昆虫サイズのロボット「RoboBee」が画期的な機構でロケットのように水面から飛び立つことに成功
ハーバード大学が開発する昆虫サイズのロボット「RoboBee」は、これまで物の表面にくっついたり、空を飛行する状態から水中に飛び込んで泳いだりということに成功していました。過去の研究では「表面張力が邪魔をして水面から飛び立てない」ということが課題として残されていたのですが、ハーバード大学の発表によると、画期的な仕組みを使うことで、RoboBeeはこの課題をクリアすることに成功しています。
New RoboBee flies, dives, swims and explodes out the of water | Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences
https://www.seas.harvard.edu/news/2017/10/new-robobee-flies-dives-swims-and-explodes-out-of-water
Autonomous Flying Microrobots (RoboBees)
https://wyss.harvard.edu/technology/autonomous-flying-microrobots-robobees/
Robot bees can fly, swim, and dive out of water using tiny rockets - The Verge
https://www.theverge.com/2017/10/25/16544996/robot-bees-harvard-fly-swim-water-rocket
RoboBeeは2013年からハーバード大学が研究・開発している昆虫サイズのロボット。研究チームによると、このRoboBeeは「ペーパークリップの半分ほどのサイズで重さは10分の1グラム」とのこと。
水中と空中の両方を自在に動き回る乗り物やロボットはSFなどでよく見かけますが、実際には、空中を飛び回るには巨大な翼が必要なのに対して、水中を泳ぐには抵抗を最小限にする必要があり大きな翼が邪魔になるため、非常に開発が難しいものとされていました。そんな中、ハーバード大学の研究者らは海鳥の1種「ツノメドリ」から発想を得て空中・水中いずれもを動き回れるRoboBeeを開発しました。
2015年に発表された時点では、RoboBeeは空中から水中に入れるものの、あまりの軽さ・小ささのため表面張力が邪魔して水中から再び空中に飛び立つことができませんでした。なお、水中にRoboBeeが入っていく様子は以下の記事から見ることができます。
昆虫サイズなのに空を飛んだり水中を泳いだりが可能なロボット「RoboBee」 - GIGAZINE
しかし、研究が進められ、ついにRoboBeeは水の中から空中に飛び出すことに成功。以下からその様子を見ることができます。
Aerial-Aquatic Microrobot - YouTube
これが進化したRoboBee。見た目もかなり変化しています。
軽く小さなRoboBeeにとって、水中から空中に飛び出す時の表面張力は自重の10倍にも上るとのこと。研究を行っているロバート・ウッド教授は、RoboBeeにとって水の表面張力は「突き破れない壁のようなもの」だったと語っています。
進化したRoboBeeは本体の周囲に小さな箱のようなものを搭載しており、一度水の中に入るとこの箱の中に水を集めます。
箱の中には電気板が入っており、水素と酸素の混合気体である酸水素ガスを生成することで浮力を大きくし、羽を水面の上へと押し上げます。この機構によって羽を折ってしまうことなく羽ばたきを開始できるわけです。
酸水素は可燃性なので、ここで発火が起こると……
ちょうどロケットが発射される時のように、RoboBeeは空中高くに飛び上がります。
スローで見てみるとこんな感じ。羽だけを水中に出した状態で水面に浮かぶRoboBee。
小さな爆発が起こり……
ふわっと本体が浮き上がります。
横から見るとこんな感じ。
水しぶきが起こり……
跳ね上がっています。
前モデルからかなり形が変化したRoboBeeですが、これは「水を原料にガスを生成し、浮力の足しにすると共に、燃料としてロケット発射する」という画期的な構造を作り出すためだったわけです。ただし、新しいRoboBeeは飛行ができないので、ここをいかにクリアしていくのかが今後の研究の課題になってきます。
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