行機能には共通した脳の領域が関与している可能性がある。
・認知機能が高いと、禁煙や健康的な生活習慣、健康的な食事などを心掛けている可能性がある。
・認知機能が高いと、より良い健康情報にアクセス可能で、健康管理も行いやすい可能性がある。
・認知機能が高いと、より高等な教育を受けられるため、安全ではない労働環境や、身体に有害な状況に身を置くリスクが低下した可能性がある。
・脳は臓器の中でも繊細な器官なので、臓器の機能が低下することの影響が顕著に出た可能性がある。
・遺伝的要因が認知機能と歩行機能の両方に影響を与えている可能性がある。
Rasmussen氏は、「歩行テストは単なる高齢者の運動機能測定だけでなく、生涯にわたる統合的な健康の尺度として使用できることが分かりました」と指摘し、歩く速さと脳や身体の健康の関係について明らかにした研究の意義を強調しました。
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