なぜ9歳の少年と18歳の少女の結婚を描いたラブストーリーがインドで放映できなくなったのか？

インドのテレビチャンネル「ソニー・エンターテイメント・テレビジョン」が「Pehredaar Piya Ki」という恋愛ドラマの放映を中止したとして話題になっています。ドラマは、9歳の少年と18歳の少女の結婚と恋愛模様を描いていたことが、「子どもの結婚を促進させる」として大きな批判を呼んでいました。

Why this 'unusual love story' has been taken off air in India - BBC News
http://www.bbc.com/news/world-asia-india-41079739

Pehredaar Piya Ki: Pehredaar Piya Ki goes off air, channel issues formal statement - Times of India
http://timesofindia.indiatimes.com/tv/news/hindi/controversial-show-pehredaar-piya-ki-to-go-off-air/articleshow/60273159.cms

Pehredaar Piya Kiは2017年7月半ばから放映開始されましたが、非政府組織のJai Ho Foundationが「今すぐ番組を差し止めるように」という内容の請願書を当局に送った頃から大きな批判を集めていました。Jai Ho Foundationは番組が「不適切」で「子どもに不向きである」と考えており、また、子どもが親によって強制的に結婚させられるような児童婚が大きな問題となっているインドにおいて、ドラマはSNS上でも人々の怒りを買っていました。

Pehredaar Piya Kiは、王族の血を引く9歳のプリンスであるRatan KunwarがDiyaという18歳の少女に会い、一目で恋に落ちるところから物語が始まります。KunwarはDiyaについて回って写真をとり、ゴキブリからDiyaを救い、反対にDiyaはプロポーズをユーモアたっぷりに受けたり、まだ幼いKunwarの頬をつつくなど、仲むつまじい様子が描かれていました。また、Kunwarが足を滑らせて命を落としそうになった時にはDiyaがKunwarの命を救い、「あなたが傷つくことがないようにします」と誓う場面もあったとのこと。一方で、王室には陰謀がはびこっており、Kunwarの母親は殺され、父親も致命傷を負います。そして死の淵にある父親が「DiyaはKunwarを守れる唯一の人だ」として、DiyaにKunwarとの結婚を約束させます。

ジャーナリストのMegha Mathur氏は「最初のエピソードが数話放映された段階で、意見は二分しました。批判的である人はKunwarがDiyaにストーキングして写真を撮る様子を気持ち悪がり、一方で18歳という年齢の少女に決定権とパワーを与えたことを賞賛する人もいました」と語ります。Mathur氏自身は、「5話あたりからKunwarが大人のように振る舞いだし、制作側がプロットを忘れたように見えました」と感じたものの、DiyaにつきまとうKunwarの姿は気持ち悪いものとして映らなかったとのこと。また、インドでは、子どもは幼い時から「いつかは結婚する」という考えを持って育つため、少年少女たちが周囲の大人に「この人と結婚する」と伝えることは違和感のあることではないそうです。

しかし、番組を批判するJai Hoグループには、ドラマが別の形に映った様子。情報放送省のSmriti Irani氏は「子どもが自分の倍の年齢の女性と性的な性質を含む関係を持ち、彼女をストーキングしたり、愛撫したりする……。これは性的な関係を表現することを目的とした、子どものわいせつな表現であり、不適切です」という苦情をJai Hoグループから受け取ったそうです。

これが実際の請願書。

請願書には10万人の署名が付されていたため、Irani氏は放送苦情処理委員会(BCCC)に対して「迅速なアクション」を取るように伝えました。それを受けてBCCCは番組の放映時間を20時30分から22時30分に変更させ、「我々は児童婚を支持していません」と表示させるように製作側に指示。また、制作側はドラマ内の時間軸を変更してKunwarが21歳になった時からの様子を描くことも計画したのですが、批判の勢いが収まらず、制作側は理由を明らかにしていませんが、最終的に番組は放映中止となりました。

なお、請願書を出したJai Ho Foundation代表のAfroz Malik氏は「若いカップルがハネムーンや初夜について語る様子は、子どもを描写する様子として正しくありません」と語っており、製作側が脚本を変えなければ訴訟を行う意向だったことをBBCに伝えています。