サイエンス

肥満が脳の学習機能や記憶に悪影響を与える可能性があると判明

by Tony Alter

過去数十年にわたって肥満の人は世界的に増加傾向にあり、21世紀では全世界で約6億人以上の人々が肥満であるとされています。肥満は脳卒中2型糖尿病に加え、心臓病やガンといった病気と関連していることが知られていますが、「肥満は健康だけでなく脳の認知能力にも悪影響を与える」という研究結果が発表されました。

Microglia play an active role in obesity-associated cognitive decline | Journal of Neuroscience
http://www.jneurosci.org/content/early/2018/09/10/JNEUROSCI.0789-18.2018

Obesity Could Affect Learning and Memory, Research Finds
https://www.newsweek.com/obesity-affects-learning-memory-research-1114913

プリンストン大学で神経科学の教授を務めるエリザベス・ゴールド氏らの研究チームは、高脂肪の食事を与えられて標準的なマウスより40%も体重が多い肥満になったオスのマウスと、普通の食事を与えられた標準体重のオスのマウスという2グループを用いて実験を行いました。実験では、2グループのマウスにそれぞれ「迷路から脱出する」という問題を与え、問題の解決率を測定したとのこと。


その結果、肥満グループのマウスは迷路から脱出できた割合が低いことが明らかになりました。研究チームは、「肥満のマウスは迷路の中にある物体の場所を記憶する能力が低下しているため、迷路からの脱出が困難になっている」と考えています。

研究チームがマウスの脳を調べたところ、肥満のマウスでは神経細胞の樹状突起から飛び出ている、樹状突起スパインという部位が減少していることがわかりました。樹状突起スパインは脳の興奮性シナプスの伝達に関わる重要な部位ですが、肥満のマウスでは学習や記憶に関わる海馬において、樹状突起スパインの減少が多く見られたとのこと。


「なぜ肥満になると樹状突起スパインが減少してしまうのか?」という疑問について、研究者らは免疫細胞の一種であるミクログリアが関係している可能性を考えました。ミクログリアは神経組織が炎症を起こすなどの損傷を受けると活性化して病変の修復を行います。しかし、ミクログリアは肥満になると神経細胞の付近で活発に働く性質を持っており、研究チームは「この性質こそが樹状突起スパインの数を減少させているのではないか」と考えました。

そこで研究チームは、「ミクログリアの働きを阻害することで認知機能が回復するのか?」という点を検証するため、肥満のマウスでミクログリアの働きを阻害しました。すると樹状突起スパインが保護されて、肥満のマウスの認知機能は改善したとのこと。

ミクログリアはうつ病にも関わっていると考えられており、薬剤などによって過剰な働きを抑制することで、肥満による認知機能の低下や精神障害から脳を守ることができる可能性があるそうです。人間の場合にも肥満が認知機能の低下に関わっているのかどうかについては、まだ明らかになっていませんが、今後の研究により人間の肥満と認知機能の関係や、認知機能を改善する方法が突き止められるだろうと考えられています。

by Marjan Lazarevski

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
脳のMRI画像を見ればその人が肥満傾向にあるのかどうかがだいたいわかる - GIGAZINE

「お酒を飲むと夜中にジャンクフードを食べる可能性が高く肥満につながりやすい」という研究結果 - GIGAZINE

「肥満であること」自体が死亡リスクを高めることにはならないと研究者が指摘 - GIGAZINE

「自分はよく運動している」と思い込むことで実際に人は健康になる - GIGAZINE

肌に貼るだけで肥満を治療できるパッチが開発される - GIGAZINE

・関連コンテンツ

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.