映画「LOGAN/ローガン」でヒュー・ジャックマンやダフネ・キーンの代わりに演じた「デジタルダブル」とは?
2017年6月に公開された映画「LOGAN/ローガン」は、ヒュー・ジャックマンが演じるウルヴァリン、およびパトリック・スチュワートが演じるプロフェッサーXを見られる最後の作品となりました。この映画ではウルヴァリン、そしてダフネ・キーン演じるローラの繰り広げる戦い見どころの1つとなっていますが、当然ながら危険の伴う撮影もあるので、すべてを本人たちが演じたわけではありません。そこで活用された「デジタルダブル」の秘密を、制作を担当したImage Engineが明かしてくれています。
LOGAN | Logan Digital Double | Image Engine VFX on Vimeo
「LOGAN/ローガン」に登場する、リムジンでのカーチェイスシーン。このシーンは、作中ではウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンが運転席に座っているように見えましたが、実際はどうだったのか。
画像左は最終調整まで終えた「FINAL COMP」、右は撮影した素材(PLATE)。
こうして見ることで、撮影時はヒュー・ジャックマンと背格好の似たボディダブルの俳優が担当していたことがわかります。
撮影した映像をクリーンナップ。
CG素材を重ねます。
ライティングを調整。
服装などを整えて、最終形へ。どこからどう見ても、ヒュー・ジャックマンが運転しているようにしか見えません。
こちらは森の中で少女ローラらを狙う敵にウルヴァリンが襲いかかるシーンです。
獣のような怒りの表情を見せるウルヴァリン。
このシーンは素材が4種類も撮影されていました。
ここで出てきたのが、演技の替え玉である「ボディダブル」のデジタル版、「デジタルダブル」です。
デジタルダブルを作るにあたっては、オリジナルであるヒュー・ジャックマンのスキャンデータをモデル化。そして、ヒゲなどを作中の状態に合わせています。
単に顔をスキャンすればいいだけではなく、ヒュー・ジャックマンには出しうる表情を可能な限りやってもらっています。
そして、できあがったモデルに表情をつけていきます。画像左に表示されているのは、これからモデルに取らせる表情です。眉の形や口の上げ下げ、表情筋の動きなど、フェイシャルアーティストが細かく調整を重ねていきます。
いかにも「歯を食いしばったウルヴァリン」という表情になりました。
キャプチャの様子はこんな感じ。四方八方にカメラが設置されていて、いろいろなライティング条件のもとでの表情を逃さずに捉えていきます。
その結果が、本人と瓜二つなデジタルダブルにつながっています。画像左がヒュー・ジャックマン本人、右はCGレンダリング。
極端なライティングであっても、とても自然なウルヴァリンに見えます。
何も知らずに映画を見ていたら、どの部分がヒュー・ジャックマンで、どの部分がデジタルダブルなのかを見抜くのはまず不可能です。
同じような映像が、ダフネ・キーン演じるローラについても公開されています。
LOGAN | Laura Digital Double | Image Engine VFX on Vimeo
こちらも、同じような手順を経てデジタルダブルのローラが生み出されています。
喜怒哀楽、いろいろな表情を見せるダフネ・キーン。
怒ったローラの顔もこのようにして再現されています。
左がダフネ・キーン、右がCGレンダリングのデジタルダブル。
瞳までしっかりレンダリングされているので、映像を見て、どこからどこまでが本人なのかを見分けるのは相当困難といえます。
ローラが武装集団の兵士に襲いかかるシーン。さすがにダフネ・キーンがあのアクションをしているわけはないだろうということは予想のつくシーンです。
左が完成映像、右が素材。
撮影時にはボディダブルの女性がワイヤーをつけてアクションをしていたことがわかります。
このシーンには、「走り出したリムジンの上にローラが飛び乗る」というアクションがあります。
撮影時は車だけが存在。
あとからデジタルダブルのローラが合成されていました。
ちょうど、トム・クルーズが「ミッション:インポッシブル6」撮影中にスタントに失敗して足首を骨折し撮影が最大3ヶ月遅れるというニュースがありました。俳優本人がケガをしてしまっては作品に大きな影響を与えるため、デジタルダブルが活用されるのもうなずけます。もちろん、デジタルダブルを使う場合でもボディダブル役の俳優が実際に演じている部分があるので、その安全確保はしっかりと行われなければならないところです。
ちなみに、デジタルダブルだけではなく、舞台を用意できない広大な空撮シーンなどもCGで生み出されていることが多々あります。
LOGAN | Environments | Image Engine VFX on Vimeo
ウルヴァリンが武装集団を食い止めるために森の中へ走り込んでいくシーン。画面中央下、ぽつんと白いシャツの人が映っています。
実際には、ウルヴァリンが走って行く姿は別のところで撮影され、合成されています。
クレーンでつり上げられる担架。
草や建物が配置されていきます。
崖も配置が終わり、先ほどのシーンの背景が完成。ここはフルCG+デジタルマットペイントで生み出されていました。
また、偵察ドローンが建物を見つけるシーンも、もとの素材とはまったく見栄えが違います。
そもそも、この建物も、周囲の木々も、CGで作られたものでした……。
そこにドローンを重ねます。
こうして完成映像が仕上げられていました。
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